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学校
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ーー夜の学校というのは、なんとも不気味な所である。
「お邪魔しまーす…」
夜の学校に忍び込んだ僕は、そっと教室の扉を開ける。
見つかったら怒られる、そんな事分かりきっていた。それでも、どうしてもここに来なければいけなかったのだ。
「ああ、あったあった」
誰も居ない教室で、独り言を呟く。そうでもしないと、怖くて動けなくなりそうだったから。
机の中から1冊のノートを取り出す。パラパラと中を見ると、その中に1枚の紙を見つけた。
この紙が、今日僕が夜の学校に忍び込んでまで手に入れたかったもの。こんなの他の人に見つかったら、次の日から僕は学校に行けなくなってしまう。
「よし、帰ろ」
僕は呟き、その紙を持って歩き出す。
教室を出て、長い廊下を歩き、階段を降りる。
その一連の動作でさえ、ビビりな僕にはキツかった。
下駄箱で靴を履き替える。よし出ようと玄関の扉に手をかけ、固まった。
「うっそ、閉まってる…」
もしかしたら、警備の人が閉めたのかもしれない。そう思って、僕は別の出口を探すべく振り返った。
クスッ
振り返った僕の目の前に、少女が立っていた。見たことの無い制服を着た少女が、クスクスと笑いながら僕を見る。
「っ?!!」
人間、驚きすぎると声が出ないらしい。僕は考えるよりも先に、走り出した。
ハアハアと息を切らし、渡り廊下で振り返る。少女は相変わらず僕を見てクスクスと笑っていた。
「なん、何なんだよ…!誰だよ、お前!!」
僕の言葉に少女は答えることなく、クスクスと笑い続ける。不気味で仕方がなかった。
逃げなきゃ。そう思いながら、目の前の扉に手をかける。ここの扉は鍵が壊れていて閉まらないのを知っていた。
思い切り扉を押すと、ギギギと音を立てながら扉が開く。外に出ようと1歩踏み出した時、後ろから声が聞こえた。
「また明日」
その声は少女のような、少年のような、大人の男性のような、お婆さんのような…複数の声が重なったような不気味な音だった。
ちらりと振り返ると、少女がニコリと笑って手を振った。その手は赤く染っており、反対の手にキラリと光る包丁のようなものが見えた。
「うわあああああ!!」
僕は叫びながら全力で逃げるように走る。
はっと気付けば、家の前にいた。手を見ると、しっかりと紙を握っていた。安堵の溜息を吐きながら、僕は紙を開く。
「あ、れ…?」
その紙に書いてあったものを見て、思わず手を離す。
ヒラリと地面に落ちた紙には、赤いものが付いていた。
嘘だ、ともう一度紙を見る。
『君は、明日』
紙には赤いペンでそう書いてあった。
僕はこの紙にこんなことを書いた覚えは無い。だってこの紙は、僕が好きな子に渡そうとしたラブレターなんだから。
「どうなってんだよ…」
そう呟いた僕の後ろから、クスクスと笑い声が聞こえた気がした。
次の日、僕は学校に行かなかった。またあの少女に会うのが怖かったから。
…でも、少女は僕の目の前に現れた。
少女はニコリと笑って、手に持った包丁を振りかざす。振り下ろすその瞬間、少女がクスリと笑うのが見えた。
ーー『夜のニュースをお伝えします。本日未明、○○さん30歳が何者かに刺され、死亡した状態で発見されました。部屋には鍵がかかっており、中には大量の女子中学生の写真が……』
夜の教室のテレビから、ニュースキャスターの声がする。
クスリ
包丁を持った見知らぬ制服の少女は、それを見てクスクスと笑っていた。
「お邪魔しまーす…」
夜の学校に忍び込んだ僕は、そっと教室の扉を開ける。
見つかったら怒られる、そんな事分かりきっていた。それでも、どうしてもここに来なければいけなかったのだ。
「ああ、あったあった」
誰も居ない教室で、独り言を呟く。そうでもしないと、怖くて動けなくなりそうだったから。
机の中から1冊のノートを取り出す。パラパラと中を見ると、その中に1枚の紙を見つけた。
この紙が、今日僕が夜の学校に忍び込んでまで手に入れたかったもの。こんなの他の人に見つかったら、次の日から僕は学校に行けなくなってしまう。
「よし、帰ろ」
僕は呟き、その紙を持って歩き出す。
教室を出て、長い廊下を歩き、階段を降りる。
その一連の動作でさえ、ビビりな僕にはキツかった。
下駄箱で靴を履き替える。よし出ようと玄関の扉に手をかけ、固まった。
「うっそ、閉まってる…」
もしかしたら、警備の人が閉めたのかもしれない。そう思って、僕は別の出口を探すべく振り返った。
クスッ
振り返った僕の目の前に、少女が立っていた。見たことの無い制服を着た少女が、クスクスと笑いながら僕を見る。
「っ?!!」
人間、驚きすぎると声が出ないらしい。僕は考えるよりも先に、走り出した。
ハアハアと息を切らし、渡り廊下で振り返る。少女は相変わらず僕を見てクスクスと笑っていた。
「なん、何なんだよ…!誰だよ、お前!!」
僕の言葉に少女は答えることなく、クスクスと笑い続ける。不気味で仕方がなかった。
逃げなきゃ。そう思いながら、目の前の扉に手をかける。ここの扉は鍵が壊れていて閉まらないのを知っていた。
思い切り扉を押すと、ギギギと音を立てながら扉が開く。外に出ようと1歩踏み出した時、後ろから声が聞こえた。
「また明日」
その声は少女のような、少年のような、大人の男性のような、お婆さんのような…複数の声が重なったような不気味な音だった。
ちらりと振り返ると、少女がニコリと笑って手を振った。その手は赤く染っており、反対の手にキラリと光る包丁のようなものが見えた。
「うわあああああ!!」
僕は叫びながら全力で逃げるように走る。
はっと気付けば、家の前にいた。手を見ると、しっかりと紙を握っていた。安堵の溜息を吐きながら、僕は紙を開く。
「あ、れ…?」
その紙に書いてあったものを見て、思わず手を離す。
ヒラリと地面に落ちた紙には、赤いものが付いていた。
嘘だ、ともう一度紙を見る。
『君は、明日』
紙には赤いペンでそう書いてあった。
僕はこの紙にこんなことを書いた覚えは無い。だってこの紙は、僕が好きな子に渡そうとしたラブレターなんだから。
「どうなってんだよ…」
そう呟いた僕の後ろから、クスクスと笑い声が聞こえた気がした。
次の日、僕は学校に行かなかった。またあの少女に会うのが怖かったから。
…でも、少女は僕の目の前に現れた。
少女はニコリと笑って、手に持った包丁を振りかざす。振り下ろすその瞬間、少女がクスリと笑うのが見えた。
ーー『夜のニュースをお伝えします。本日未明、○○さん30歳が何者かに刺され、死亡した状態で発見されました。部屋には鍵がかかっており、中には大量の女子中学生の写真が……』
夜の教室のテレビから、ニュースキャスターの声がする。
クスリ
包丁を持った見知らぬ制服の少女は、それを見てクスクスと笑っていた。
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