195 / 203
決戦編
元通
しおりを挟む
―――和正と誠が雪華の元へ向かった後、いつの間にか狗神と雨谷も姿を消して
いた。何処に行ったんだろうと思っていると、彩音に詰め寄られる。
矢継ぎ早にされる質問にたじろぎながらも、一つずつ答えていく。
八仙のこと、陽煉のこと、落魅のこと・・・そして、暴走のこと。全て答え終わる
頃には彩音も清水さんも涙目になっており、心配されていたんだなと気付く。
「・・・思ったんですけど、お兄さん雰囲気変わりました?」
涙を拭った清水さんがそう言って首を傾げる。
そうか?と俺も首を傾げると、晴樹が言った。
「静兄、前はこうだったんだよ。・・・本来の静兄に、戻った感じ」
晴樹は嬉しそうにふわりと笑う。それを見た清水さんは、そうなんだと嬉しそうに
笑った。
「・・・そうだ。なあ彩音、藍晶と曹灰大丈夫か?八仙に斬られてたけど」
俺がそう聞くと、彩音は頷く。
「あの子達、回復早いのよ。それこそ、妖と同じくらいにはね」
なら良かったと俺が笑うと、彩音はムスッとした顔になる。
「何となく雰囲気変わったからもしかしてと思ってたけど、そういう所は変わらない
のね」
「え?」
「あなた、何で自分の方が重症なのに他人の心配ばっかりするのよ」
彩音にそう言われ、そうだっけと首を傾げる。すると、ずっと静かに俺達を見て
いた落魅が口を開いた。
「そうでさあ。まあ、暴走中のあんたは他人のことはどうでも良くなっていたよう
ですがねい・・・」
「でも、昨日の夜はそのおかげでちょっと嬉しかったかも」
晴樹がそう言ってクスリと笑う。
「昨日の夜?」
彩音と清水さんが首を傾げて晴樹を見る。
落魅はニヤニヤと笑うと、俺を見ながら言った。
「・・・あんなの皆に伝えたら、静也は暫く口利いてくれなくなるでしょうねい」
落魅の言葉に昨夜のことを思い出す。・・・今まで暴走中の記憶は曖昧だったが、
今回は何だか妙にはっきりと覚えていた。
段々と顔が熱くなってくる。俺の顔を見て、気になるじゃないですかと清水さんが
呟くように言った。
―――朝食を食べながら、皆に心配掛けてごめんと謝る。優しく笑う皆を見て怒ら
ないのかと思っていると、晴樹に冷ましていないお茶漬けを突っ込まれた。
舌を火傷した俺を見て、皆が笑う。つられて俺も笑い、食卓は笑い声に包まれた。
・・・一人称も性格も、晴樹曰く俺の気付いていなかった小さな癖も、全部全部元に
戻った。やはり学校での俺と今の俺は少し違うらしく、和正達は時折困惑した表情を
浮かべる。それでも、友達だからと笑顔で受け入れてくれた。
「そうだ、雨谷」
部屋の中で皆がワイワイとしている中、俺は雨谷に話し掛ける。
何~?と振り向いた雨谷に、俺は言った。
「陽煉、回収したんだけどさ。あれ返そうと思って」
「え、あれって八仙の討伐証明でしょ~?オイラに渡しちゃっても良いの?」
言われてみればそうか。
確かに・・・と悩む俺を見て、晴樹が言った。
「刀丸々じゃなくても、何処か貰えば良いんじゃない?」
「そうなると・・・あ~、鍔持ってく?」
「え、良いのか?刀使えなくなるんじゃ・・・」
雨谷の提案に俺がそう言うと、雨谷はヘラヘラと笑って言った。
「大丈夫大丈夫~、どっちみち陽煉をこのまま残す気はないからさ」
俺と晴樹が首を傾げるも、雨谷はそれ以上何も言わなかった。
雨谷が立ち去った後、雪華が話し掛けてくる。雪華は俺と晴樹にしか聞こえない
ような小声で言った。
「陽煉のことなのですが、雨谷様は大変気にされておりまして。あれは存在しては
いけないものだと度々仰っておりました。ただ、陽煉の所有者は八仙に至るまで
頻繁に変わっており、回収の機会が中々訪れず・・・。今回、静也様に回収して
頂けて本当に助かりました」
「陽煉、どうするつもりなの?」
晴樹が聞くと、雪華は困ったように笑う。
「従者の私が言って良いものか分かりませんが・・・。おそらく、折って別の刀に
変えるのではないでしょうか。あの方は、昔からそういう所がありますので」
素材が曰く付きであろうと、すぐ刀にしてしまわれるのです。そう言った雪華は、
少し不満げな様子だった。
いた。何処に行ったんだろうと思っていると、彩音に詰め寄られる。
矢継ぎ早にされる質問にたじろぎながらも、一つずつ答えていく。
八仙のこと、陽煉のこと、落魅のこと・・・そして、暴走のこと。全て答え終わる
頃には彩音も清水さんも涙目になっており、心配されていたんだなと気付く。
「・・・思ったんですけど、お兄さん雰囲気変わりました?」
涙を拭った清水さんがそう言って首を傾げる。
そうか?と俺も首を傾げると、晴樹が言った。
「静兄、前はこうだったんだよ。・・・本来の静兄に、戻った感じ」
晴樹は嬉しそうにふわりと笑う。それを見た清水さんは、そうなんだと嬉しそうに
笑った。
「・・・そうだ。なあ彩音、藍晶と曹灰大丈夫か?八仙に斬られてたけど」
俺がそう聞くと、彩音は頷く。
「あの子達、回復早いのよ。それこそ、妖と同じくらいにはね」
なら良かったと俺が笑うと、彩音はムスッとした顔になる。
「何となく雰囲気変わったからもしかしてと思ってたけど、そういう所は変わらない
のね」
「え?」
「あなた、何で自分の方が重症なのに他人の心配ばっかりするのよ」
彩音にそう言われ、そうだっけと首を傾げる。すると、ずっと静かに俺達を見て
いた落魅が口を開いた。
「そうでさあ。まあ、暴走中のあんたは他人のことはどうでも良くなっていたよう
ですがねい・・・」
「でも、昨日の夜はそのおかげでちょっと嬉しかったかも」
晴樹がそう言ってクスリと笑う。
「昨日の夜?」
彩音と清水さんが首を傾げて晴樹を見る。
落魅はニヤニヤと笑うと、俺を見ながら言った。
「・・・あんなの皆に伝えたら、静也は暫く口利いてくれなくなるでしょうねい」
落魅の言葉に昨夜のことを思い出す。・・・今まで暴走中の記憶は曖昧だったが、
今回は何だか妙にはっきりと覚えていた。
段々と顔が熱くなってくる。俺の顔を見て、気になるじゃないですかと清水さんが
呟くように言った。
―――朝食を食べながら、皆に心配掛けてごめんと謝る。優しく笑う皆を見て怒ら
ないのかと思っていると、晴樹に冷ましていないお茶漬けを突っ込まれた。
舌を火傷した俺を見て、皆が笑う。つられて俺も笑い、食卓は笑い声に包まれた。
