異能力と妖と

彩茸

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夏季休暇編

肝試

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―――夜。僕達は三人で五つのグループを作り、肝試しをする。
グループ毎にテントから林を通って端にある池まで行き、小瓶に水を汲んで戻って
来る。皆今日は妖が見える機械を着けていないらしく、何もいないって新鮮~なんて
話していた。
そんな中、僕のグループの前に向かった人達が青い顔をして戻って来た。

「で、出た!マジで出た!!」

「出たって、何が?」

 青い顔をして震えている人に、既に肝試しを終えていた人が聞く。

「幽霊よ!!」

 泣きそうな顔をしてそのグループの人が答えると、皆がどよめいた。

「ど、どうする?次のグループで最後だけど・・・」

「誰だっけ・・・次の人、手挙げて!!」

 主催の子がそう言うと、僕と和正と晴樹が手を挙げた。
 怯えていた皆の顔が、安心したものに変わる。

「あ、うん、大丈夫そうだね!行ってらっしゃい!」

 主催の子が笑顔で言う。大丈夫そうって何だよ・・・。
 まあ、今回肝試しを行った本当の目的はその幽霊だ。僕達は頷くと、林へ向かって
 歩き出した。



―――林の中を進んでいる最中、晴樹が言った。

「・・・そういえば、和正くんも機械着けてないの?」

「いや、俺は着けてる。今回の幽霊、妖だったら見えなきゃ困るしな」

 そっかと晴樹は言うと、僕を見て言った。

「静兄、謝らなきゃいけないことがあるんだけど」

「え?」

 晴樹は背中から何かを抜くような仕草をすると、その手を僕に向けた。
 僕が首を傾げると、晴樹の周りがぐにゃりと歪む。
 気付けば、晴樹が夜月を握っていた。

「勝手に持ち出した、ごめん」

 どうやら晴樹は武器を能力で隠して持って来ていたらしく、晴樹の腰には二丁の
 拳銃が仕舞ってあるホルスターが取り付けられていた。

「いや、持ち出したのは別に良いけど・・・何で?」

「のっぺらぼうが、武器ぐらい常に携帯しておけって言ってたから・・・」

 僕の問いに晴樹はそう答えると、和正に拳銃を一丁渡す。

「え、借りて良いのか?」

 そう言った和正に晴樹は頷くと、和正に渡した拳銃を指さして言った。

「それ、兎の時に貸した桜とは違う方だから。紅葉はちょっと癖があるけど、その分
 威力も高い。・・・壊したらぶっ殺す」

「お、おう。気を付ける・・・」

 和正はそう言って、持って来ていたショルダーバッグに紅葉を仕舞った。
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