異能力と妖と

彩茸

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強化合宿編

理解

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―――誠と晴樹が距離を取ったその瞬間、僕と山野は駆け出した。
・・・お互いの、味方に向かって。
僕が誠の拳を止めるのと同時に、山野も晴樹の拳を止めていた。

「何で止めるの?」

 誠が殺気を放ちながら僕に聞く。

「もうちょっとだったのに」

 晴樹がそう言って山野を睨みつける。
 僕と山野は溜息を吐くと、同時に言った。

「やめろ、死人が出たらどうする」

 まさか山野が同じことを言うとは思わず、驚いて山野を見る。山野も、嫌そうな
 顔をして僕を見ていた。
 離してと誠が僕の手を振り払おうとする。僕が誠の拳を掴む手に力を籠めると、
 誠は不機嫌そうな顔で言った。

「邪魔しないでよ。折角楽しかったのに」

「誠、手加減できないだろ」

 僕がそう言うと、誠は目を逸らす。山野は溜息を吐くと晴樹に言った。

「お前もだ、山霧。殺したら失格ってルール、忘れたのか」

「・・・別に良い」

「お前、そんなこと言うと兄貴がキレるぞ」

 なあ?と言って山野は僕を見る。僕の性格を山野が理解していることに何となく
 ムカついたが、僕は晴樹を見て言った。

「・・・山野の言う通りだ。これ以上やったら手加減しない」

 晴樹は俯くと、腕を下ろす。誠の腕からも力が抜けたため、拳を掴んでいた手を
 離した。

「先生、残り何分ですか」

 山野が聞くと、先生は10分だと答える。山野は僕を見ると言った。

「なあ、山霧。対戦相手を変えないか?」

「晴樹と戦えと?」

「ああ、それなら死人は出ないだろ」

「まあそうですね。山野が死ななければ、ですけど」

「お前、そんなにオレが弱いと思ってるのか」

「いいえ?誠が強いと思ってるんですよ」

 僕と山野は睨み合う。そして、同時に動いた。
 僕が晴樹に蹴りを繰り出すのと同時に、山野が誠に殴り掛かる。
 晴樹は僕の蹴りを避け、言った。

「・・・実は仲良いんじゃないの」

「そんな訳あるか!!」

 僕と山野の声が被る。

「息ピッタリだよね~」

 そう言って笑う誠の声が聞こえた。



―――10分後。結局、決着は付かなかった。
授業終了のチャイムと共に、僕達は息を吐く。

「やっぱり体力おかしいって、静兄・・・」

 息も絶え絶えの晴樹が、そう言いながら座り込む。

「前よりも体力ついたな、お疲れ」

 僕は少し上がった息を整えながら言う。

「山野くん、前に戦った時そんなにタフだったっけ・・・?」

 誠はそう言って頬に付いた返り血を拭う。

「こっちだって努力してんだよ・・・」

 頭や腕から血を流していた山野が、そう言って立ち上がる。
 ふらついた山野を僕が支えると、山野が驚いた顔をして僕を見る。だがすぐに
 怪訝な顔をして言った。

「・・・また追い打ち掛ける気か」

 ああ、兎の時のことか。そんなつもりはないんだがと思いながら、僕は首を横に
 振る。

「・・・晴樹を止めてくれたお礼です」

 僕がそう言うと、山野はそうかよと言って目を逸らした。
 誠が晴樹に手を差し伸べ、立ち上がらせる。ごめんやり過ぎたと謝る誠に、晴樹が
 良いよと小さく笑った。
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