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夏季休暇編
確信
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―――頭の混乱が収まった頃には、既に昼だった。昼食の準備をするということで、
僕も料理の手伝いをする。
「なあ静也、大丈夫か?」
和正が心配そうに聞いてくる。僕は野菜を切りながら、小声で言った。
「・・・なあ、和正。凄い不躾な質問しても良いか?」
「ん?答えられるものなら答えるけど・・・」
「あのさ・・・和正の苗字って、父方?母方?」
和正はキョトンとした顔をした後、言った。
「母方だけど。親父、俺と同じ苗字にしたくないって言ってたし」
「そ、そうか。うん、ありがとう・・・」
ますます嫌な予感がする。・・・駄目だ、このままでは口が滑ってしまいそうだ。
僕は野菜を切り終えると、和正から逃げるようにして野菜に串を刺している晴樹の
元へと向かった。
―――肉と野菜の焼ける音が響く。今日の昼食はバーベキューで、皆が今か今かと
焼き上がるのを待っていた。
もうすぐで焼き上がる。そんな時、聞き覚えのある声が聞こえた。
「おおー!バーベキューしてる!!」
声のした方を見ると、そこには目をキラキラとさせる照真くんの姿が。
「可愛い~!」
「君何処の子~?」
キャーキャーと女子が騒ぐ中、照真くんと目が合った。
「あ!静也おにーちゃんだ!!」
皆が知り合いか?と言いたげな顔で僕を見る。
僕に駆け寄って来た照真くんは、ニコニコと笑って言った。
「おかーさんがご飯できるまで遊んでてって言ったから、冒険してたの!!」
・・・それ多分、目の届く範囲で遊べって意味だと思うぞ。
僕はしゃがんで照真くんと目線を合わせる。
「そうなんですね。でも、また居なくなったって心配されちゃいますよ?」
そう言うと、隣で肉を見つめていた誠が言った。
「静くん、その子のテント分かるんだったら、連れて行ってあげたら?」
「そうするか・・・」
テントの場所は分からないけど、照真くんと出会った辺りまで行けばあの女性も
見つかるだろう。
僕が立ち上がったその時、ソースを取りに行っていた和正が戻って来た。
「あれ、その子誰?」
「あ、えっと・・・」
何て言おうと必死に考えていると、照真くんが和正に駆け寄って言った。
「おれ、照真!おにーちゃんの名前は?」
「俺は和正。照真くんは、ここで何してるんだ?」
「えっとねー、冒険!」
「そっか、良いな冒険!」
ニコニコと笑う和正と照真くん。その様子を見て、兄弟みたいだね~と誠が
呟いた。
何気ない一言だったのだが、和正への質問でほぼ確信を持ってしまっていた
僕は焦る。
「も、戻りましょう!」
僕がそう言って照真くんの手を取ったその瞬間、女性の声が聞こえた。
「照真ー?何処に居るのー!?」
近くで、ドサッと音がする。ちらりと和正を見ると、青い顔をして一点を見つめて
いた。
「和正・・・」
僕の言葉に和正はハッとした顔をすると、慌てて落としたソースのボトルを拾い
上げ、テーブルに置いた。
「あ、おかーさん!!」
ニコニコと笑いながら照真くんは女性の元へ駆け出す。
女性は僕を見るとペコリと頭を下げ、その隣に居た和正に気付いたのか、目を
見開き固まった。
何だ何だと周りがざわめく。少しの沈黙の後、女性は震える声で言った。
「和、正・・・?」
女性の様子を見て、知り合い?なんて声が聞こえる。
そんな中、和正は無機質な笑顔で言った。
「・・・お久しぶりです、お母さん」
辺りが静まり返る。唯一キョトンとしていた照真くんが、おかーさん知り合い
なの?と女性の服を引っ張っていた。
「あの、私、私・・・!」
「ここだと皆の邪魔になりますし、向こうで話しませんか?」
何かを言おうとした女性に和正はそう言うと、僕達に背を向けて歩き出す。
女性と照真くんはそれに付いて行き、林の中へ消えていった。
僕も料理の手伝いをする。
「なあ静也、大丈夫か?」
和正が心配そうに聞いてくる。僕は野菜を切りながら、小声で言った。
「・・・なあ、和正。凄い不躾な質問しても良いか?」
「ん?答えられるものなら答えるけど・・・」
「あのさ・・・和正の苗字って、父方?母方?」
和正はキョトンとした顔をした後、言った。
「母方だけど。親父、俺と同じ苗字にしたくないって言ってたし」
「そ、そうか。うん、ありがとう・・・」
ますます嫌な予感がする。・・・駄目だ、このままでは口が滑ってしまいそうだ。
僕は野菜を切り終えると、和正から逃げるようにして野菜に串を刺している晴樹の
元へと向かった。
―――肉と野菜の焼ける音が響く。今日の昼食はバーベキューで、皆が今か今かと
焼き上がるのを待っていた。
もうすぐで焼き上がる。そんな時、聞き覚えのある声が聞こえた。
「おおー!バーベキューしてる!!」
声のした方を見ると、そこには目をキラキラとさせる照真くんの姿が。
「可愛い~!」
「君何処の子~?」
キャーキャーと女子が騒ぐ中、照真くんと目が合った。
「あ!静也おにーちゃんだ!!」
皆が知り合いか?と言いたげな顔で僕を見る。
僕に駆け寄って来た照真くんは、ニコニコと笑って言った。
「おかーさんがご飯できるまで遊んでてって言ったから、冒険してたの!!」
・・・それ多分、目の届く範囲で遊べって意味だと思うぞ。
僕はしゃがんで照真くんと目線を合わせる。
「そうなんですね。でも、また居なくなったって心配されちゃいますよ?」
そう言うと、隣で肉を見つめていた誠が言った。
「静くん、その子のテント分かるんだったら、連れて行ってあげたら?」
「そうするか・・・」
テントの場所は分からないけど、照真くんと出会った辺りまで行けばあの女性も
見つかるだろう。
僕が立ち上がったその時、ソースを取りに行っていた和正が戻って来た。
「あれ、その子誰?」
「あ、えっと・・・」
何て言おうと必死に考えていると、照真くんが和正に駆け寄って言った。
「おれ、照真!おにーちゃんの名前は?」
「俺は和正。照真くんは、ここで何してるんだ?」
「えっとねー、冒険!」
「そっか、良いな冒険!」
ニコニコと笑う和正と照真くん。その様子を見て、兄弟みたいだね~と誠が
呟いた。
何気ない一言だったのだが、和正への質問でほぼ確信を持ってしまっていた
僕は焦る。
「も、戻りましょう!」
僕がそう言って照真くんの手を取ったその瞬間、女性の声が聞こえた。
「照真ー?何処に居るのー!?」
近くで、ドサッと音がする。ちらりと和正を見ると、青い顔をして一点を見つめて
いた。
「和正・・・」
僕の言葉に和正はハッとした顔をすると、慌てて落としたソースのボトルを拾い
上げ、テーブルに置いた。
「あ、おかーさん!!」
ニコニコと笑いながら照真くんは女性の元へ駆け出す。
女性は僕を見るとペコリと頭を下げ、その隣に居た和正に気付いたのか、目を
見開き固まった。
何だ何だと周りがざわめく。少しの沈黙の後、女性は震える声で言った。
「和、正・・・?」
女性の様子を見て、知り合い?なんて声が聞こえる。
そんな中、和正は無機質な笑顔で言った。
「・・・お久しぶりです、お母さん」
辺りが静まり返る。唯一キョトンとしていた照真くんが、おかーさん知り合い
なの?と女性の服を引っ張っていた。
「あの、私、私・・・!」
「ここだと皆の邪魔になりますし、向こうで話しませんか?」
何かを言おうとした女性に和正はそう言うと、僕達に背を向けて歩き出す。
女性と照真くんはそれに付いて行き、林の中へ消えていった。
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