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妖雨谷
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―――銃声と共に、雪華の白い肌が赤く染まる。それは、突然のことだった。
「雪華!!」
雨谷が慌てて雪華に駆け寄ると、雪華は消え入りそうな声で言った。
「申し訳、ありません・・・」
気絶してしまった雪華を抱え、雨谷は辺りを見渡す。雪華を襲ったのは、五人組の
祓い屋だった。
「彼女、何もしてないんだけど~?」
雨谷がそう言うと、銃を持った祓い屋の一人が言った。
「・・・妖は、大妖怪は存在するだけで悪なのだよ。悪は殺さねばな」
「・・・あっそう」
雨谷はそう言うと、手元に刀を出現させる。
それぞれの武器を構えた祓い屋に、雨谷は言った。
「じゃあオイラの従者を襲った君達は、オイラにとっての悪ってことだね~。
・・・殺される覚悟はできてるだろうな?」
雨谷から殺気が発せられる。その瞬間、銃を持っていた祓い屋の首が飛んだ。
「なっ・・・?!」
祓い屋達から動揺した声が上がる。その間にも、斧を持っていた祓い屋の首が
飛んだ。
「このっ・・・!」
刀を持っていた祓い屋が雨谷の攻撃を受け止めると、雨谷は光を映さない深淵の
ような黒い目を更に黒く淀ませ、祓い屋の目を見て言った。
「君、その妖刀無理矢理使ってるでしょ」
「は・・・?」
困惑した声を上げつつ、祓い屋は刀を振るう。雨谷はそれを避けると、祓い屋に
斬りかかる。
雨谷の刀を弾いた祓い屋は距離を取り、呟いた。
「何で知って・・・」
雨谷は一瞬で距離を詰め、祓い屋の首元に刃を当てる。そして、ヘラヘラと笑って
言った。
「だってその妖刀・・・作ったの、オイラだもん」
祓い屋の首が飛ぶ。落ちた妖刀を拾い上げた雨谷は、残った二人の祓い屋を睨み
つけて言った。
「どっちが先に死にたい?」
悲鳴を上げながら、祓い屋達は逃げ出そうとする。雨谷は無言で祓い屋との距離を
詰めると、刀を振り上げる。
「うわああああ!」
祓い屋の一人が叫びながら雨谷に向かってナイフを投げる。それをひょいと避けた
雨谷に、もう一人の祓い屋が何かを呟きながら手を突き出した。
雨谷の動きが止まる。懐からもう一本ナイフを取り出した祓い屋が、雨谷の首を
狙う。
「ああ、駄目だよ」
雨谷がナイフを持った祓い屋の目をじっと見ながらそう言うと、祓い屋は動きを
止めた。
「お、おい!何をしている!!」
「え、あ・・・何、してるんだろ」
そのままその場に座り込んでしまった祓い屋にもう一人の祓い屋が声を掛けるも、
ナイフを持った祓い屋の視線は雨谷の目に釘付けになっていた。
「君もさあ、大人しくしてくれないかな」
雨谷が手を突き出したままの祓い屋に言う。たまたま雨谷の目を見ていたその
祓い屋は、スッと手を下ろした。
「良いね君達、素直だ」
動けるようになった雨谷はそう言ってニッコリと笑う。
祓い屋達がハッとした顔になった瞬間、連続して祓い屋の首が飛んだ。
―――雨谷が祓い屋の死骸を一カ所に集めている間に、雪華が目を覚ます。
「あ、雪華おはよ~」
雨谷がそう言ってニコニコと笑うと、起き上がった雪華は申し訳なさそうな顔を
して言った。
「雨谷様、お手を煩わせてしまいました・・・」
「良いの良いの、気にしないで~。あいつら全員合わせてもタケちんより弱いくらい
だったし、そんなに大変じゃなかったからさ~」
ちょっと危ないとこもあったけど~と言って雨谷はヘラヘラと笑う。
「武様と同じくらい強かったらどうするおつもりだったのですか・・・」
逃げてくだされば良かったのに。雪華がそう呟いて溜息を吐くと、雨谷は言った。
「やだなあ、同じくらいなら勝てるよ~。流石に暴走したシズちん並とか言われたら
無理だけどさ~」
「・・・そうですか」
「それにさ」
雨谷は祓い屋の頭を死骸の上に積みながら言う。
雪華が首を傾げると、雨谷は優しい笑みを浮かべて言った。
「大切な従者を見捨てるなんて、オイラは絶対にしないよ」
「そう、ですか・・・」
恥ずかしそうに俯いた雪華の頭を、雨谷はそっと撫でる。
「オイラが死なない限り、雪華は絶対に死なせない。契約した時、そう約束した
でしょ?」
「ですがあの時、雨谷様はまだ神様でいらっしゃいました。妖となった今では無効
なのでは?」
雨谷の言葉に雪華がそう言うと、雨谷はクスリと笑って言った。
「契約はなくなったけど、約束はそのままだよ~?それを言ったら、雪華だってもう
オイラの傍に居なくても良いじゃんか」
「・・・それは契約ではなく、約束ですので」
ぽつりと呟いた雪華に、雨谷は笑う。
「帰ろうか、雪華」
そう言って手を差し伸べた雨谷の手を取り、雪華は頷く。
煙に包まれた二人の妖は、積まれた祓い屋の死骸を残してその場から姿を消した。
「雪華!!」
雨谷が慌てて雪華に駆け寄ると、雪華は消え入りそうな声で言った。
「申し訳、ありません・・・」
気絶してしまった雪華を抱え、雨谷は辺りを見渡す。雪華を襲ったのは、五人組の
祓い屋だった。
「彼女、何もしてないんだけど~?」
雨谷がそう言うと、銃を持った祓い屋の一人が言った。
「・・・妖は、大妖怪は存在するだけで悪なのだよ。悪は殺さねばな」
「・・・あっそう」
雨谷はそう言うと、手元に刀を出現させる。
それぞれの武器を構えた祓い屋に、雨谷は言った。
「じゃあオイラの従者を襲った君達は、オイラにとっての悪ってことだね~。
・・・殺される覚悟はできてるだろうな?」
雨谷から殺気が発せられる。その瞬間、銃を持っていた祓い屋の首が飛んだ。
「なっ・・・?!」
祓い屋達から動揺した声が上がる。その間にも、斧を持っていた祓い屋の首が
飛んだ。
「このっ・・・!」
刀を持っていた祓い屋が雨谷の攻撃を受け止めると、雨谷は光を映さない深淵の
ような黒い目を更に黒く淀ませ、祓い屋の目を見て言った。
「君、その妖刀無理矢理使ってるでしょ」
「は・・・?」
困惑した声を上げつつ、祓い屋は刀を振るう。雨谷はそれを避けると、祓い屋に
斬りかかる。
雨谷の刀を弾いた祓い屋は距離を取り、呟いた。
「何で知って・・・」
雨谷は一瞬で距離を詰め、祓い屋の首元に刃を当てる。そして、ヘラヘラと笑って
言った。
「だってその妖刀・・・作ったの、オイラだもん」
祓い屋の首が飛ぶ。落ちた妖刀を拾い上げた雨谷は、残った二人の祓い屋を睨み
つけて言った。
「どっちが先に死にたい?」
悲鳴を上げながら、祓い屋達は逃げ出そうとする。雨谷は無言で祓い屋との距離を
詰めると、刀を振り上げる。
「うわああああ!」
祓い屋の一人が叫びながら雨谷に向かってナイフを投げる。それをひょいと避けた
雨谷に、もう一人の祓い屋が何かを呟きながら手を突き出した。
雨谷の動きが止まる。懐からもう一本ナイフを取り出した祓い屋が、雨谷の首を
狙う。
「ああ、駄目だよ」
雨谷がナイフを持った祓い屋の目をじっと見ながらそう言うと、祓い屋は動きを
止めた。
「お、おい!何をしている!!」
「え、あ・・・何、してるんだろ」
そのままその場に座り込んでしまった祓い屋にもう一人の祓い屋が声を掛けるも、
ナイフを持った祓い屋の視線は雨谷の目に釘付けになっていた。
「君もさあ、大人しくしてくれないかな」
雨谷が手を突き出したままの祓い屋に言う。たまたま雨谷の目を見ていたその
祓い屋は、スッと手を下ろした。
「良いね君達、素直だ」
動けるようになった雨谷はそう言ってニッコリと笑う。
祓い屋達がハッとした顔になった瞬間、連続して祓い屋の首が飛んだ。
―――雨谷が祓い屋の死骸を一カ所に集めている間に、雪華が目を覚ます。
「あ、雪華おはよ~」
雨谷がそう言ってニコニコと笑うと、起き上がった雪華は申し訳なさそうな顔を
して言った。
「雨谷様、お手を煩わせてしまいました・・・」
「良いの良いの、気にしないで~。あいつら全員合わせてもタケちんより弱いくらい
だったし、そんなに大変じゃなかったからさ~」
ちょっと危ないとこもあったけど~と言って雨谷はヘラヘラと笑う。
「武様と同じくらい強かったらどうするおつもりだったのですか・・・」
逃げてくだされば良かったのに。雪華がそう呟いて溜息を吐くと、雨谷は言った。
「やだなあ、同じくらいなら勝てるよ~。流石に暴走したシズちん並とか言われたら
無理だけどさ~」
「・・・そうですか」
「それにさ」
雨谷は祓い屋の頭を死骸の上に積みながら言う。
雪華が首を傾げると、雨谷は優しい笑みを浮かべて言った。
「大切な従者を見捨てるなんて、オイラは絶対にしないよ」
「そう、ですか・・・」
恥ずかしそうに俯いた雪華の頭を、雨谷はそっと撫でる。
「オイラが死なない限り、雪華は絶対に死なせない。契約した時、そう約束した
でしょ?」
「ですがあの時、雨谷様はまだ神様でいらっしゃいました。妖となった今では無効
なのでは?」
雨谷の言葉に雪華がそう言うと、雨谷はクスリと笑って言った。
「契約はなくなったけど、約束はそのままだよ~?それを言ったら、雪華だってもう
オイラの傍に居なくても良いじゃんか」
「・・・それは契約ではなく、約束ですので」
ぽつりと呟いた雪華に、雨谷は笑う。
「帰ろうか、雪華」
そう言って手を差し伸べた雨谷の手を取り、雪華は頷く。
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