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中編『狩人と護人』
六話
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―――雨谷の工房で一泊し、静也と晴樹はお堂に戻る。
静也が天春と落魅に雨谷のことを愚痴っていると、晴樹の携帯が鳴った。
「あ、ちょっとごめん」
画面を見た晴樹が立ち上がり、お堂の外へ移動する。
いつもその場で電話する晴樹が・・・珍しい。静也がそんなことを考えていると、
落魅が言った。
「・・・優花って、あのヌンチャク持ってた女ですかい?」
「清水さんがどうかしたのか?」
静也が首を傾げると、落魅はお堂の扉を指さしながら言った。
「いや・・・晴樹の携帯に、優花って出てやしたから」
「よく見えたね?!」
天春が驚いた声を上げる。目は良いですからねいと落魅はニヤニヤ笑うと、少し
考えてボソッと呟いた。
「・・・彼女、できてたんですねい」
「かのっ・・・え?!!」
静也が驚いた声を上げる。
「違うんですかい?」
「晴から何も聞いてないの?」
落魅と天春がそう言って首を傾げる。
「え、俺何も・・・」
静也が困惑した顔をしていると、電話を終えた晴樹が戻ってきた。
「何の話?」
そう言って首を傾げた晴樹に、天春は言った。
「晴、優花ちゃんと付き合ってるの?」
「・・・・・・へ?」
晴樹は素っ頓狂な声を上げると、顔を真っ赤にして固まる。
「へ~」
落魅がニヤニヤと笑うと、晴樹はプルプルと震えながら落魅に近付く。
「だったら何だよ!!」
そう言いながら思いっ切り落魅の頭目掛けて振り下ろされた晴樹の拳を、落魅は
ガシッと受け止める。だがそのまま押されるように落魅が倒れると、ゴンッという
音がお堂の中に響いた。
「晴樹・・・また力強くなってやせんか・・・」
頭を押さえながら痛そうに蹲り、落魅は言う。
「よくよく考えたら、晴樹って素手で落魅殴って気絶させてるんだよな・・・」
「静よりかなり力強いよね、晴・・・」
静也と天春がそんな会話をしていると、晴樹はゆっくりと二人を見る。
二人がビクッと肩を震わせると、晴樹は大きく息を吐いて言った。
「付き合ってるよ、悪い?」
「いや、悪くない悪くない」
静也と天春は声を揃えて首を横に振る。
ちなみにいつから・・・?と天春が聞くと、卒業試験の日と晴樹は答えた。
卒業試験を終えた晴樹と清水さんの頬が赤かったり、それを見て和正と彩音が
ニッコリと笑っていたり・・・。なるほどそういうことだったのかと静也は納得
する。
「・・・優花に頼んでたんだ、妖刀狩りの情報集めてくれって」
「え、清水さん一般企業だよな?集めるとかできるもんなのか?」
晴樹の言葉に静也が言うと、晴樹は頷いて言った。
「優花、ああいう性格でしょ?だから、顔も広くてさ。今回は清水家の情報網も
使ってくれたらしいんだけど・・・」
やっぱお嬢様凄いよ・・・と晴樹は呟く。
「妖刀狩りの名前は谷透 修哉。おそらく静兄と同い年。能力は霊体化、自分の体と
身に着けている物が様々な物をすり抜けるようになる能力らしい。それと、まあ
知ってるだろうけど武器は刀。妖刀じゃなくて退魔の刀ね。職業はフリーランスの
祓い屋なんだけど、僕達みたいに正規で受けてる訳じゃないみたい。
・・・あとは、雷羅さんが教えてくれた情報の通り」
晴樹の報告に、凄えな・・・と静也が呟く。
「祓い屋にも、正規とかそうじゃないとかあるんですねい」
落魅が起き上がりながらそう言うと、晴樹は頷く。
「前に麗奈さんが言ってたんだけど、被害云々関係なしに個人的な恨みで妖の討伐を
依頼する人もいるんだって。そういうのは普通の祓い屋じゃ受けてくれないから、
裏で高額取引されてるみたい。あとは、祓い屋本人の個人的な恨みとかも正規では
