163 / 203
妖刀編
証明
しおりを挟む
―――次の日の朝。昨日よりも動くようになった体で、僕は建物の周辺をブラブラと
していた。
そんなすぐには治らないか・・・なんて考えながら歩いていると、後ろから声が
掛かる。振り向くと、そこには雨谷が立っていた。
「おはよ~!散歩中?」
ヘラヘラと笑う雨谷に挨拶を返すと、雨谷は僕に近付いて来る。
そして懐から灰色の石を取り出すと、僕に差し出した。
「これ、シズちんが持ってなよ」
「何これ・・・?」
石を受け取り首を傾げると、雨谷は覚えてないの~?と笑う。そして、少し声の
トーンを落とすと真剣な表情で言った。
「それは『殺生石』。九尾の狐限定の討伐証明だよ」
「え・・・」
「オイラ、シズちんが笑いながら戦ってる最中に目が覚めてね。体動かなくてただ
眺めるだけだったんだけど・・・君が狐の首を斬った後、夜月で石をつついてたの
覚えてない?」
記憶が曖昧だが、言われてみれば確かにそんなことをしていたかもしれない。
そうだったかもと頷くと、雨谷は少し困った顔をして言った。
「あの状態のシズちん、諸刃の剣なんだよね~。狗神ぐらい治癒に長けた奴が傍に
いないと、多分シズちん死んじゃうよ?」
「そんなこと言われても・・・」
「・・・あー、じゃあこうしよう」
雨谷はそう言うと、僕の目をじっと見る。
また雨谷の目に吸い込まれそうな気分になっていると、彼は言った。
「シズちん、戦ってる最中で楽しいって感じたら、すぐに戦闘を止めて。頭が
暴走の感覚を覚えちゃってるから、ちょっと難しいかもしれないけど・・・
できる?」
僕が頷くと、雨谷はニッコリと笑う。
体が軽くなる感覚と同時に、疑問が湧いてきた。
「そういえば、何で僕が楽しいって思ってるって分かったんだ?」
「実は昨日の夜、狗神と色々話してね~。雷羅だっけ?その子との戦いの話も聞い
たんだ」
雨谷はヘラヘラと笑うと、戻ろうかと言って歩き出す。
僕も隣に並んで歩いていると、雨谷が言った。
「・・・その殺生石、校長先生に直に見せに行きなよ?実践授業みたいに先生に
見せるだけじゃ信用してもらえないだろうからね~」
「えっ、何で雨谷が実践授業のこと知ってるんだ」
驚いた僕に、雨谷はキョトンとした顔で言った。
「タケちんから聞いたんだよ」
「何で父さんが学校の話を・・・」
「オイラがタケちんに初めて会いに行ったとき、タケちんまだ学生だったからね。
ここに遊びに来たとき、学校のことペラペラ喋ってたよ~?」
思わず溜息を吐く。何で妖に学校のこと話しちゃうかな・・・。
「ね、タケちん結構テキトーでしょ~?」
そう言って雨谷は笑う。そうだな・・・と僕は呟いて、空を見上げた。
していた。
そんなすぐには治らないか・・・なんて考えながら歩いていると、後ろから声が
掛かる。振り向くと、そこには雨谷が立っていた。
「おはよ~!散歩中?」
ヘラヘラと笑う雨谷に挨拶を返すと、雨谷は僕に近付いて来る。
そして懐から灰色の石を取り出すと、僕に差し出した。
「これ、シズちんが持ってなよ」
「何これ・・・?」
石を受け取り首を傾げると、雨谷は覚えてないの~?と笑う。そして、少し声の
トーンを落とすと真剣な表情で言った。
「それは『殺生石』。九尾の狐限定の討伐証明だよ」
「え・・・」
「オイラ、シズちんが笑いながら戦ってる最中に目が覚めてね。体動かなくてただ
眺めるだけだったんだけど・・・君が狐の首を斬った後、夜月で石をつついてたの
覚えてない?」
記憶が曖昧だが、言われてみれば確かにそんなことをしていたかもしれない。
そうだったかもと頷くと、雨谷は少し困った顔をして言った。
「あの状態のシズちん、諸刃の剣なんだよね~。狗神ぐらい治癒に長けた奴が傍に
いないと、多分シズちん死んじゃうよ?」
「そんなこと言われても・・・」
「・・・あー、じゃあこうしよう」
雨谷はそう言うと、僕の目をじっと見る。
また雨谷の目に吸い込まれそうな気分になっていると、彼は言った。
「シズちん、戦ってる最中で楽しいって感じたら、すぐに戦闘を止めて。頭が
暴走の感覚を覚えちゃってるから、ちょっと難しいかもしれないけど・・・
できる?」
僕が頷くと、雨谷はニッコリと笑う。
体が軽くなる感覚と同時に、疑問が湧いてきた。
「そういえば、何で僕が楽しいって思ってるって分かったんだ?」
「実は昨日の夜、狗神と色々話してね~。雷羅だっけ?その子との戦いの話も聞い
たんだ」