・・・一人称も性格も、晴樹曰く俺の気付いていなかった小さな癖も、全部全部元に
戻った。やはり学校での俺と今の俺は少し違うらしく、和正達は時折困惑した表情を
浮かべる。それでも、友達だからと笑顔で受け入れてくれた。
「そうだ、雨谷」
部屋の中で皆がワイワイとしている中、俺は雨谷に話し掛ける。
何~?と振り向いた雨谷に、俺は言った。
「陽煉、回収したんだけどさ。あれ返そうと思って」
「え、あれって八仙の討伐証明でしょ~?オイラに渡しちゃっても良いの?」
言われてみればそうか。
確かに・・・と悩む俺を見て、晴樹が言った。
「刀丸々じゃなくても、何処か貰えば良いんじゃない?」
「そうなると・・・あ~、鍔持ってく?」
「え、良いのか?刀使えなくなるんじゃ・・・」
雨谷の提案に俺がそう言うと、雨谷はヘラヘラと笑って言った。
「大丈夫大丈夫~、どっちみち陽煉をこのまま残す気はないからさ」
俺と晴樹が首を傾げるも、雨谷はそれ以上何も言わなかった。
雨谷が立ち去った後、雪華が話し掛けてくる。雪華は俺と晴樹にしか聞こえない
ような小声で言った。
「陽煉のことなのですが、雨谷様は大変気にされておりまして。あれは存在しては
いけないものだと度々仰っておりました。ただ、陽煉の所有者は八仙に至るまで
頻繁に変わっており、回収の機会が中々訪れず・・・。今回、静也様に回収して
頂けて本当に助かりました」
「陽煉、どうするつもりなの?」
晴樹が聞くと、雪華は困ったように笑う。
「従者の私が言って良いものか分かりませんが・・・。おそらく、折って別の刀に
変えるのではないでしょうか。あの方は、昔からそういう所がありますので」
素材が曰く付きであろうと、すぐ刀にしてしまわれるのです。そう言った雪華は、
少し不満げな様子だった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
聖魔の乙女は運命を転がす~落ちこぼれ回復士の私が救世主になって魔王に愛される理由~
つかさ
ファンタジー
レトロゲーム好きの高堂永久(たかどう とわ)が召喚された異世界は人間と魔族が憎みあい、争う世界だった。しかも召喚されたのは彼女以外に3人もいて、勇者として期待されたものの、彼女だけは最低ランクの回復魔法しか使えなかった。他の召喚者たちからは「落ちこぼれ」扱いされ、落ち込む毎日だったけど、あることをきっかけに彼女は、世界で唯一人の魔族の回復士だったことがわかる。
それがバレて人間側からは異端者扱いされ追われる羽目になってしまうが、魔王やイケメン魔族たちに救われる。デレの魔王に迫られ、天然ボケの騎士らに囲まれて、ついにはドラゴンまで使役することになって、彼女は魔族の救世主に祭り上げられていく。やがて彼女は秘められた『聖魔』の力を発揮し、運命さえも動かしていく…。
一部残酷な表現があるのでR15とさせていただきます。
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
異世界でスローライフを満喫
美鈴
ファンタジー
ホットランキング一位本当にありがとうございます!
【※毎日18時更新中】
タイトル通り異世界に行った主人公が異世界でスローライフを満喫…。出来たらいいなというお話です!
※カクヨム様にも投稿しております
※イラストはAIアートイラストを使用
万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?
Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。
貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。
貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。
ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。
「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」
基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。
さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・
タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。
麗紗ちゃんは最狂メンヘラ
吉野かぼす
ファンタジー
現代から少し先の未来。
『特色者』という異能力者が忽然と現れていた。
その中の一人、平均的な能力の特色者である女子高生弥栄琥珀は、ある日同じ高校の女の後輩、桜月麗紗をその能力で助ける。
すると琥珀はなぜか麗紗に性別の壁を超えて惚れられた。そこまでは良かった。
……が、大問題があった!
なんと麗紗はとんでもないメンヘラであった上、反則的に強力な能力を隠し持っていたのである!
一方的に愛され、出会って一週間も経たずに監禁されてしまう琥珀。
絶望的な状況の中で、琥珀はどう動くのか……!
この小説は小説になろうにも投稿しています。
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました
mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。
なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。
不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇
感想、ご指摘もありがとうございます。
なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。
読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。
お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる