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実習編
信者
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―――陽煉が、ゆっくりと振り下ろされる。・・・この感覚を、知っている。
陽煉を避け、夜月で斬りかかる。痛みが、ない。
「おや?」
夜月を間一髪で避けた八仙は、目を細めてこちらを見ていた。
ああ・・・何か・・・楽しく、なってきた。
夜月を振り下ろそうと動いたところで、ふと思い出す。・・・そうだ、雨谷と約束
したんだった。
「くそっ・・・!!」
僕は後ろに下がり、晴樹に向かって走る。
「静兄・・・」
不安そうな顔で僕を見た晴樹に、僕は言った。
「・・・ごめん、僕は大丈夫」
晴樹は安心したような顔をすると、八仙に向かって発砲する。首を傾げながらも
銃弾を避け僕達の元へ向かってくる八仙の後ろから、麗奈さんが鎌を振り下ろす。
八仙はそれを避けると、一瞬で僕の前に来て言った。
「今の・・・何かな?」
距離を取ろうとした僕の喉元に八仙は陽煉を突き付ける。
動けない僕に、八仙はもう一度聞いた。
「君、何をしたの?一瞬殺気が変わったんだけど」
「・・・分からない」
僕が呟くと、八仙は陽煉を鞘に納める。そして目にも止まらぬ速さで八仙の後ろに
居た麗奈さんを地面に沈めた。
動かなくなった麗奈さんを見て、僕と晴樹は八仙を睨みつける。すると、八仙は
笑みを浮かべて言った。
「君、気に入ったよ。殺すのは今度にしてあげよう。・・・ついでに、隣の君も
見逃してあげる。君からも美味しそうな匂いはするけど、今は食べる気分じゃ
なくなったしね」
八仙は僕達に背中を向けて去っていく。だけど、その背中には隙が無かった。
森の中に八仙が消えていった後、僕達は麗奈さんに駆け寄る。斬られたところが
かなり痛かったのだが、それよりも麗奈さんが心配だった。
―――頭から血を流しながらも息をしていた麗奈さんにほっとしつつ、僕は急いで
学校に連絡する。
数分後、知っている気配がした。そちらを見ると、誠と知らない男性が立っていて。
誠は麗奈さんと僕に治癒術を掛けると、僕に言った。
「ボク達のところに学校から緊急の電話が来てさ。・・・急いで来たら静くん達が
居てビックリしたよ」
「あそこの死体、全員祓い屋ですね。一体誰が・・・」
そう言った男性に誰だろうと首を傾げると、誠が言った。
「この人はボクの実習先の田中さん。ほら、お祖父ちゃんの信者の人」
「初めまして、田中と申します」
そう言って頭を下げる男性・・・田中さんに、僕と晴樹も頭を下げる。
麗奈さんが読んでいた書類を見せながら先程までの出来事を田中さんに話して
いると、麗奈さんが呻き声を上げて目を覚ました。
「麗奈さん、大丈夫ですか?!」
僕がそう言うと、麗奈さんは小さく頷く。そして、呟くように言った。
「あの妖、事前情報の何倍も強かった・・・。ごめんね、怪我は大丈夫?」
僕と晴樹が頷くと、良かったと言って麗奈さんは立ち上がる。
「依頼主に、情報の修正お願いしなきゃ。・・・あなた、見た感じ企業の人っぽい
けど何処の会社?」
麗奈さんに聞かれた田中さんが会社名を答えると、依頼主のとこの提携会社じゃ
ないかと麗奈さんは言った。
「丁度良いや、そっちで情報の修正頼める?情報は出すからさ」
「分かりました、弊社の方でやっておきましょう」
田中さんはそう言うと、誠を見る。そして誠と目線を合わせると言った。
「誠くん、今日はここで解散しましょう。それと・・・できればで良いんですが、
今回の件を狗神様に伝えて頂けますか?」
「お祖父ちゃんに?」
首を傾げた誠に田中さんは頷く。
「今回の討伐対象の種族は鬼。鬼という種族は気ままに行動すると言われて
いまして。狗神様にも情報提供をお願いできればと」
「お祖父ちゃん知ってるのかな・・・?」
