異能力と妖と

彩茸

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実習編

呼出

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―――家に帰った僕達は、赤芽や天春達と遊んだり狗神や雷羅に稽古をつけて
もらったりして、充実した時間を過ごす。
春休みも終わり6年に上がったある日、校長先生に呼び出された。

「あれ、皆居る・・・?」

 校長室の扉を開けると、そこには晴樹、和正、誠、彩音、清水さん・・・つまり
 いつものメンツが揃っていた。
 驚いている僕を見た校長先生は、穏やかな笑みを浮かべて言った。

「学年討伐数ランキング同率一位の狗神くん、日野くん、君のペアの神宮さん。
 それと二位の弟くんのペアの清水さんも、実習に行っても良いのではと弟くんに
 提案されての」

 なるほどと言いながらちらりと晴樹を見ると、晴樹は小さくVサインをした。
 あの晴樹が・・・なんて思っていると、校長先生は春休み中に見せてくれたあの
 ファイルを取り出し、僕達に見せる。
 誠、彩音、清水さんが何処が良いだろうなんて話をしている中、和正は一歩引いて
 その様子を眺めていた。

「和正は選ばないのか?」

 僕がそう聞くと、和正は頷いて言った。

「俺、もう決まってるから」

「え、和くん何処行くの?」

 誠がバッと和正を見る。

「ん?父さんのと・・・こ・・・」

 言っている途中に恥ずかしくなったのか、和正は顔を真っ赤にする。

「待って待って、今のなし!!」

「へ~、お父さんの所、ねえ?」

 慌てて訂正しようとする和正に、誠がニヤニヤとしながら言う。そして僕の顔を
 見て言った。

「ねえ静くん今の聞いた?!」

 嬉しそうな誠に僕は苦笑いを浮かべる。
 恥ずかしそうに顔を手で覆って俯く和正を見て、晴樹がクスッと笑った。



―――皆希望の場所が決まり、それぞれ電話を掛ける。どうやら彩音と清水さんは
同じところにするようで、仲良く電話していた。

「誠は何処にしたんだ?」

 電話を掛け終わった誠に和正が聞くと、誠は少し恥ずかしそうに言った。

「・・・お祖父ちゃんの、信者の人」

 祓い屋やってる信者もいるのかよなんて思っていると、僕と晴樹の番になった。
 緊張しながら、ボタンを押す。数コールの後、もしもしと眠そうな女性の声が
 聞こえた。
 テンプレート通りの言葉を喋り、相手の反応を待つ。すると場所と時間を女性が
 告げ、電話を切られた。

「・・・え??」

 プツリと切れた電話に、困惑する。校長先生にその旨を伝えると、校長先生は
 苦笑いを浮かべた。

「何か不思議な人ね・・・」

 彩音がそう言って困った顔をする。すると、校長先生は紅茶を一口飲んで言った。

「・・・30年くらい前の話じゃが、最強班と呼ばれていた実践授業の班があっての。
 詳しい班員は資料を見なければ思い出せないんじゃが、確かその人もその班員
 だったはずじゃ」

「そんな凄い人が・・・」

 そう呟いて清水さんは目を輝かせると、晴樹に言った。

「晴樹くん、実習の話楽しみにしてるね!」

「不安しかないんだけど・・・」

 晴樹はそう言って溜息を吐いた。
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