異能力と妖と

彩茸

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決戦編

目醒

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―――狗神の声で、目が覚めた。左手から、晴樹の手の温もりが伝わってくる。
右手も何だか暖かいなと思い右を見ると、包帯を巻いていない落魅が俺の手を
握ったまま眠っていた。
どうやって起き上がろうか。そう思いながら、足を動かそうとする。

「いっ・・・!!」

 痛い。体が、痛い。
 知っている痛みに何だか安心する。ああ、元に戻れたんだなと思う。

「起きたか、山霧の」

 狗神がそう言って俺の顔を覗き込む。その隣から雨谷も俺の顔を覗き込み、目を
 じっと見て言った。

って言って良いのか分からないけど・・・まあ、戻ったね」

「えっと・・・?」

 よく分からないと首を傾げると、雨谷はヘラヘラと笑って言った。

「今のシズちん、タケちんが死ぬ前に戻ってるんだよ~」

「事件の、前・・・?」

 俺の言葉に、雨谷は頷く。

「そう、君がおかしくなる前ってこと!」

 笑顔でそう言った雨谷に、言い方ってものがあるじゃろう・・・と狗神は溜息を
 吐く。

「・・・それにしても、お主は本当に良い仲間と出会ったの」

 狗神がそう言って俺の頭を撫でる。俺がキョトンとしていると、狗神は優しく
 笑った。

「皆、お主のことをずっと心配しておったぞ?何度も様子を見に来ては、心配そうな
 顔をしておった。・・・お主を眠らせてから落魅と話したんじゃが、珍しく落魅が
 素直での。ワシが言う前に、自ら傍にいると言い出したんじゃ」

「昨日の夜、狗神の領域に祓い屋来たらしくてさあ。どうしても帰らなきゃいけない
 けど、シズちん達置いて行くのも心配だって言ってたんだよね~」

「・・・言ってはおらんわ。お主が勝手にワシの思考を読んだんじゃろ」

 雨谷の言葉に狗神はムスッとした顔で言う。雨谷はヘラヘラと笑い、そうかも~と
 言った。
 その時、部屋の扉が開かれる音がする。二人分の足音が聞こえたと思ったら、
 狗神と雨谷と場所を交代したのか、和正と誠が俺の顔を覗き込んだ。

「静也、大丈夫か?」

「静くん、痛い所はある?」

 和正と誠の言葉に頷き、俺は苦笑いを浮かべて言った。

「・・・今は、全身が痛いかな」

 和正と誠は安心したような顔をした後、すぐに心配そうな顔になる。その様子を
 見てか、狗神が言った。

「筋肉痛じゃろ、数日もあれば治る」

 雨谷がケラケラと笑い、誠は安心したような顔で笑う。和正は微笑み、俺を見て
 言った。

「静也、雪華さんが何か食べたい物はあるかって言ってたぞ」

「俺が、食べたい物・・・?」

 そう言った俺を見て、和正は少し驚いた顔をする。

「・・・特にないなら、僕お茶漬けが食べたい」

 隣から晴樹の声が聞こえそちらを見ると、起き上がった晴樹が俺の手を握ったまま
 眠そうに目を擦っていた。

「晴樹・・・おはよう」

「おはよう、静兄」

 そう言って晴樹は笑う。ボソッと、あんな顔で笑う晴くん初めて見た・・・と誠が
 呟いた。
 晴樹が俺の手を離し、落魅を揺する。落魅は薄っすらと目を開けると、再び目を
 閉じた。

「ちょっと落魅、起きてよ」

 晴樹がそう言いながら再度落魅を揺する。
 渋々といった様子で起き上がった落魅は、まだ寝ぼけているのか俺の手を握った
 ままボーっとしていた。

「落魅、おはよう」

 俺がそう言うと、落魅は俺を見て呟いた。

「静也・・・?」

 痛い腕を動かして落魅の手を引っ張ると、落魅は目が覚めたのかハッとした顔で
 手を離す。
 そして周りを見ると、顔を真っ赤にして俺から離れた。

「・・・落魅も、あんな顔するんだな」

 和正がボソッと呟く。ケラケラと笑う雨谷につられ、俺と晴樹も笑う。和正と誠も
 笑い出し、狗神が落魅の頭をポンと撫でた。

「何なんでさあ、揃いも揃って・・・」

 包帯を巻きながらムスッとした顔で落魅が呟く。
 晴樹に起き上がらせてもらいながら俺が謝ると、丁度扉が開いた。

「どういう状況なの・・・?」

 部屋に入って来た彩音と清水さんが、困惑した表情を浮かべる。
 俺が苦笑いを浮かべると、彩音と清水さんは安心したような顔でクスリと笑った。
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