ないね」
「もしかして、狗神さんが前に襲われたのって・・・」
晴樹の言葉に天春がそう言うと、静也が頷いて言った。
「多分そうなんだろうな。後日聞いたら、狗神も天狗さんも原因に心当たりがない
って言ってたし」
恨み買われるようなことは色々としてそうだけど。そうボソッと呟いた静也に、
天春は苦笑いを浮かべる。
「・・・ここ最近姿を現してないってのが気掛かりなんだよな」
「晴が足を撃ち抜いたんでしょ?人間の回復力だと結構掛かりそうなものだけど」
静也の言葉に天春が言う。
「回復しきる前に探し出して捕まえる?」
晴樹がそう言うと、落魅が溜息を吐いて言った。
「これだけ時間があれば、流石に動けるまでには回復してまさあ。考えるべき
なのは、どうやって攻撃を当てるかだろうが」
「落魅が回復するって言っても何か信憑性薄いんだけど」
天春がムスッとした顔をすると、落魅はソースは晴樹でさあと晴樹を指さす。
天春と静也が何とも言えない顔で納得していると、晴樹はムッとした顔で言った。
「・・・何か、ムカつく」
―――帰ってきた天狗と、一緒にやって来た狗神も交えて、静也達は妖刀狩り・・・
修哉への対策を練る。
「攻撃を当てる・・・」
「殺さないように、のう・・・」
難しそうな顔で悩む天狗と狗神に、そういうのと戦ったことない?と晴樹が聞く。
「ないから困っとるんじゃろう」
声を揃えて言った天狗と狗神に静也達が溜息を吐く。
「静と晴は何かない?」
「うーん・・・」
天春の言葉に晴樹は悩ましそうな顔をする。
「あるにはあるけど、絶対怒られる・・・」
そうボソッと言った静也に、落魅が言った。
「取り敢えず言ってみなせえ」
「あー・・・俺が攻撃食らった瞬間に、晴樹にぶん殴ってもらう」
「静兄が怪我する前提は駄目!」
静也の言葉を聞くや否や語気を強めて言った晴樹に、だよな・・・と静也は溜息を
吐く。
誰も怪我をしないなんて無理がある。皆それを分かっていたが、どうしても怪我を
しない方法を考えずにはいられなかった。
静也が天春と落魅に雨谷のことを愚痴っていると、晴樹の携帯が鳴った。
「あ、ちょっとごめん」
画面を見た晴樹が立ち上がり、お堂の外へ移動する。
いつもその場で電話する晴樹が・・・珍しい。静也がそんなことを考えていると、
落魅が言った。
「・・・優花って、あのヌンチャク持ってた女ですかい?」
「清水さんがどうかしたのか?」
静也が首を傾げると、落魅はお堂の扉を指さしながら言った。
「いや・・・晴樹の携帯に、優花って出てやしたから」
「よく見えたね?!」
天春が驚いた声を上げる。目は良いですからねいと落魅はニヤニヤ笑うと、少し
考えてボソッと呟いた。
「・・・彼女、できてたんですねい」
「かのっ・・・え?!!」
静也が驚いた声を上げる。
「違うんですかい?」
「晴から何も聞いてないの?」
落魅と天春がそう言って首を傾げる。
「え、俺何も・・・」
静也が困惑した顔をしていると、電話を終えた晴樹が戻ってきた。
「何の話?」
そう言って首を傾げた晴樹に、天春は言った。
「晴、優花ちゃんと付き合ってるの?」
「・・・・・・へ?」
晴樹は素っ頓狂な声を上げると、顔を真っ赤にして固まる。
「へ~」
落魅がニヤニヤと笑うと、晴樹はプルプルと震えながら落魅に近付く。
「だったら何だよ!!」
そう言いながら思いっ切り落魅の頭目掛けて振り下ろされた晴樹の拳を、落魅は
ガシッと受け止める。だがそのまま押されるように落魅が倒れると、ゴンッという
音がお堂の中に響いた。
「晴樹・・・また力強くなってやせんか・・・」
頭を押さえながら痛そうに蹲り、落魅は言う。
「よくよく考えたら、晴樹って素手で落魅殴って気絶させてるんだよな・・・」
「静よりかなり力強いよね、晴・・・」
静也と天春がそんな会話をしていると、晴樹はゆっくりと二人を見る。
二人がビクッと肩を震わせると、晴樹は大きく息を吐いて言った。
「付き合ってるよ、悪い?」
「いや、悪くない悪くない」
静也と天春は声を揃えて首を横に振る。
ちなみにいつから・・・?と天春が聞くと、卒業試験の日と晴樹は答えた。
卒業試験を終えた晴樹と清水さんの頬が赤かったり、それを見て和正と彩音が
ニッコリと笑っていたり・・・。なるほどそういうことだったのかと静也は納得
する。
「・・・優花に頼んでたんだ、妖刀狩りの情報集めてくれって」
「え、清水さん一般企業だよな?集めるとかできるもんなのか?」
晴樹の言葉に静也が言うと、晴樹は頷いて言った。
「優花、ああいう性格でしょ?だから、顔も広くてさ。今回は清水家の情報網も
使ってくれたらしいんだけど・・・」
やっぱお嬢様凄いよ・・・と晴樹は呟く。
「妖刀狩りの名前は谷透 修哉。おそらく静兄と同い年。能力は霊体化、自分の体と
身に着けている物が様々な物をすり抜けるようになる能力らしい。それと、まあ
知ってるだろうけど武器は刀。妖刀じゃなくて退魔の刀ね。職業はフリーランスの
祓い屋なんだけど、僕達みたいに正規で受けてる訳じゃないみたい。
・・・あとは、雷羅さんが教えてくれた情報の通り」
晴樹の報告に、凄えな・・・と静也が呟く。
「祓い屋にも、正規とかそうじゃないとかあるんですねい」
落魅が起き上がりながらそう言うと、晴樹は頷く。
「前に麗奈さんが言ってたんだけど、被害云々関係なしに個人的な恨みで妖の討伐を
依頼する人もいるんだって。そういうのは普通の祓い屋じゃ受けてくれないから、
裏で高額取引されてるみたい。あとは、祓い屋本人の個人的な恨みとかも正規では
ないね」
「もしかして、狗神さんが前に襲われたのって・・・」
晴樹の言葉に天春がそう言うと、静也が頷いて言った。
「多分そうなんだろうな。後日聞いたら、狗神も天狗さんも原因に心当たりがない
って言ってたし」
恨み買われるようなことは色々としてそうだけど。そうボソッと呟いた静也に、
天春は苦笑いを浮かべる。
「・・・ここ最近姿を現してないってのが気掛かりなんだよな」
「晴が足を撃ち抜いたんでしょ?人間の回復力だと結構掛かりそうなものだけど」
静也の言葉に天春が言う。
「回復しきる前に探し出して捕まえる?」
晴樹がそう言うと、落魅が溜息を吐いて言った。
「これだけ時間があれば、流石に動けるまでには回復してまさあ。考えるべき
なのは、どうやって攻撃を当てるかだろうが」
「落魅が回復するって言っても何か信憑性薄いんだけど」
天春がムスッとした顔をすると、落魅はソースは晴樹でさあと晴樹を指さす。
天春と静也が何とも言えない顔で納得していると、晴樹はムッとした顔で言った。
「・・・何か、ムカつく」
―――帰ってきた天狗と、一緒にやって来た狗神も交えて、静也達は妖刀狩り・・・
修哉への対策を練る。
「攻撃を当てる・・・」
「殺さないように、のう・・・」
難しそうな顔で悩む天狗と狗神に、そういうのと戦ったことない?と晴樹が聞く。
「ないから困っとるんじゃろう」
声を揃えて言った天狗と狗神に静也達が溜息を吐く。
「静と晴は何かない?」
「うーん・・・」
天春の言葉に晴樹は悩ましそうな顔をする。
「あるにはあるけど、絶対怒られる・・・」
そうボソッと言った静也に、落魅が言った。
「取り敢えず言ってみなせえ」
「あー・・・俺が攻撃食らった瞬間に、晴樹にぶん殴ってもらう」
「静兄が怪我する前提は駄目!」
静也の言葉を聞くや否や語気を強めて言った晴樹に、だよな・・・と静也は溜息を
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しない方法を考えずにはいられなかった。
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