181 / 203
工房編
成長
しおりを挟む
―――次の日も、その次の日も、僕と雨谷は落魅と戦っていた。
最初はかなり怯えていた落魅だが、段々と能力をオフにすることへの恐怖心が薄れて
きたらしい。
その様子を見た雨谷にじゃあ先へ進もうかと言われ、落魅は戦闘中にも能力をオフに
する練習をしていた。
「良いねえ、その調子だよ~」
休憩中の落魅に、雨谷がそう言ってヘラヘラと笑う。
「あんたらは手加減してくれているからともかく・・・普段の戦闘じゃあ、途中で
能力切るなんて危なすぎやせんか」
落魅が地面に座ったままそう言うと、雨谷は笑って言った。
「元々能力分でかなり有利になってるんだから、見えなくしたところで他の奴らと
同じになるだけだよ~」
「というかそもそも、僕に関しては手加減というより殺さないように気を付けてる
だけだぞ?手は抜いてないと思うけど」
「・・・お兄さんの場合は、殺意がないだけで十分な手加減なんでさあ」
僕の言葉に落魅はそう言うと、溜息を吐く。
「シズちんが本気で殺そうとした時の殺気、すっごい怖いんだよね~。シズちんが
暴走してたとき、オイラめっちゃ逃げたかったもん」
動けなかったけど~と雨谷が笑うと、落魅は頷いて呟くように言った。
「あの状況でお兄さんの腕掴んだだけでも、褒めてほしいくらいですぜ・・・」
「え、何か・・・ごめん」
僕が謝ると、落魅はクスリと笑う。
「・・・まあ殺気も怖いけど。暴走してるときのシズちんはタケちんよりも強いし、
力尽くで止めるなんて無理だから更に怖いんだよね」
ボソッと雨谷が呟く。
驚いて雨谷を見ると、雨谷は僕の顔を見てヘラヘラと笑った。
「さ、続きやろっか!」
雨谷がそう言うと、落魅は立ち上がる。
「・・・いつか能力禁止で戦ってみやしょう、お兄さん」
落魅は僕を見ると、そう言って笑みを浮かべた。
―――それから数日後の、夏休み最終日。僕、晴樹、落魅は雨谷と雪華に別れを
告げて山を下りる。
天狗さんが待っているという場所に向かいながら、僕は隣を歩く落魅に聞いた。
「・・・落魅、能力のオンオフできるようになったのに、何で包帯巻いてるんだ?」
「こっちのほうが安心するんでさあ。目が疲れないなら能力使ってても良いって
雨谷に言われやしたし」
落魅がそう言って小さく欠伸をする。
「寝不足?」
晴樹が聞くと、落魅は言った。
「・・・昨晩、あんたらが寝ている間に雨谷が酒片手にあっしを呼び出しやしてね。
晩酌に付き合わされてたんでさあ」
「落魅お酒飲めるの?!」
驚いた様子の晴樹に、落魅は頷く。
「といっても、あんまり乗り気じゃなかったんですがねい」
「何か理由でもあるのか?」
落魅の言葉に僕がそう聞くと、落魅は凄く嫌そうな顔をして言った。
「・・・酔った天狗に、潰れるまで無理矢理飲まされたんでさあ。のっぺらぼうと
天春はこっそり逃げ出しやがるしで、それ以来どうも苦手意識がありやして
ねい・・・」
深い溜息を吐いた落魅に僕達は何も言えず、ただ落魅の肩をポンと叩いた。
最初はかなり怯えていた落魅だが、段々と能力をオフにすることへの恐怖心が薄れて
きたらしい。
その様子を見た雨谷にじゃあ先へ進もうかと言われ、落魅は戦闘中にも能力をオフに
する練習をしていた。
「良いねえ、その調子だよ~」
休憩中の落魅に、雨谷がそう言ってヘラヘラと笑う。
「あんたらは手加減してくれているからともかく・・・普段の戦闘じゃあ、途中で
能力切るなんて危なすぎやせんか」
落魅が地面に座ったままそう言うと、雨谷は笑って言った。
「元々能力分でかなり有利になってるんだから、見えなくしたところで他の奴らと
同じになるだけだよ~」
「というかそもそも、僕に関しては手加減というより殺さないように気を付けてる
だけだぞ?手は抜いてないと思うけど」
「・・・お兄さんの場合は、殺意がないだけで十分な手加減なんでさあ」
僕の言葉に落魅はそう言うと、溜息を吐く。
「シズちんが本気で殺そうとした時の殺気、すっごい怖いんだよね~。シズちんが
暴走してたとき、オイラめっちゃ逃げたかったもん」
動けなかったけど~と雨谷が笑うと、落魅は頷いて呟くように言った。
「あの状況でお兄さんの腕掴んだだけでも、褒めてほしいくらいですぜ・・・」
「え、何か・・・ごめん」
僕が謝ると、落魅はクスリと笑う。
「・・・まあ殺気も怖いけど。暴走してるときのシズちんはタケちんよりも強いし、
力尽くで止めるなんて無理だから更に怖いんだよね」
ボソッと雨谷が呟く。
驚いて雨谷を見ると、雨谷は僕の顔を見てヘラヘラと笑った。
「さ、続きやろっか!」
雨谷がそう言うと、落魅は立ち上がる。
「・・・いつか能力禁止で戦ってみやしょう、お兄さん」
落魅は僕を見ると、そう言って笑みを浮かべた。
―――それから数日後の、夏休み最終日。僕、晴樹、落魅は雨谷と雪華に別れを
告げて山を下りる。
天狗さんが待っているという場所に向かいながら、僕は隣を歩く落魅に聞いた。
「・・・落魅、能力のオンオフできるようになったのに、何で包帯巻いてるんだ?」
「こっちのほうが安心するんでさあ。目が疲れないなら能力使ってても良いって
雨谷に言われやしたし」
落魅がそう言って小さく欠伸をする。
「寝不足?」
晴樹が聞くと、落魅は言った。
「・・・昨晩、あんたらが寝ている間に雨谷が酒片手にあっしを呼び出しやしてね。
晩酌に付き合わされてたんでさあ」
「落魅お酒飲めるの?!」
驚いた様子の晴樹に、落魅は頷く。
「といっても、あんまり乗り気じゃなかったんですがねい」
「何か理由でもあるのか?」
落魅の言葉に僕がそう聞くと、落魅は凄く嫌そうな顔をして言った。
「・・・酔った天狗に、潰れるまで無理矢理飲まされたんでさあ。のっぺらぼうと
天春はこっそり逃げ出しやがるしで、それ以来どうも苦手意識がありやして
ねい・・・」
深い溜息を吐いた落魅に僕達は何も言えず、ただ落魅の肩をポンと叩いた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ここは貴方の国ではありませんよ
水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。
厄介ごとが多いですね。
裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。
※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる