異能力と妖と

彩茸

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工房編

入切

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―――朝食の時間になっても、落魅は起きてこなかった。心配そうな晴樹に、
大丈夫だと声を掛ける。
どうやら落魅は雨谷が数日間預かるらしく、君達は帰っても良いんだよと言われ
たが、僕と晴樹は首を横に振った。

「夏休み終わるまで、ここに居ても良い?」

 晴樹がそう言って雨谷を見ると、構わないよ~と雨谷は笑う。
 食器を片付け終わった雪華が晴樹を呼ぶと、晴樹は嬉しそうに立ち上がった。

「今日も料理教えてもらうのか?」

 僕がそう聞くと、晴樹は頷く。

「上手く作れるようになったら、静兄にも教えてあげるね」

 そう言って笑った晴樹が部屋を出て行くと、雨谷が言った。

「シズちんは何かしないの?」

「何か、なあ・・・」

 思い付かないな・・・と呟いた僕に、雨谷はやりたいことないの~?と言って
 ヘラヘラと笑う。

「じゃあさ、オイラと一緒に落魅と戦わない?」

「え?」

 雨谷の言葉に僕が首を傾げると、雨谷はやってみようよと笑う。
 まあ良いけどと頷くと、じゃあ落魅が起きたら始めよう!と雨谷は楽しそうに
 笑った。



―――落魅が目を覚ましたのは昼前だった。

「おはよ~落魅。調子どう?」

 そう言ってヘラヘラと笑った雨谷を、落魅は睨みつける。

「・・・最悪でさあ」

「そっか~、元気そうで良かった!」

 ニッコリと笑う雨谷に落魅は深い溜息を吐くと、僕を見て言った。

「お兄さん、迷惑かけやした。・・・ありがとうございやす」

「え、いや・・・どういたしまして?」

 まさか落魅にお礼を言われるとは思わず、疑問形になる。
 雨谷はニコニコと笑うと、落魅に言った。

「昨日の君を見た感じ、能力のオンオフができればかなーり強くなれると思うん
 だけど。オイラとシズちんと戦いながら、コツを掴んでみない?」

「昨日も言ってやしたけど、コツって何なんですかい」

「それは自分で見つけなきゃ~。まあでも、オンの方は簡単だと思うよ?
 すれば良いんだし」

 落魅の問いにそう答えた雨谷に、僕は聞いた。

「オフの方は?」

 すると雨谷は片目を手で隠し、僕の目を見て言った。

「簡単に言えば、ようにする」

 ずっと見てる落魅にはちょっと難しいかもしれないけどね~と笑う雨谷に、落魅が
 ムスッとした顔で言った。

「・・・やってやりまさあ」
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