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決戦編
暴走
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―――笑みが零れる。八仙が目を細めてこちらを見る。
晴樹の怯えた顔は見たくない、ずっとそう思ってた。でも・・・もう、どうでも
良いや。
「あははっ」
雨谷の言葉を思い出す。・・・楽しんでおいでと言われたからには、全力で
楽しんでやろうじゃないか。
「ああ、やっと見せてくれるんだね」
八仙が嬉しそうな笑みを浮かべる。
「・・・俺が相手だ、八仙」
そう言って俺は、八仙に斬りかかる。八仙はそれをギリギリで避け、陽煉で俺の
首を刎ねようとする。陽煉を夜月で受け止めた俺は、八仙に蹴りを繰り出す。
それを八仙は避け、斬りかかる。
刀同士がぶつかり合う音がする。キンッキンッと鳴り響くその音は、楽しいという
感情をさらに大きくさせる。
皆を守るとか、そんなことはどうでも良かった。ただ目の前の強敵を相手に、俺は
戦いを楽しんでいた。
「良いね、凄く良い殺気だ!」
八仙が狂気的な笑みを浮かべる。その目に映る俺の顔も、八仙と同じような笑みを
浮かべていた。
「あっはははは!!」
笑いながら斬る、斬る、斬る。狂気と狂気のぶつかり合いは、互いが血塗れに
なっても続く。
斬り合う俺達の刀は、互いの血でどんどん赤く染まっていった。
それはまるで皆既月食の赤い月のようで。そして、燃え盛る煉獄の炎のようで。
「こんなに楽しいのは初めてだ!」
「俺もだよ!」
八仙と俺は、ひたすらに斬り合いを続ける。
互いの急所を狙い、急所以外は守ることもせず・・・。目の前が霞もうが、骨が
折れようが関係なかった。痛みを感じず思い通りに動く体と共に、夜月を振るう。
赤が服を染め、俺と八仙は笑い声を上げる。視界の端に映った皆は、酷く怯えた
顔をして俺達を見ていた。
「はははっ!」
俺は笑う。夜月によって八仙の腹が血を吹き出す。
「最高だよ!」
八仙が、攻撃の手を止めることなく言う。
陽煉を避け切れず、腹から更に血が飛び散る。
息を切らしながらも、純粋に楽しみ、刀と共に血を浴び、舞う。
「君・・・名前は?」
口から血を吐きながら、八仙は俺に問う。俺は鉄の味に染まった口を動かして
言った。
「静也だ」
「そうか、静也か。覚えておこう」
そう言って八仙は目にも止まらぬ速さで俺の首に刃を当てる。それと同時に、俺も
八仙の首に刃を当てた。
そのまま互いの繰り出した蹴りを避け、拳を避け、再び刀を振るう。キンッという
音が、静かな空間に響いた。
八仙は楽しそうに笑いつつ、俺から距離を取る。
「あまりズルはしたくないんだけど」
そう言って小さく何かを呟いた八仙の後ろには、数体の武士の格好をした骸骨が
立っていた。
骸骨が俺に襲い掛かる。だけど、今の俺の敵じゃなかった。
骸骨を斬り伏せている間に、ほんの少しだけ回復したのだろう。息を整えた八仙は
俺を見て笑った。
「ありがとう、楽しかったよ。初めてあそこまでの恐怖を味わえた」
八仙が一瞬で距離を詰めてくる。
「そうだな、あまりズルはしたくなかった」
俺はそう言うと、陽煉を夜月で弾く。そして八仙の顔に手を当て、微笑んだ。
「楽しかったよ、じゃあな」
俺の言葉と共に霧が八仙の体を包む。・・・小さく、幻霧と呟いた。
晴樹の怯えた顔は見たくない、ずっとそう思ってた。でも・・・もう、どうでも
良いや。
「あははっ」
雨谷の言葉を思い出す。・・・楽しんでおいでと言われたからには、全力で
楽しんでやろうじゃないか。
「ああ、やっと見せてくれるんだね」
八仙が嬉しそうな笑みを浮かべる。
「・・・俺が相手だ、八仙」
そう言って俺は、八仙に斬りかかる。八仙はそれをギリギリで避け、陽煉で俺の
首を刎ねようとする。陽煉を夜月で受け止めた俺は、八仙に蹴りを繰り出す。
それを八仙は避け、斬りかかる。
刀同士がぶつかり合う音がする。キンッキンッと鳴り響くその音は、楽しいという
感情をさらに大きくさせる。
皆を守るとか、そんなことはどうでも良かった。ただ目の前の強敵を相手に、俺は
戦いを楽しんでいた。
「良いね、凄く良い殺気だ!」
八仙が狂気的な笑みを浮かべる。その目に映る俺の顔も、八仙と同じような笑みを
浮かべていた。
「あっはははは!!」
笑いながら斬る、斬る、斬る。狂気と狂気のぶつかり合いは、互いが血塗れに
なっても続く。
斬り合う俺達の刀は、互いの血でどんどん赤く染まっていった。
それはまるで皆既月食の赤い月のようで。そして、燃え盛る煉獄の炎のようで。
「こんなに楽しいのは初めてだ!」
「俺もだよ!」
八仙と俺は、ひたすらに斬り合いを続ける。
互いの急所を狙い、急所以外は守ることもせず・・・。目の前が霞もうが、骨が
折れようが関係なかった。痛みを感じず思い通りに動く体と共に、夜月を振るう。
赤が服を染め、俺と八仙は笑い声を上げる。視界の端に映った皆は、酷く怯えた
顔をして俺達を見ていた。
「はははっ!」
俺は笑う。夜月によって八仙の腹が血を吹き出す。
「最高だよ!」
八仙が、攻撃の手を止めることなく言う。
陽煉を避け切れず、腹から更に血が飛び散る。
息を切らしながらも、純粋に楽しみ、刀と共に血を浴び、舞う。
「君・・・名前は?」
口から血を吐きながら、八仙は俺に問う。俺は鉄の味に染まった口を動かして
言った。
「静也だ」
「そうか、静也か。覚えておこう」
そう言って八仙は目にも止まらぬ速さで俺の首に刃を当てる。それと同時に、俺も
八仙の首に刃を当てた。
そのまま互いの繰り出した蹴りを避け、拳を避け、再び刀を振るう。キンッという
音が、静かな空間に響いた。
八仙は楽しそうに笑いつつ、俺から距離を取る。
「あまりズルはしたくないんだけど」
そう言って小さく何かを呟いた八仙の後ろには、数体の武士の格好をした骸骨が
立っていた。
骸骨が俺に襲い掛かる。だけど、今の俺の敵じゃなかった。
骸骨を斬り伏せている間に、ほんの少しだけ回復したのだろう。息を整えた八仙は
俺を見て笑った。
「ありがとう、楽しかったよ。初めてあそこまでの恐怖を味わえた」
八仙が一瞬で距離を詰めてくる。
「そうだな、あまりズルはしたくなかった」
俺はそう言うと、陽煉を夜月で弾く。そして八仙の顔に手を当て、微笑んだ。
「楽しかったよ、じゃあな」
俺の言葉と共に霧が八仙の体を包む。・・・小さく、幻霧と呟いた。
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