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決戦編
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―――八仙と遭遇しないことを祈りながらも、僕と晴樹は麗奈さんと共に実習を
続ける。何の対策も思い付かないまま時間だけが過ぎていく。
気付けば冬休みに入り、僕と晴樹は帰省ついでに霧ヶ山のお堂を訪れていた。
「・・・食うカ?」
八仙の対策について天春と共に僕達が悩んでいると、のっぺらぼうがそう言って
焼き芋を差し出してくる。どうやらのっぺらぼうは、掃き掃除ついでに集まった
木の枝や落ち葉で焼き芋を作るのにハマっているらしい。
霧ヶ山はこの時期でも焼き芋が作れるくらいに葉が落ちているのかなんて思い
ながら、焼き芋を三人で分けて食べる。
「そういえば、天狗さん帰って来ないね」
晴樹が焼き芋を頬張りながら言う。
天狗さんは僕達がお堂に来た時には既に出掛けており、一緒に住んでいる面々は
誰も行き先を知らないらしい。
「何処行ったんだろうな」
僕がそう言って焼き芋を飲み込むと、お堂の扉が開く音がした。
見るとそこには狗神が立っており、お堂の中を見回した後僕達を見て言った。
「天狗は?」
「出掛けてます。まだ帰って来てなくて・・・」
天春がそう言うと、狗神はそうなのかと言いながら中に入ってくる。
「天狗の倅、土産じゃ」
狗神がそう言って天春に手に持っていた袋を渡す。天春は中を見て嬉しそうに
お礼を言うと、そのまま台所へ向かった。
僕達の隣に座った狗神に、僕は聞いた。
「なあ狗神、八仙の対策って何か思い付かないか?」
「何かと言われてものう・・・。ワシが八仙と会った時は、雷羅と共に物陰から
こっそり覗いておったからの。あれは近付かぬが吉じゃよ」
だが、そうもいかんのじゃろう?と狗神は僕と晴樹を見る。僕達が頷くと、困った
ような顔で溜息を吐いた。
―――天春が、切り分けた羊羹とお茶を持って戻って来る。どうやら狗神のお土産は
羊羹だったらしい。
「のっぺらぼうと落魅の分は取ってあるからー」
天春がお堂の扉を開け外に向けて言うと、のっぺらぼうの返事だけが聞こえた。
「そういえば落魅は?」
僕が天春に聞くと、天春はさあ?と首を傾げる。
天春が扉を閉めたその時、落魅とのっぺらぼうの悲鳴が聞こえた。
「え、何?!」
天春が驚いた声を上げて扉を開ける。
僕達も扉に近付き外を見ると、のっぺらぼうの上に落魅が乗っかっていた。
・・・いや、正確には上から落ちてきた落魅がのっぺらぼうを下敷きにしたの
だろう。苦しそうな声を上げるのっぺらぼうに、落魅が謝っていた。
「謝るよりも先に降りロ!」
のっぺらぼうがそう言うと、落魅は立ち上がりのっぺらぼうを立ち上がらせる。
「何しとるんじゃ・・・」
狗神が呆れた声で言うと、落魅は言った。
「屋根の上で寝てたら、蹴り落とされたんでさあ」
屋根の上を見る落魅につられて僕達もそちらを見る。そこには、ヘラヘラと笑い
ながら僕達に手を振る雨谷が居た。
「落魅、驚いた~?」
「・・・驚かせるためだけに蹴り落とさないでくだせえ」
ニヤニヤと笑う雨谷に落魅はそう言って溜息を吐く。
「何の用じゃ?」
狗神が聞くと、雨谷はヘラヘラと笑いながら地面に降りて言った。
「妖刀の納品ついでに散歩してたら知ってる妖気があったからさあ、ついでに寄って
みたんだよね~」
まさかシズちんとハルちんも居るとはね~と笑う雨谷に、天春が首を傾げる。
「えっと・・・どちら様?」
「ああ、初めましてだったね~。オイラは雨谷、君は?」
「あ、天春です」
よろしく~と言ってヘラヘラと笑う雨谷に、天春もニコニコと笑う。その隣では、
落魅がのっぺらぼうに雨谷のことを説明していた。
「何じゃ、天狗から聞いておらんかったのか」
狗神がそう言うと、天春は言った。
「名前は聞いてましたけど、特徴までは・・・。落魅が珍しくお父さんに愚痴って
いたので、気になってはいたんです」
ね?と天春が落魅を見ると、落魅は顔を逸らす。
「え、オイラそんなに厳しくしてないと思うんだけど」
雨谷がそう言うと、落魅がはあ?!と声を上げる。
「あれを厳しくしてないって・・・」
僕がそう言うと、晴樹は頷いて言った。
「僕、戦ってるのを直接見た訳じゃないけど・・・。戻って来たときの落魅、毎回
毎回辛そうな顔してたよ?」
「雨谷、お主何をしたんじゃ・・・」
「何って言われてもね~。戦って、休憩して、また戦って・・・ってしてただけ
だけど」
狗神の言葉に、雨谷はそう言って僕達を見た。
同意を求めるようなその目に、僕と晴樹は落魅を見る。
「トラウマになりかけやしたけどね・・・」
落魅は嫌そうな顔をして、そうボソッと呟くのだった。
―――皆でお堂の中に入り、雨谷と雑談をする。
少しして、そろそろ帰るよと雨谷は立ち上がって扉に手を掛けた。
「そうだ、シズちん」
雨谷は振り向き、僕を見る。首を傾げた僕に、雨谷はニッコリと笑って言った。
「八仙と戦うんでしょ?妖刀使い同士、楽しんできてね~」
「え、それって・・・」
僕の言葉に答えることなく、雨谷はお堂を出ていく。
雨谷の気配が消えた後、狗神がぽつりと言った。
「・・・ワシ、雨谷には山霧のが八仙と会ったという話しかしておらんのじゃが」
何故戦うことを知っておるんじゃ・・・。そう呟いた狗神に、僕達は首を傾げる
ことしかできなかった。
続ける。何の対策も思い付かないまま時間だけが過ぎていく。
気付けば冬休みに入り、僕と晴樹は帰省ついでに霧ヶ山のお堂を訪れていた。
「・・・食うカ?」
八仙の対策について天春と共に僕達が悩んでいると、のっぺらぼうがそう言って
焼き芋を差し出してくる。どうやらのっぺらぼうは、掃き掃除ついでに集まった
木の枝や落ち葉で焼き芋を作るのにハマっているらしい。
霧ヶ山はこの時期でも焼き芋が作れるくらいに葉が落ちているのかなんて思い
ながら、焼き芋を三人で分けて食べる。
「そういえば、天狗さん帰って来ないね」
晴樹が焼き芋を頬張りながら言う。
天狗さんは僕達がお堂に来た時には既に出掛けており、一緒に住んでいる面々は
誰も行き先を知らないらしい。
「何処行ったんだろうな」
僕がそう言って焼き芋を飲み込むと、お堂の扉が開く音がした。
見るとそこには狗神が立っており、お堂の中を見回した後僕達を見て言った。
「天狗は?」
「出掛けてます。まだ帰って来てなくて・・・」
天春がそう言うと、狗神はそうなのかと言いながら中に入ってくる。
「天狗の倅、土産じゃ」
狗神がそう言って天春に手に持っていた袋を渡す。天春は中を見て嬉しそうに
お礼を言うと、そのまま台所へ向かった。
僕達の隣に座った狗神に、僕は聞いた。
「なあ狗神、八仙の対策って何か思い付かないか?」
「何かと言われてものう・・・。ワシが八仙と会った時は、雷羅と共に物陰から
こっそり覗いておったからの。あれは近付かぬが吉じゃよ」
だが、そうもいかんのじゃろう?と狗神は僕と晴樹を見る。僕達が頷くと、困った
ような顔で溜息を吐いた。
―――天春が、切り分けた羊羹とお茶を持って戻って来る。どうやら狗神のお土産は
羊羹だったらしい。
「のっぺらぼうと落魅の分は取ってあるからー」
天春がお堂の扉を開け外に向けて言うと、のっぺらぼうの返事だけが聞こえた。
「そういえば落魅は?」
僕が天春に聞くと、天春はさあ?と首を傾げる。
天春が扉を閉めたその時、落魅とのっぺらぼうの悲鳴が聞こえた。
「え、何?!」
天春が驚いた声を上げて扉を開ける。
僕達も扉に近付き外を見ると、のっぺらぼうの上に落魅が乗っかっていた。
・・・いや、正確には上から落ちてきた落魅がのっぺらぼうを下敷きにしたの
だろう。苦しそうな声を上げるのっぺらぼうに、落魅が謝っていた。
「謝るよりも先に降りロ!」
のっぺらぼうがそう言うと、落魅は立ち上がりのっぺらぼうを立ち上がらせる。
「何しとるんじゃ・・・」
狗神が呆れた声で言うと、落魅は言った。
「屋根の上で寝てたら、蹴り落とされたんでさあ」
屋根の上を見る落魅につられて僕達もそちらを見る。そこには、ヘラヘラと笑い
ながら僕達に手を振る雨谷が居た。
「落魅、驚いた~?」
「・・・驚かせるためだけに蹴り落とさないでくだせえ」
ニヤニヤと笑う雨谷に落魅はそう言って溜息を吐く。
「何の用じゃ?」
狗神が聞くと、雨谷はヘラヘラと笑いながら地面に降りて言った。
「妖刀の納品ついでに散歩してたら知ってる妖気があったからさあ、ついでに寄って
みたんだよね~」
まさかシズちんとハルちんも居るとはね~と笑う雨谷に、天春が首を傾げる。
「えっと・・・どちら様?」
「ああ、初めましてだったね~。オイラは雨谷、君は?」
「あ、天春です」
よろしく~と言ってヘラヘラと笑う雨谷に、天春もニコニコと笑う。その隣では、
落魅がのっぺらぼうに雨谷のことを説明していた。
「何じゃ、天狗から聞いておらんかったのか」
狗神がそう言うと、天春は言った。
「名前は聞いてましたけど、特徴までは・・・。落魅が珍しくお父さんに愚痴って
いたので、気になってはいたんです」
ね?と天春が落魅を見ると、落魅は顔を逸らす。
「え、オイラそんなに厳しくしてないと思うんだけど」
雨谷がそう言うと、落魅がはあ?!と声を上げる。
「あれを厳しくしてないって・・・」
僕がそう言うと、晴樹は頷いて言った。
「僕、戦ってるのを直接見た訳じゃないけど・・・。戻って来たときの落魅、毎回
毎回辛そうな顔してたよ?」
「雨谷、お主何をしたんじゃ・・・」
「何って言われてもね~。戦って、休憩して、また戦って・・・ってしてただけ
だけど」
狗神の言葉に、雨谷はそう言って僕達を見た。
同意を求めるようなその目に、僕と晴樹は落魅を見る。
「トラウマになりかけやしたけどね・・・」
落魅は嫌そうな顔をして、そうボソッと呟くのだった。
―――皆でお堂の中に入り、雨谷と雑談をする。
少しして、そろそろ帰るよと雨谷は立ち上がって扉に手を掛けた。
「そうだ、シズちん」
雨谷は振り向き、僕を見る。首を傾げた僕に、雨谷はニッコリと笑って言った。
「八仙と戦うんでしょ?妖刀使い同士、楽しんできてね~」
「え、それって・・・」
僕の言葉に答えることなく、雨谷はお堂を出ていく。
雨谷の気配が消えた後、狗神がぽつりと言った。
「・・・ワシ、雨谷には山霧のが八仙と会ったという話しかしておらんのじゃが」
何故戦うことを知っておるんじゃ・・・。そう呟いた狗神に、僕達は首を傾げる
ことしかできなかった。
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