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妖刀編
知人
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―――春休み中に、僕と晴樹は一度学園へ戻る。
校長室に行くと校長先生が紅茶を啜っており、僕と晴樹を見てどうしたんだい?と
穏やかな笑みを浮かべた。
「・・・校長先生、お話があります」
僕は少し緊張しながらも、校長先生に殺生石を差し出す。
カップを置いた校長先生は、それを見て目を見開いた。
「殺生石じゃないか!山霧くん、これをどこで・・・?」
僕と晴樹は互いを見て頷き合うと、校長先生に狐との戦いの話をする。
全てを聞き終えた校長先生は、なるほど・・・と呟いた後僕達を見て言った。
「他の生徒には伝えておらんが、6年生を襲ったのは九尾の狐であるという報告が
上がっておってな。何処に現れるのか分かっていないということもあり、教員で
探しておったんじゃ。・・・そうか、君達が倒してくれたのか・・・」
校長先生は僕達に深々と頭を下げる。
「本当に、ありがとう・・・!」
校長先生は、涙声だった。
「・・・校長先生、お願いがあるんですけど」
晴樹がそう言うと、校長先生は顔を上げて何だい?と首を傾げる。
「僕達が狐を倒したこと、黙っていてください。・・・これ以上、生徒に騒がれたく
ないので」
「・・・分かった、儂の心の内に留めておこう」
校長先生が頷くと、ありがとうございますと晴樹は頭を下げる。
僕も頭を下げると、校長先生が言った。
「頭を上げなさい。・・・そうじゃ、二人に提案があるんじゃが」
「提案、ですか?」
僕が首を傾げると、校長先生は頷く。
「君達の実力なら、もう卒業しても何の問題もないんじゃが・・・。どうじゃ、一足
早く実習に行ってみんか?」
「実習?」
僕と晴樹が声を揃えて言うと、校長先生は机の中からファイルを取り出してきて
言った。
「ここの学生には、6年の夏休み明けから実習として現地で働く祓い屋などで実戦
経験を積んでもらっておるんじゃ。祓い屋にも、フリーランスや企業など様々な
働き方があっての。このファイルの中から、生徒達に行きたい場所を選んで
もらっておる」
ファイルをパラパラと捲る校長先生。その中に、知った顔が見えた。
「・・・あ、この人」
僕が呟くと、校長先生は手を止めてページを見せてくれる。
そこにあった写真には、照真くんの父親が写っていた。
「知り合いかい?」
そう聞いてきた校長先生に、僕と晴樹は頷く。すると、校長先生はふむ・・・と
顎を撫でて言った。
「もし君達が6年に上がってすぐに実習に行くのなら、今から電話してみても良いん
じゃが・・・」
「えっと・・・」
どうしようと僕が晴樹を見ると、晴樹は呟くように言った。
「・・・僕、静兄が一緒なら何でもいい」
校長先生は僕を見る。少し悩んで、僕は言った。
「・・・じゃあ、お願いします」
―――校長先生が電話を掛けるとすぐに繋がったようで、少し会話をした校長先生は
僕に受話器を渡してくる。
何て言えば良いんだと思いながら受話器を受け取ると、電話の向こうから久しぶり
だねと声がした。
「お久しぶりです。えっと・・・」
僕が実習のことについて伝えると、照真くんの父親は少し悩んだ後代わりの人なら
紹介できると言った。
詳しく話を聞くと、照真くんの父親の一個上・・・つまり父さんの一個下の後輩
で、学生の頃父さんと実践授業の班が同じだったらしい。
それならと紹介してもらうことになり、電話を切ろうとした時、声が聞こえた。
『お兄ちゃんこっちー!』
『待て照真、そっちは危な・・・うおっ?!』
『ちょっ、大丈夫?!』
『父さん、俺より先に照真止め・・・・・・』
「・・・和正?」
電話越しに聞こえる、照真くんと和正、そして照真くんの父親の声。
何があったんだと思っていると、ごめん切るね!という言葉と共に電話が切れた。
「静兄、何かあった?」
校長先生に受話器を返すと、晴樹が聞いてくる。
「・・・取り敢えず、照真くんと和正がいることは分かった」
僕がそう答えると、晴樹はよく分からないと言いたげな顔で首を傾げた。
