異能力と妖と

彩茸

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卒業編

似者

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―――結論から言うと・・・大成功だった。突っ込んだ山野には目もくれず、凍獣は
俺を狙って襲い掛かった。死角から鉄球を放った山野が、凍獣の頭蓋骨を砕く。
衝撃でポケットから飛び出した石を残し、凍獣は塵となって消えていった。
山野は息を吐き石を拾い上げる。そして、俺を見て言った。

「帰るぞ」

 俺は山野に近付き、無言で頭をはたく。パァンと良い音が鳴り、山野は俺を睨み
 つけた。

「仕返しだ」

 俺がそう言うと、山野はムスッとした顔をしつつも何も言わず歩き出す。
 何も言ってこないなんて珍しい。そう思いながら歩いていると、山野がちらりと
 俺を見て言った。

「・・・お前、何か雰囲気変わったな」

「は?」

「今までは大人しそうなフリしてるように見えてたが、今日のお前は・・・・・・
 いや、何でもない」

 そう言って目を逸らした山野に、俺は言った。

「・・・色々とあったんだよ」

「そうかよ」

「深く聞いてこないのか」

「何回お前と組んでると思ってんだ、踏み込まない方が良い話題くらいお前の反応
 見てれば分かる」

「あっそう」

 会話はそこで止まり、俺達は無言のまま学園に戻る。
 喧嘩をしていない俺達がそんなに珍しかったのか、周りが俺達を見てざわついて
 いた。



―――先生に報告を済ませ、山野は立ち去ろうとする。

「待て、山野」

 俺が呼び止めると、山野は不機嫌そうな顔をしながらも振り向いた。

「何だよ」

「これやるよ」

 そう言って俺は帰りに買ったペットボトルを鞄から取り出し、山野に投げ渡す。
 キャッチした山野は、それを見て目を見開いた。

「山霧、これ・・・」

「好きなんだろ、それ」

「何で知ってるんだ」

「何回お前と組んでると思ってるんだ、好きな物くらいお前の反応見てれば分かる」

「・・・そうかよ」

 これで貸し借り無しだ。そう言って背を向けた俺に、山野は言った。

「ありがとう」

 驚いて振り返る。一瞬山野と目が合ったが、すぐに山野は立ち去っていった。
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