異能力と妖と

彩茸

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妖刀編

既知

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―――雪華から昼食が振舞われ、質素な見た目にも関わらずとても美味しい昼食に
驚く。
少し雑談をした後そろそろ帰ろうということになり、僕達は立ち上がる。窓の外を
眺めもうすぐ夕方だななんて思っていると、突然雨谷が叫んだ。

「雪華!!」

 驚いてそちらを見ると、雨谷が焦ったような顔で扉を見ていた。雪華を見ると、
 彼女は僕と晴樹を見て言った。

「お下がりください」

 僕と晴樹は困惑しつつも扉から離れる。
 ・・・数秒後、扉が音を立てて壊れた。

「あ・・・・・・」

 壊れた扉の先に居たものを見て、晴樹の顔が青ざめる。僕はガタガタと震えだす
 晴樹を庇う様に前に立ち、それを睨みつけた。
 九本の白い尾が、ゆらゆらと動く。実際に見るのは初めてだが、僕はこいつを
 知っている。

「九尾の狐・・・!」

 僕の言葉に、狐はニタリと笑う。その瞬間、目の前に居た雪華が赤く染まった。
 咄嗟に夜月を抜き、崩れ落ちる雪華を見る。雪華のお腹は深く抉られており、狐の
 尻尾の一本に雪華のものと思われる内臓が刺さっていた。
 狐はそれを大きな口を開けて一飲みにする。
 こみ上げてきた吐き気を必死に抑えていると、雨谷の声が聞こえた。

「・・・ちょっとさあ、うちの従者に何てことしてくれてんの~?用事ならもう
 ちょっと大人しく入って来てくれないかなあ」

 ちらりと雨谷を見ると、のんびりとした口調とは裏腹に、殺意の籠った目で狐を
 見ていた。
 狐は雨谷を見ると、クスリと笑う。気付けば、狐は雨谷の背後に立っていた。
 狐の鋭い爪が雨谷を襲う。それを、雨谷はいつの間にか持っていた刀で防いだ。

「ほう・・・」

 狐が声を漏らす。
 雨谷は狐から距離を取ると、刀の切っ先を狐に向けて言った。

「どうやって入った。オイラの結界は妖にはすり抜けられないはずだけど?」

「会話をするのも一興か。・・・そうじゃな、入ったのじゃ」

「・・・へえ、あの結界壊せる妖っていたんだね」

「少々厄介じゃったが、妾にできぬことではなかったぞ?」

 妖美な笑みを浮かべる狐に、雨谷は焦りの表情を浮かべる。狐はクスリと笑うと、
 僕を見た。

「お主は良い匂いがする。食らうのは最後にしよう」

「は・・・?」

 食べるのは女性の内臓だけじゃないのか。そんな考えが浮かんできたが、今は
 それどころじゃない。
 僕は震える晴樹の手を取ると、扉の外へ走り出す。
 狐の尻尾が襲い掛かってきたが、間に入った雨谷がそれを弾いた。

「とにかく外へ!」

 雨谷の言葉に僕は頷くと、外を目指して建物の中を駆ける。
 外に出たとき、僕達がさっきまで居た部屋から大きな音がした。
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