12 / 39
本編
別れの気配
しおりを挟む
夕方近くになってラーシュと二人、街に帰って来た時です。
街の広場に沢山人が集まっていて、何かと思いそちらを見やれば、近隣の村周辺のモンスター退治に出ていた騎士団の方々が帰還してきたようでした。
「テオ!」
名前を呼びながら集団に走り寄りその姿を探せば、明るい栗毛の騎士様然とした顔立ちの整った青年が、怪我もなく元気そうに私に向かって手を振ってくれたので、私はほっと安堵のため息を付きました。
「テオドール??」
テオの姿を見たラーシュが驚いて声をあげた為、テオもラーシュに気が付きました。
「エーヴ……」
驚きのあまりラーシュの本名を広場で叫びそうになったテオが慌てて自分の口を塞ぎます。
テオが部下たちに解散の指示を出した後、慌ててこちらに駆け寄って来ました。
「どうして貴方がここに??」
驚くテオに
「たまたま冒険者として立ち寄ったんだ。そしたらギルドから一月でいいからとどまってモンスター退治に協力して欲しいと頼まれ滞在している」
ラーシュもテオがこんなところにいたことに驚いた顔をしつつも嬉しそうに言いました。
テオは、お城ではラーシュの信頼の厚い配下であり、私の警護を担当してくれていた騎士でもありました。
私がお城を離れた時、テオは直ぐにこの街の騎士団長として赴任して来たのです。
てっきりラーシュの指示なのかと思っていましたが……。
テオが自分で決めて来てくれていたのですね。
恐らく、私の『事故』に責任を感じての行動なのでしょう。
気にすることはないから本来テオが居るべき場所に戻るべきだと、もっと早く気づいて言ってあげるべきでしたね。
十年もの間、テオに本当に申し訳ないことをしてしまいました。
改めてテオにこれまで守ってくれていたことへの礼と、こんな辺境に縛り付けてしまった事を詫び、ラーシュにテオを近衛騎士に戻して欲しいと頼めば
「私がここに来たのは自分の意思で、レーア様に会えたのはたまたまですよ」
そう言ってテオはいつもの様に穏やかに微笑み私とラーシュの提案を頑ななまでに辞退しました。
「ところで……えーっと……」
「ここではラーシュだ」
「ラーシュ様はいつまでこちらに?」
テオの言葉に、ラーシュがフッと顔を曇らせました。
「そもそも一月の約束だったから、あと二週間くらかな」
二週間。
近すぎるタイムリミットに、胸の奥が晩秋の夕方の外気よりも冷たくなっていくのを覚えます。
北の彼がここに立ち寄ったのは本当にたまたまで、彼にとってここは、そしてつがいでも何でもない私はさしたる意味も持たないのでしょう。
「街道を抜けられるなら、二週間と言わず早い方がいいでしょう。あそこはもうすぐ雪が降り難所になります」
テオの指す先を見ながら、
「あぁ……そうだな」
そう酷く無機質な声で答えた呟くラーシュの声が、また私の胸を抉りました。
街の広場に沢山人が集まっていて、何かと思いそちらを見やれば、近隣の村周辺のモンスター退治に出ていた騎士団の方々が帰還してきたようでした。
「テオ!」
名前を呼びながら集団に走り寄りその姿を探せば、明るい栗毛の騎士様然とした顔立ちの整った青年が、怪我もなく元気そうに私に向かって手を振ってくれたので、私はほっと安堵のため息を付きました。
「テオドール??」
テオの姿を見たラーシュが驚いて声をあげた為、テオもラーシュに気が付きました。
「エーヴ……」
驚きのあまりラーシュの本名を広場で叫びそうになったテオが慌てて自分の口を塞ぎます。
テオが部下たちに解散の指示を出した後、慌ててこちらに駆け寄って来ました。
「どうして貴方がここに??」
驚くテオに
「たまたま冒険者として立ち寄ったんだ。そしたらギルドから一月でいいからとどまってモンスター退治に協力して欲しいと頼まれ滞在している」
ラーシュもテオがこんなところにいたことに驚いた顔をしつつも嬉しそうに言いました。
テオは、お城ではラーシュの信頼の厚い配下であり、私の警護を担当してくれていた騎士でもありました。
私がお城を離れた時、テオは直ぐにこの街の騎士団長として赴任して来たのです。
てっきりラーシュの指示なのかと思っていましたが……。
テオが自分で決めて来てくれていたのですね。
恐らく、私の『事故』に責任を感じての行動なのでしょう。
気にすることはないから本来テオが居るべき場所に戻るべきだと、もっと早く気づいて言ってあげるべきでしたね。
十年もの間、テオに本当に申し訳ないことをしてしまいました。
改めてテオにこれまで守ってくれていたことへの礼と、こんな辺境に縛り付けてしまった事を詫び、ラーシュにテオを近衛騎士に戻して欲しいと頼めば
「私がここに来たのは自分の意思で、レーア様に会えたのはたまたまですよ」
そう言ってテオはいつもの様に穏やかに微笑み私とラーシュの提案を頑ななまでに辞退しました。
「ところで……えーっと……」
「ここではラーシュだ」
「ラーシュ様はいつまでこちらに?」
テオの言葉に、ラーシュがフッと顔を曇らせました。
「そもそも一月の約束だったから、あと二週間くらかな」
二週間。
近すぎるタイムリミットに、胸の奥が晩秋の夕方の外気よりも冷たくなっていくのを覚えます。
北の彼がここに立ち寄ったのは本当にたまたまで、彼にとってここは、そしてつがいでも何でもない私はさしたる意味も持たないのでしょう。
「街道を抜けられるなら、二週間と言わず早い方がいいでしょう。あそこはもうすぐ雪が降り難所になります」
テオの指す先を見ながら、
「あぁ……そうだな」
そう酷く無機質な声で答えた呟くラーシュの声が、また私の胸を抉りました。
6
お気に入りに追加
590
あなたにおすすめの小説

