異能力と妖と

彩茸

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決戦編

元通

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―――和正と誠が雪華の元へ向かった後、いつの間にか狗神と雨谷も姿を消して
いた。何処に行ったんだろうと思っていると、彩音に詰め寄られる。
矢継ぎ早にされる質問にたじろぎながらも、一つずつ答えていく。
八仙のこと、陽煉のこと、落魅のこと・・・そして、暴走のこと。全て答え終わる
頃には彩音も清水さんも涙目になっており、心配されていたんだなと気付く。

「・・・思ったんですけど、お兄さん雰囲気変わりました?」

 涙を拭った清水さんがそう言って首を傾げる。
 そうか?と俺も首を傾げると、晴樹が言った。

「静兄、前はだったんだよ。・・・本来の静兄に、戻った感じ」

 晴樹は嬉しそうにふわりと笑う。それを見た清水さんは、そうなんだと嬉しそうに
 笑った。

「・・・そうだ。なあ彩音、藍晶と曹灰大丈夫か?八仙に斬られてたけど」

 俺がそう聞くと、彩音は頷く。

「あの子達、回復早いのよ。それこそ、妖と同じくらいにはね」

 なら良かったと俺が笑うと、彩音はムスッとした顔になる。

「何となく雰囲気変わったからもしかしてと思ってたけど、そういう所は変わらない
 のね」

「え?」

「あなた、何で自分の方が重症なのに他人の心配ばっかりするのよ」

 彩音にそう言われ、そうだっけと首を傾げる。すると、ずっと静かに俺達を見て
 いた落魅が口を開いた。

「そうでさあ。まあ、暴走中のあんたは他人のことはどうでも良くなっていたよう
 ですがねい・・・」

「でも、昨日の夜はそのおかげでちょっと嬉しかったかも」

 晴樹がそう言ってクスリと笑う。

「昨日の夜?」

 彩音と清水さんが首を傾げて晴樹を見る。
 落魅はニヤニヤと笑うと、俺を見ながら言った。

「・・・あんなの皆に伝えたら、静也は暫く口利いてくれなくなるでしょうねい」

 落魅の言葉に昨夜のことを思い出す。・・・今まで暴走中の記憶は曖昧だったが、
 今回は何だか妙にはっきりと覚えていた。
 段々と顔が熱くなってくる。俺の顔を見て、気になるじゃないですかと清水さんが
 呟くように言った。



―――朝食を食べながら、皆に心配掛けてごめんと謝る。優しく笑う皆を見て怒ら
ないのかと思っていると、晴樹に冷ましていないお茶漬けを突っ込まれた。
舌を火傷した俺を見て、皆が笑う。つられて俺も笑い、食卓は笑い声に包まれた。
・・・一人称も性格も、晴樹曰く俺の気付いていなかった小さな癖も、全部全部元に
戻った。やはり学校での俺と今の俺は少し違うらしく、和正達は時折困惑した表情を
浮かべる。それでも、友達だからと笑顔で受け入れてくれた。

「そうだ、雨谷」

 部屋の中で皆がワイワイとしている中、俺は雨谷に話し掛ける。
 何~?と振り向いた雨谷に、俺は言った。

「陽煉、回収したんだけどさ。あれ返そうと思って」

「え、あれって八仙の討伐証明でしょ~?オイラに渡しちゃっても良いの?」

 言われてみればそうか。
 確かに・・・と悩む俺を見て、晴樹が言った。

「刀丸々じゃなくても、何処か貰えば良いんじゃない?」

「そうなると・・・あ~、つば持ってく?」

「え、良いのか?刀使えなくなるんじゃ・・・」

 雨谷の提案に俺がそう言うと、雨谷はヘラヘラと笑って言った。

「大丈夫大丈夫~、どっちみち陽煉をこのまま残す気はないからさ」

 俺と晴樹が首を傾げるも、雨谷はそれ以上何も言わなかった。
 雨谷が立ち去った後、雪華が話し掛けてくる。雪華は俺と晴樹にしか聞こえない
 ような小声で言った。

「陽煉のことなのですが、雨谷様は大変気にされておりまして。あれは存在しては
 いけないものだと度々仰っておりました。ただ、陽煉の所有者は八仙に至るまで
 頻繁に変わっており、回収の機会が中々訪れず・・・。今回、静也様に回収して
 頂けて本当に助かりました」

「陽煉、どうするつもりなの?」

 晴樹が聞くと、雪華は困ったように笑う。

「従者の私が言って良いものか分かりませんが・・・。おそらく、折って別の刀に
 変えるのではないでしょうか。あの方は、昔からそういう所がありますので」

 素材が曰く付きであろうと、すぐ刀にしてしまわれるのです。そう言った雪華は、
 少し不満げな様子だった。
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