「狗神様は様々な所に行かれていますからね。もしかしたら、と」
「ふーん・・・分かった、後で家に電話してみる!」
そう言った誠に、ありがとうございますと田中さんは笑った。
陽煉を避け、夜月で斬りかかる。痛みが、ない。
「おや?」
夜月を間一髪で避けた八仙は、目を細めてこちらを見ていた。
ああ・・・何か・・・楽しく、なってきた。
夜月を振り下ろそうと動いたところで、ふと思い出す。・・・そうだ、雨谷と約束
したんだった。
「くそっ・・・!!」
僕は後ろに下がり、晴樹に向かって走る。
「静兄・・・」
不安そうな顔で僕を見た晴樹に、僕は言った。
「・・・ごめん、僕は大丈夫」
晴樹は安心したような顔をすると、八仙に向かって発砲する。首を傾げながらも
銃弾を避け僕達の元へ向かってくる八仙の後ろから、麗奈さんが鎌を振り下ろす。
八仙はそれを避けると、一瞬で僕の前に来て言った。
「今の・・・何かな?」
距離を取ろうとした僕の喉元に八仙は陽煉を突き付ける。
動けない僕に、八仙はもう一度聞いた。
「君、何をしたの?一瞬殺気が変わったんだけど」
「・・・分からない」
僕が呟くと、八仙は陽煉を鞘に納める。そして目にも止まらぬ速さで八仙の後ろに
居た麗奈さんを地面に沈めた。
動かなくなった麗奈さんを見て、僕と晴樹は八仙を睨みつける。すると、八仙は
笑みを浮かべて言った。
「君、気に入ったよ。殺すのは今度にしてあげよう。・・・ついでに、隣の君も
見逃してあげる。君からも美味しそうな匂いはするけど、今は食べる気分じゃ
なくなったしね」
八仙は僕達に背中を向けて去っていく。だけど、その背中には隙が無かった。
森の中に八仙が消えていった後、僕達は麗奈さんに駆け寄る。斬られたところが
かなり痛かったのだが、それよりも麗奈さんが心配だった。
―――頭から血を流しながらも息をしていた麗奈さんにほっとしつつ、僕は急いで
学校に連絡する。
数分後、知っている気配がした。そちらを見ると、誠と知らない男性が立っていて。
誠は麗奈さんと僕に治癒術を掛けると、僕に言った。
「ボク達のところに学校から緊急の電話が来てさ。・・・急いで来たら静くん達が
居てビックリしたよ」
「あそこの死体、全員祓い屋ですね。一体誰が・・・」
そう言った男性に誰だろうと首を傾げると、誠が言った。
「この人はボクの実習先の田中さん。ほら、お祖父ちゃんの信者の人」
「初めまして、田中と申します」
そう言って頭を下げる男性・・・田中さんに、僕と晴樹も頭を下げる。
麗奈さんが読んでいた書類を見せながら先程までの出来事を田中さんに話して
いると、麗奈さんが呻き声を上げて目を覚ました。
「麗奈さん、大丈夫ですか?!」
僕がそう言うと、麗奈さんは小さく頷く。そして、呟くように言った。
「あの妖、事前情報の何倍も強かった・・・。ごめんね、怪我は大丈夫?」
僕と晴樹が頷くと、良かったと言って麗奈さんは立ち上がる。
「依頼主に、情報の修正お願いしなきゃ。・・・あなた、見た感じ企業の人っぽい
けど何処の会社?」
麗奈さんに聞かれた田中さんが会社名を答えると、依頼主のとこの提携会社じゃ
ないかと麗奈さんは言った。
「丁度良いや、そっちで情報の修正頼める?情報は出すからさ」
「分かりました、弊社の方でやっておきましょう」
田中さんはそう言うと、誠を見る。そして誠と目線を合わせると言った。
「誠くん、今日はここで解散しましょう。それと・・・できればで良いんですが、
今回の件を狗神様に伝えて頂けますか?」
「お祖父ちゃんに?」
首を傾げた誠に田中さんは頷く。
「今回の討伐対象の種族は鬼。鬼という種族は気ままに行動すると言われて
いまして。狗神様にも情報提供をお願いできればと」
「お祖父ちゃん知ってるのかな・・・?」
「狗神様は様々な所に行かれていますからね。もしかしたら、と」
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