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本編
迷子の子猫
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翌日受けたクエストは、迷子の子猫探しでした。
子猫を捕まえるための用意していたにゃんこの好物を思わず味見しようとした私の手を、ラーシュが反射的にパッと掴みました。
「だから変な物食べないの!」
普通にお魚の切り身を干したものに火を通してあるので、普通に人が食べても大丈夫なんですけどね?
大丈夫だよという意味を込めて、にゃんこの好物の欠片を
「エイ!」
とラーシュの口に同意なく押し込めば、精神攻撃がクリティカルヒットしたのかラーシュのHPがごっそり削られ、ラーシュの弱点に魚の干物というレアな弱点が加わりました。
「そうそう、遊んでないで猫を探さないと」
がっくりと地面に膝を付くラーシュを放置し、路地裏をのぞき込みます。
迷いネコは大概近くに居ると聞いたことがあるので、民家の隙間やの草むらなどを見てまわりましたが、どこにもいません。
諦めかけたその時でした。
街の門を出てすぐの空中を、カラスに似た鳥型の小型の魔物が獲物に襲い掛かろうとクルクル回っているのが見えました。
嫌な予感がして走り寄れば、魔物の目線の先には、小さな子猫が精いっぱい毛を逆立ています。
間に合わない?!
そう思った時です。
ラーシュが指をサッと横に払った瞬間、風の刃が跳び、子猫に襲い掛かろうとした鳥の魔物を真っ二つに引き裂きました。
子猫に駆け寄り抱き上げます。
そして傍に落ちていた鳥の魔物の死骸を見て固まった私を心配してラーシュも走り寄って来てくれました。
恐らく、私が魔物の死骸を見て恐怖で固まってしまったと思ったのでしょう。
しかし私が足を止めた理由が怯えているからでなく、肉屋で鶏肉を選ぶ時の様に真剣にどこが食べられそうか見ているだけだと気づいて、ラーシュが再びガクッと地面に膝を付きました。
先日約束しましたし、別に本気で味見しようとは思ってませんでしたよ。
肉食の動物はあんまり美味しくないって聞きますし?
「なーん」
私は別に何も悪い事はしていないと思うのですけどね。
腕の中の助けた子猫までもが、ラーシュに同情するように私に非難がましい目を向けました。
******
保護した黒い子猫をギルドに連れて行ったところ
「そのクエストは既に達成されました。何でもお隣の屋根にいたとか」
そう受付のお姉さんに営業用スマイルで返されてしまいました。
「じゃあ、この子は?」
そう言って、思った以上に長く胴が伸びる子猫に若干驚きつつ、脇の下を支えるようにしてその子を持ち上げて見せれば、
「さー。野良ちゃんじゃないですか?」
とサラッと流されてしまいました。
受け取ってもらえなかった子猫を真ん中に挟んで、ラーシュと二人、この子をどうしたものかと顔を見合わせます。
子猫の処遇は後で考える事にして……。
とりあえず次に受けるクエストを探します。
初心者向けクエストは先日受けた収集とか探し物とかばかりなので、次は思い切って中級の者を受けて見ようと思ったのですが。
中級からはモンスターの討伐が入ってくる為
「危険すぎる!」
とラーシュに止められてしまいました。
「いや、でも私ドラゴンスレイヤーだし。鑑定してくれたギルドのお姉さんの話によると、剣にも魔法にも適正あるんだよ?」
「……じゃあ聞くけど、どんな魔法が使えるの?」
ラーシュにそう尋ねられ首を傾げます。
はて?
そう言えば、魔法ってどうやって使うんでしょう??
これまでの人生の中で、魔法や剣を使う必然性に駆られたことなどありませんでしたからね。
考えたこともありませんでした。
首を捻る私を見て、ラーシュが
「どうしたものかなぁ」
と困ったように首を掻きました。
子猫を捕まえるための用意していたにゃんこの好物を思わず味見しようとした私の手を、ラーシュが反射的にパッと掴みました。
「だから変な物食べないの!」
普通にお魚の切り身を干したものに火を通してあるので、普通に人が食べても大丈夫なんですけどね?
大丈夫だよという意味を込めて、にゃんこの好物の欠片を
「エイ!」
とラーシュの口に同意なく押し込めば、精神攻撃がクリティカルヒットしたのかラーシュのHPがごっそり削られ、ラーシュの弱点に魚の干物というレアな弱点が加わりました。
「そうそう、遊んでないで猫を探さないと」
がっくりと地面に膝を付くラーシュを放置し、路地裏をのぞき込みます。
迷いネコは大概近くに居ると聞いたことがあるので、民家の隙間やの草むらなどを見てまわりましたが、どこにもいません。
諦めかけたその時でした。
街の門を出てすぐの空中を、カラスに似た鳥型の小型の魔物が獲物に襲い掛かろうとクルクル回っているのが見えました。
嫌な予感がして走り寄れば、魔物の目線の先には、小さな子猫が精いっぱい毛を逆立ています。
間に合わない?!
そう思った時です。
ラーシュが指をサッと横に払った瞬間、風の刃が跳び、子猫に襲い掛かろうとした鳥の魔物を真っ二つに引き裂きました。
子猫に駆け寄り抱き上げます。
そして傍に落ちていた鳥の魔物の死骸を見て固まった私を心配してラーシュも走り寄って来てくれました。
恐らく、私が魔物の死骸を見て恐怖で固まってしまったと思ったのでしょう。
しかし私が足を止めた理由が怯えているからでなく、肉屋で鶏肉を選ぶ時の様に真剣にどこが食べられそうか見ているだけだと気づいて、ラーシュが再びガクッと地面に膝を付きました。
先日約束しましたし、別に本気で味見しようとは思ってませんでしたよ。
肉食の動物はあんまり美味しくないって聞きますし?
「なーん」
私は別に何も悪い事はしていないと思うのですけどね。
腕の中の助けた子猫までもが、ラーシュに同情するように私に非難がましい目を向けました。
******
保護した黒い子猫をギルドに連れて行ったところ
「そのクエストは既に達成されました。何でもお隣の屋根にいたとか」
そう受付のお姉さんに営業用スマイルで返されてしまいました。
「じゃあ、この子は?」
そう言って、思った以上に長く胴が伸びる子猫に若干驚きつつ、脇の下を支えるようにしてその子を持ち上げて見せれば、
「さー。野良ちゃんじゃないですか?」
とサラッと流されてしまいました。
受け取ってもらえなかった子猫を真ん中に挟んで、ラーシュと二人、この子をどうしたものかと顔を見合わせます。
子猫の処遇は後で考える事にして……。
とりあえず次に受けるクエストを探します。
初心者向けクエストは先日受けた収集とか探し物とかばかりなので、次は思い切って中級の者を受けて見ようと思ったのですが。
中級からはモンスターの討伐が入ってくる為
「危険すぎる!」
とラーシュに止められてしまいました。
「いや、でも私ドラゴンスレイヤーだし。鑑定してくれたギルドのお姉さんの話によると、剣にも魔法にも適正あるんだよ?」
「……じゃあ聞くけど、どんな魔法が使えるの?」
ラーシュにそう尋ねられ首を傾げます。
はて?
そう言えば、魔法ってどうやって使うんでしょう??
これまでの人生の中で、魔法や剣を使う必然性に駆られたことなどありませんでしたからね。
考えたこともありませんでした。
首を捻る私を見て、ラーシュが
「どうしたものかなぁ」
と困ったように首を掻きました。
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