雨谷はヘラヘラと笑うと、戻ろうかと言って歩き出す。
僕も隣に並んで歩いていると、雨谷が言った。
「・・・その殺生石、校長先生に直に見せに行きなよ?実践授業みたいに先生に
見せるだけじゃ信用してもらえないだろうからね~」
「えっ、何で雨谷が実践授業のこと知ってるんだ」
驚いた僕に、雨谷はキョトンとした顔で言った。
「タケちんから聞いたんだよ」
「何で父さんが学校の話を・・・」
「オイラがタケちんに初めて会いに行ったとき、タケちんまだ学生だったからね。
ここに遊びに来たとき、学校のことペラペラ喋ってたよ~?」
思わず溜息を吐く。何で妖に学校のこと話しちゃうかな・・・。
「ね、タケちん結構テキトーでしょ~?」
そう言って雨谷は笑う。そうだな・・・と僕は呟いて、空を見上げた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
カフェ・ユグドラシル
白雪の雫
ファンタジー
辺境のキルシュブリューテ王国に、美味い料理とデザートを出すカフェ・ユグドラシルという店があった。
この店を経営しているのは、とある準男爵夫妻である。
準男爵の妻である女性は紗雪といい、数年前にウィスティリア王国の王太子であるエドワード、彼女と共に異世界召喚された近藤 茉莉花、王国騎士であるギルバードとラルク、精霊使いのカーラと共に邪神を倒したのだ。
表向きはそう伝わっているが、事実は大いに異なる。
エドワードとギルバード、そして茉莉花は戦いと邪神の恐ろしさにgkbrしながら粗相をしていただけで、紗雪一人で倒したのだ。
邪神を倒しウィスティリア王国に凱旋したその日、紗雪はエドワードから「未来の王太子妃にして聖女である純粋無垢で可憐なマリカに嫉妬して虐めた」という事実無根な言いがかりをつけられた挙句、国外追放を言い渡されてしまう。
(純粋無垢?可憐?プフー。近藤さんってすぐにやらせてくれるから、大学では『ヤリマン』とか『サセコ』って呼ばれていたのですけどね。それが原因で、現在は性病に罹っているのよ?しかも、高校時代に堕胎をしている女を聖女って・・・。性女の間違いではないの?それなのに、お二人はそれを知らずにヤリマン・・・ではなく、近藤さんに手を出しちゃったのね・・・。王太子殿下と騎士さんの婚約者には、国を出る前に真実を伝えた上で婚約を解消する事を勧めておくとしましょうか)
「王太子殿下のお言葉に従います」
羽衣と霊剣・蜉蝣を使って九尾の一族を殲滅させた直後の自分を聖女召喚に巻き込んだウィスティリア王国に恨みを抱えていた紗雪は、その時に付与されたスキル【ネットショップ】を使って異世界で生き抜いていく決意をする。
紗雪は天女の血を引くとも言われている千年以上続く陰陽師の家に生まれた巫女にして最強の退魔師です。
篁家についてや羽衣の力を借りて九尾を倒した辺りは、後に語って行こうかと思っています。
家に住み着いている妖精に愚痴ったら、国が滅びました
猿喰 森繁 (さるばみ もりしげ)
ファンタジー
【書籍化決定しました!】
11月中旬刊行予定です。
これも多くの方が、お気に入り登録してくださったおかげです
ありがとうございます。
【あらすじ】
精霊の加護なくして魔法は使えない。
私は、生まれながらにして、加護を受けることが出来なかった。
加護なしは、周りに不幸をもたらすと言われ、家族だけでなく、使用人たちからも虐げられていた。
王子からも婚約を破棄されてしまい、これからどうしたらいいのか、友人の屋敷妖精に愚痴ったら、隣の国に知り合いがいるということで、私は夜逃げをすることにした。
まさか、屋敷妖精の一声で、精霊の信頼がなくなり、国が滅ぶことになるとは、思いもしなかった。
【完結】虐げられた令嬢の復讐劇 〜聖女より格上の妖精の愛し子で竜王様の番は私です~
大福金
ファンタジー
10歳の時、床掃除をしている時に水で足を滑らせ前世の記憶を思い出した。侯爵家令嬢ルチア
8さいの時、急に現れた義母に義姉。
あれやこれやと気がついたら部屋は義姉に取られ屋根裏に。
侯爵家の娘なのに、使用人扱い。
お母様が生きていた時に大事にしてくれた。使用人たちは皆、義母が辞めさせた。
義母が連れてきた使用人達は私を義母と一緒になってこき使い私を馬鹿にする……
このままじゃ先の人生詰んでる。
私には
前世では25歳まで生きてた記憶がある!
義母や義姉!これからは思い通りにさせないんだから!