「そういえばさっき、息子達と出掛けていると言っておったのお・・・」
校長先生がそう言ってホッホッホと笑った。
校長室に行くと校長先生が紅茶を啜っており、僕と晴樹を見てどうしたんだい?と
穏やかな笑みを浮かべた。
「・・・校長先生、お話があります」
僕は少し緊張しながらも、校長先生に殺生石を差し出す。
カップを置いた校長先生は、それを見て目を見開いた。
「殺生石じゃないか!山霧くん、これをどこで・・・?」
僕と晴樹は互いを見て頷き合うと、校長先生に狐との戦いの話をする。
全てを聞き終えた校長先生は、なるほど・・・と呟いた後僕達を見て言った。
「他の生徒には伝えておらんが、6年生を襲ったのは九尾の狐であるという報告が
上がっておってな。何処に現れるのか分かっていないということもあり、教員で
探しておったんじゃ。・・・そうか、君達が倒してくれたのか・・・」
校長先生は僕達に深々と頭を下げる。
「本当に、ありがとう・・・!」
校長先生は、涙声だった。
「・・・校長先生、お願いがあるんですけど」
晴樹がそう言うと、校長先生は顔を上げて何だい?と首を傾げる。
「僕達が狐を倒したこと、黙っていてください。・・・これ以上、生徒に騒がれたく
ないので」
「・・・分かった、儂の心の内に留めておこう」
校長先生が頷くと、ありがとうございますと晴樹は頭を下げる。
僕も頭を下げると、校長先生が言った。
「頭を上げなさい。・・・そうじゃ、二人に提案があるんじゃが」
「提案、ですか?」
僕が首を傾げると、校長先生は頷く。
「君達の実力なら、もう卒業しても何の問題もないんじゃが・・・。どうじゃ、一足
早く実習に行ってみんか?」
「実習?」
僕と晴樹が声を揃えて言うと、校長先生は机の中からファイルを取り出してきて
言った。
「ここの学生には、6年の夏休み明けから実習として現地で働く祓い屋などで実戦
経験を積んでもらっておるんじゃ。祓い屋にも、フリーランスや企業など様々な
働き方があっての。このファイルの中から、生徒達に行きたい場所を選んで
もらっておる」
ファイルをパラパラと捲る校長先生。その中に、知った顔が見えた。
「・・・あ、この人」
僕が呟くと、校長先生は手を止めてページを見せてくれる。
そこにあった写真には、照真くんの父親が写っていた。
「知り合いかい?」
そう聞いてきた校長先生に、僕と晴樹は頷く。すると、校長先生はふむ・・・と
顎を撫でて言った。
「もし君達が6年に上がってすぐに実習に行くのなら、今から電話してみても良いん
じゃが・・・」
「えっと・・・」
どうしようと僕が晴樹を見ると、晴樹は呟くように言った。
「・・・僕、静兄が一緒なら何でもいい」
校長先生は僕を見る。少し悩んで、僕は言った。
「・・・じゃあ、お願いします」
―――校長先生が電話を掛けるとすぐに繋がったようで、少し会話をした校長先生は
僕に受話器を渡してくる。
何て言えば良いんだと思いながら受話器を受け取ると、電話の向こうから久しぶり
だねと声がした。
「お久しぶりです。えっと・・・」
僕が実習のことについて伝えると、照真くんの父親は少し悩んだ後代わりの人なら
紹介できると言った。
詳しく話を聞くと、照真くんの父親の一個上・・・つまり父さんの一個下の後輩
で、学生の頃父さんと実践授業の班が同じだったらしい。
それならと紹介してもらうことになり、電話を切ろうとした時、声が聞こえた。
『お兄ちゃんこっちー!』
『待て照真、そっちは危な・・・うおっ?!』
『ちょっ、大丈夫?!』
『父さん、俺より先に照真止め・・・・・・』
「・・・和正?」
電話越しに聞こえる、照真くんと和正、そして照真くんの父親の声。
何があったんだと思っていると、ごめん切るね!という言葉と共に電話が切れた。
「静兄、何かあった?」
校長先生に受話器を返すと、晴樹が聞いてくる。
「・・・取り敢えず、照真くんと和正がいることは分かった」
僕がそう答えると、晴樹はよく分からないと言いたげな顔で首を傾げた。
「そういえばさっき、息子達と出掛けていると言っておったのお・・・」
校長先生がそう言ってホッホッホと笑った。
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