異能力と妖と

彩茸

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妖刀編

戦闘

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―――冬休みが終わり、授業が始まる。強化合宿で僕達はかなり成長していた
ようで、いつも通りやっているつもりが、気付けば合同授業で無双していた。

「・・・今の動き、全く見えなかったんだけど」

「前から強かったけど、更に強くなってない?」

「冬休みの間に何があったんだ・・・」

 そんな声が聞こえる中、僕と和正は対峙する。
 今日の誠はサボる気分だったようで、この代表戦には参加していなかった。

「えっと・・・手加減は?」

「する訳ないだろ」

「だよなー・・・」

 即答した僕に、和正は苦笑いを浮かべる。

「静くん頑張れ~」

「和正やっちゃいなさい!」

 誠と彩音の声が聞こえる。
 和正は小さく息を吐くと、気絶しているA組の代表者をちらりと見る。

「自信なくなってきたんだけど・・・」

「・・・そっちだって、B組のメンバー速攻で気絶させたくせに」

「それはそうだけどさあ」

「ほらやるぞ。武器無しだと、僕の方が弱いかもしれないんだからさ」

 僕がそう言うと和正は、それはないと深い溜息を吐く。そして僕を見据えると、
 腰を落とした。
 地面を蹴り、和正が突っ込んでくる。能力により加速した和正の攻撃をギリギリで
 避け、後ろに回り込む。
 間髪入れず蹴りを繰り出すと、和正はクルリと回りながら足で蹴りを受け止めた。

「・・・あれ、もしかして読まれてる?」

 和正から距離を取り僕が聞くと、和正は首を傾げて言った。

「結構分かりやすかったぞ?今の」

「ええ・・・」

 想像以上に和正は強くなっているのかもしれない。そんな事を考えていると、
 また和正が突っ込んできた。
 ひらりと避け、殴り掛かる。しかし拳が当たる前に和正に腕を掴まれた。
 腕を掴まれたまま、僕は蹴りを繰り出す。和正はそれを空いている手で受け止める
 と、僕を投げ飛ばす。
 受け身を取った僕は、能力を発動させながら和正へと駆け出す。
 和正は気配を探ることまではできないようで、キョロキョロとしていた。すかさず
 僕は和正の鳩尾に拳を入れる。
 吹っ飛んだ和正は気絶するかと思いきや、咳き込みながらも立ち上がる。

「タフだなあ・・・」

 僕が呟くと、和正は僕に詰め寄り笑って言った。

「あんだけ落魅に殴られりゃ、タフにもなるさ」

 和正の拳が顔面に迫る。僕はその場にしゃがむと、和正の足を蹴った。

「うおっ」

 バランスを崩し転倒した和正を殴ろうとした時、チャイムが鳴る。

「そこまで!!」

 先生の声が聞こえ、僕は手を下ろした。
 そういえば今日は授業時間短いんだっけ。そんな事を考えていると、和正が
 仰向けになって言った。

「やっぱ静也強いわ・・・」

「いや、結構ギリギリだったぞ」

 僕はそう言いながら和正に手を差し伸べ、立ち上がらせる。
 ガヤガヤと周りが騒がしくなる中、誠と彩音が駆け寄って来た。

「お疲れ~」

「二人共凄かったわよ」

 そう言って笑う二人に、僕と和正は笑みを向ける。
 お腹空いたな、なんて思いながら僕は集合の列に並んだ。



―――先生から解散の指示があり、教室に戻る準備をしている頃。
ガラリと、訓練室の扉が開いた。
そちらを見ると、小里先生が立っていて。どうしたんだろうかと思っていると、
小里先生が大きめの声で言った。

「すみません、山霧くんは居ますか?」

 皆の視線がこちらに向く。僕が首を傾げると、僕に気付いた小里先生が言った。

「あの、山霧くんのご両親って方々がいらっしゃってるんだけど・・・」

「・・・・・・は?」

 自分でも驚くほど低い声が出る。小里先生の肩がビクリと震え、青い顔をしながら
 取り敢えず来てくれる・・・?と手招きされる。
 何だ何だと周りがざわつく中、僕が足を踏み出すと後ろから腕を掴まれた。
 振り向くと、少し青い顔をしながらも和正が僕の腕を掴んでいた。誠と彩音は青い
 顔をしつつも不安そうな顔をしており、僕は首を傾げる。

「静也、すっげー怖い顔してるぞ、今」

「・・・ああ、ごめん」

 和正の言葉に僕はそれだけ言うと、掴む腕を振り払って小里先生に付いて行く。
 誰が父さんと母さんのふりをしているんだ。そう思いながら、僕は廊下を歩いて
 いた。
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