義母達にスカッとざまぁしたり
冒険の旅に出たり
主人公が妖精の愛し子だったり。
竜王の番だったり。
色々な無自覚チート能力発揮します。
竜王様との溺愛は後半第二章からになります。
※完結まで執筆済みです。(*´꒳`*)10万字程度。
※後半イチャイチャ多めです♡
※R18描写♡が入るシーンはタイトルに★マークをいれています。
転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。
婚約破棄の現場に遭遇した悪役公爵令嬢の父親は激怒する
白バリン
ファンタジー
田中哲朗は日本で働く一児の父であり、定年も近づいていた人間である。
ある日、部下や娘が最近ハマっている乙女ゲームの内容を教えてもらった。
理解のできないことが多かったが、悪役令嬢が9歳と17歳の時に婚約破棄されるという内容が妙に耳に残った。
「娘が婚約破棄なんてされたらたまらんよなあ」と妻と話していた。
翌日、田中はまさに悪役公爵令嬢の父親としてゲームの世界に入ってしまった。
数日後、天使のような9歳の愛娘アリーシャが一方的に断罪され婚約破棄を宣言される現場に遭遇する。
それでも気丈に振る舞う娘への酷い仕打ちに我慢ならず、娘をあざけり笑った者たちをみな許さないと強く決意した。
田中は奮闘し、ゲームのガバガバ設定を逆手にとってヒロインよりも先取りして地球の科学技術を導入し、時代を一挙に進めさせる。
やがて訪れるであろう二度目の婚約破棄にどう回避して立ち向かうか、そして娘を泣かせた者たちへの復讐はどのような形で果たされるのか。
他サイトでも公開中
風切山キャンプ場は本日も開拓中 〜妖怪達と作るキャンプ場開業奮闘記〜
古道 庵
キャラ文芸
弱り目に祟り目。
この数ヶ月散々な出来事に見舞われ続けていた"土井 涼介(どい りょうすけ)"二十八歳。
最後のダメ押しに育ての親である祖母を亡くし、田舎の実家と離れた土地を相続する事に。
都内での生活に限界を感じていたこともあり、良いキッカケだと仕事を辞め、思春期まで過ごした"風切村(かざきりむら)"に引っ越す事を決める。
手元にあるのは相続した実家と裏山の土地、そして趣味のキャンプ道具ぐらいなものだった。
どうせ自分の土地ならと、自分専用のキャンプ場にしようと画策しながら向かった裏山の敷地。
そこで出会ったのは祖父や祖母から昔話で聞かされていた、個性豊かな妖怪達だった。
彼らと交流する内、山と妖怪達が直面している窮状を聞かされ、自分に出来ることは無いかと考える。
「……ここをキャンプ場として開いたら、色々な問題が丸く収まるんじゃないか?」
ちょっとした思いつきから端を発した開業の話。
甘い見通しと希望的観測から生まれる、中身がスカスカのキャンプ場経営計画。
浮世離れした妖怪達と、田舎で再起を図るアラサー男。
そしてそんな彼らに呆れながらも手を貸してくれる、心優しい友人達。
少女姿の天狗に化け狸、古杣(ふるそま)やら山爺やら鎌鼬(かまいたち)やら、果ては伝説の大妖怪・九尾の狐に水神まで。
名も無き山に住まう妖怪と人間が織りなすキャンプ場開業&経営の物語。
風切山キャンプ場は、本日も開拓中です!
--------
本作は第6回キャラ文芸大賞にて、奨励賞を受賞しました!
ヒロインとして転生した元おばちゃんは平穏な人生を歩みます
白雪の雫
ファンタジー
海賊に攫われたタウラス王国の王女であるディアーヌは自分と同じ年頃の少女と共にジェミニー帝国へと向かっていた。
皇帝への貢物として。
(海賊に攫われたプラチナブロンドヘアーの美少女ディアーヌ。ジェミニー王国。皇帝への貢ぎ物・・・もしかして、あたしはヒロインだったりする?)
「野郎共!女達は皇帝に売る商品だから丁重に扱うんだぞ!!」
海賊の頭と思しき男の一言でディアーヌは自分が【百花乱舞~愛憎と欲望の花園~】という恋愛と育成シミュレーション、ルートによってはライバル達を蹴落として成り上がる要素がある乙女ゲームのヒロインとして転生していた事に気付く。
(どうせならジェミニー帝国に向かっている時ではなく、海賊に攫われる数年前に前世を思い出したかった・・・)
前世がおばちゃんだった主人公による一人語りで、息抜きで思い付いた話だから設定はゆるふわで色々と深く考えたものではありません。
1000文字以下を目指したのですが・・・やはり難しいです。
聖女も勇者もお断り🙅
ピコっぴ
ファンタジー
何しに喚ばれたんか知らんけど ( 'ω'o[お断りします]o
【萌々香の場合】
子供の頃から、なぜか水辺が苦手で酷いと卒倒することもあった私は、水濠で清水に飲み込まれ、異世界に召喚された
『聖女』として
でも、無色の私は『月无』──憑き無しとして捨て置かれた
後から聖女さまと呼んでも、誰が助けてなんかやるものか
※ヒーローの本文内での確定がやや遅めです
表紙は自筆
富士通のAndroidで、SONYのアプリSketch にて☝左手中指を使用
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる