異能力と妖と

彩茸

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強化合宿編

中盤

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―――家で体を休めた僕達は、次の日も霧ヶ山に行く。
その次の日も、更にその次の日も・・・。
冬休み中盤。いつもの時間に霧ヶ山に行くと、お堂の外でのっぺらぼうと落魅が
取っ組み合いの喧嘩をしていた。

「・・・何してるの?」

 天春が呆れた声で聞くと、のっぺらぼうが言った。

「こいつがワレの邪魔をしたのダ!」

「何言ってるんですかい、先に邪魔したのはあんただろ!」

 落魅はそう言うと、和正を見る。

「和正!のっぺらぼうを撃ちなせえ!!」

「なッ?!晴樹、落魅を撃つのダ!!」

 のっぺらぼうがそう言って晴樹を見る。
 和正と晴樹は顔を見合わせると、銃を取り出す。そして、声を揃えて言った。

「指示するな」

 二人の銃声が鳴り響く。どうやら和正は落魅を、晴樹はのっぺらぼうを狙った
 ようで、銃弾を避けた落魅とのっぺらぼうは二人を睨みつけたような気がした。

「・・・何をやっておるんじゃ、お主ら」

 天狗さんがお堂から出てきて、呆れた顔で落魅とのっぺらぼうを見下ろす。

「いや、その・・・」

「こ、こいつガ・・・」

 顔を青くして天狗さんを見る落魅とのっぺらぼう。天狗さんは溜息を吐くと、
 喧嘩両成敗じゃと言って二人を力強く蹴り飛ばした。
 思い切り木に打ち付けられた二人が気絶したのを見て、天狗さんはニッコリと
 笑って僕達を見る。

「朝から騒がしくしてしまったの。さ、入りなさい」

 僕達はのびている落魅とのっぺらぼうをチラチラと見ながらお堂へ入る。

「おやおや、気絶させてしまって良かったのかい?」

「まあ、日野くんと山霧の弟の方は別の誰かと一緒にやれば良いじゃろ」

 雷羅と狗神がそう言って天狗さんを見る。

「そうじゃな。晴樹くんはわしと、和正くんは狗神とでどうじゃ」

 天狗さんがそう言って晴樹と和正を見ると、二人は頷いた。



―――僕、彩音、和正は雷羅と狗神と一緒にいつもの場所へ向かう。

「てっきり、別々でやってるもんだと思ってたよ」

「静也と雷羅さんの特訓が危なすぎてね。狗神さんが治療するために一緒にやってる
 のよ」

 和正の言葉に彩音はそう言って僕を見る。和正が驚いた顔をして僕を見たので、
 僕は呟くように言った。

「・・・別に、死ぬほどじゃないし」

「そういう考えでやっとるから、怪我するんじゃろうが」

 前を歩いていた狗神がそう言うと、雷羅が笑って言った。

「まあ、あれで死なないから大丈夫って言ってる時点で、かなり強者だと思う
 けどね~」

 和正が困惑した表情を浮かべる。

「・・・和正も驚くわよ、あれ見たら」

 彩音の言葉に和正はええ・・・と呟いた。



―――僕が準備運動をしていると、狗神の声が聞こえた。どうやら狗神は和正の
相手をするらしく、彩音の相手は狼昂に任せるらしい。
狗神は石から狼昂を出すと、指示をする。

「良いかワン公、お主の相手はあの小娘だけじゃ。くれぐれも他の人間に手出しは
 するなよ」

「主様の仰せのままに」

 狼昂の言葉に狗神は頷くと、彩音を指さして言った。

「・・・やれ、狼昂」

 狼昂が牙をむき、彩音に襲い掛かる。彩音はすぐさま数体の式神を出して応戦を
 始めた。

「さて、こちらもやるとするかの」

 狗神がそう言って和正を見る。
 和正は緊張した顔で狗神を見ており、狗神はそんなに緊張するなと笑った。

「さあ、ぼく達もやろうか」

 雷羅の声に僕は頷く。雷羅は片手を空にかざし、僕の頭上に雷雲を出現させた。

「よろしくお願いします」

 僕がそう言うと、雷羅はニコッと笑って指を鳴らす。
 光と共に落ちてきた雷を避ける。・・・今日の特訓が始まった。
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