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

あなたの運命になりたかった
夕立悠理
恋愛
──あなたの、『運命』になりたかった。
コーデリアには、竜族の恋人ジャレッドがいる。竜族には、それぞれ、番という存在があり、それは運命で定められた結ばれるべき相手だ。けれど、コーデリアは、ジャレッドの番ではなかった。それでも、二人は愛し合い、ジャレッドは、コーデリアにプロポーズする。幸せの絶頂にいたコーデリア。しかし、その翌日、ジャレッドの番だという女性が現れて──。
※一話あたりの文字数がとても少ないです。
※小説家になろう様にも投稿しています

貴方の事を愛していました
ハルン
恋愛
幼い頃から側に居る少し年上の彼が大好きだった。
家の繋がりの為だとしても、婚約した時は部屋に戻ってから一人で泣いてしまう程に嬉しかった。
彼は、婚約者として私を大切にしてくれた。
毎週のお茶会も
誕生日以外のプレゼントも
成人してからのパーティーのエスコートも
私をとても大切にしてくれている。
ーーけれど。
大切だからといって、愛しているとは限らない。
いつからだろう。
彼の視線の先に、一人の綺麗な女性の姿がある事に気が付いたのは。
誠実な彼は、この家同士の婚約の意味をきちんと理解している。だから、その女性と二人きりになる事も噂になる様な事は絶対にしなかった。
このままいけば、数ヶ月後には私達は結婚する。
ーーけれど、本当にそれでいいの?
だから私は決めたのだ。
「貴方の事を愛してました」
貴方を忘れる事を。

前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています

関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
百門一新
恋愛
人族貴族の公爵令嬢であるシェスティと、獣人族であり六歳年上の第一王子カディオが、出会った時からずっと犬猿の仲なのは有名な話だった。賢い彼女はある日、それを終わらせるべく(全部捨てる勢いで)隣国へ保留学した。だが、それから数年、彼女のもとに「――カディオが、私を見ないと動機息切れが収まらないので来てくれ、というお願いはなんなの?」という変な手紙か実家から来て、帰国することに。そうしたら、彼の様子が変で……?
※さくっと読める短篇です、お楽しみいだたけましたら幸いです!
※他サイト様にも掲載

運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング

どうやら私は竜騎士様の運命の番みたいです!!
ハルン
恋愛
私、月宮真琴は小さい頃に児童養護施設の前に捨てられていた所を拾われた。それ以来、施設の皆んなと助け合いながら暮らしていた。
だが、18歳の誕生日を迎えたら不思議な声が聞こえて突然異世界にやって来てしまった!
「…此処どこ?」
どうやら私は元々、この世界の住人だったらしい。原因は分からないが、地球に飛ばされた私は18歳になり再び元の世界に戻って来たようだ。
「ようやく会えた。俺の番」
何より、この世界には私の運命の相手がいたのだ。

助けた青年は私から全てを奪った隣国の王族でした
Karamimi
恋愛
15歳のフローラは、ドミスティナ王国で平和に暮らしていた。そんなフローラは元公爵令嬢。
約9年半前、フェザー公爵に嵌められ国家反逆罪で家族ともども捕まったフローラ。
必死に無実を訴えるフローラの父親だったが、国王はフローラの父親の言葉を一切聞き入れず、両親と兄を処刑。フローラと2歳年上の姉は、国外追放になった。身一つで放り出された幼い姉妹。特に体の弱かった姉は、寒さと飢えに耐えられず命を落とす。
そんな中1人生き残ったフローラは、運よく近くに住む女性の助けを受け、何とか平民として生活していた。
そんなある日、大けがを負った青年を森の中で見つけたフローラ。家に連れて帰りすぐに医者に診せたおかげで、青年は一命を取り留めたのだが…
「どうして俺を助けた!俺はあの場で死にたかったのに!」
そうフローラを怒鳴りつける青年。そんな青年にフローラは
「あなた様がどんな辛い目に合ったのかは分かりません。でも、せっかく助かったこの命、無駄にしてはいけません!」
そう伝え、大けがをしている青年を献身的に看護するのだった。一緒に生活する中で、いつしか2人の間に、恋心が芽生え始めるのだが…
甘く切ない異世界ラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる