異能力と妖と

彩茸

文字の大きさ
上 下
123 / 203
夏季休暇編

太陽

しおりを挟む
―――夕飯を食べて、皆で雑談して。就寝する頃には日付が変わっていた。
そして朝。目が覚めると、皆はまだ寝ているようだった。
時計を見ると、いつも通りの起床時間。二度寝する気にもならず、僕はこっそりと
テントを出る。

「おおー、早起きさん居た!」

 キャンプ場をブラブラと歩いていると、そんな声が聞こえた。
 声のした方を見ると、そこには小さな男の子が。

「おはようございます!」

 そう言ってニカッと笑う男の子に、僕も挨拶を返す。すると、男の子は僕の元に
 駆け寄って来て言った。

「おにーちゃん何してるの?」

「散歩です。・・・君は?」

「えっとねー、お散歩!早起きしたから!」

 ニコニコと笑う男の子に、何となく既視感を覚える。
 誰かに似ているような・・・。

「おにーちゃん、一緒にお散歩しよ!」

 そう言って男の子は手を差し伸べてくる。躊躇いがちに手を取ると、男の子は
 走り出した。

「え、ちょっ、良いんですか?親御さんとかは・・・」

「良いの!おかーさん寝てたし!!」

「は、はあ・・・」



―――男の子は僕を引っ張って、キャンプ場の端にある大きな池へと連れて来た。

「ここね、お日様が当たるとキラキラして綺麗なんだよ!」

 お日様~お日様~と楽しそうに笑う男の子に、僕は聞く。

「お日様、好きなんですか?」

 男の子はうん!と頷くと言った。

「あのね、おれの名前にもお日様入ってるの!だから、お日様好きなんだ!!」

「名前に?」

「うん!おれ照真しょうま!おにーちゃんは?」

「えっと・・・静也、です」

「おお、静也おにーちゃん!名前かっこいいね!!」

「あ、ありがとうございます」

 名前をかっこいいなんて言われたのは初めてだ。それにしてもこの子、何処の
 テントの子だったんだろう。
 日が当たりキラキラと輝く水面を楽しそうに眺める照真くんに、やはり既視感を
 覚える。

「そろそろ戻りませんか?親御さんが心配しますよ」

「はーい」

 行きと同じように、照真くんと手を繋いで歩く。
 照真くんと出会った辺りまで来ると、女性が心配そうな顔でキョロキョロとして
 いた。

「あ、おかーさん!!」

 そう言って照真くんはその女性に駆け寄る。

「何処行ってたの!心配したのよ?!」

 そう言って照真くんを抱きかかえた女性は、僕を見てペコリと頭を下げる。

「あのね、あのおにーちゃんとお散歩してたの!」

 ニコニコと笑う照真くんに、女性は困った表情で僕を見る。

「すみません、止めればよかったんですが・・・勢いに、負けてしまって」

「いえいえ、うちの子がご迷惑をお掛けしたようで・・・」

 苦笑いを浮かべる僕に女性はそう言うと、巻き込んじゃ駄目でしょ!と照真くんに
 言う。
 照真くんはごめんなさーいと言いながらも、女性の腕から降りて僕に駆け寄って
 来た。

「静也おにーちゃん、おれね、苗字もお日様なんだよ!」

「えっと・・・?」

 照真くんはニコッと笑うと、胸を張って言った。

「おれ、日野ひの 照真しょうま!5歳!また一緒にお散歩してね、静也おにーちゃん!」

 待て待て待て待て。偶然か?偶然であってくれ・・・!
 混乱する頭の中から必死に別れの言葉を絞り出し、僕は照真くんと別れる。
 フラフラとテントに戻ると、外でのびをしていた和正と目が合った。

「おはよう、静也・・・って、大丈夫か?」

「ああ、うん、おはよう・・・」

 僕がテントの中へ入ると、目を覚ましていた晴樹に心配される。
 晴樹の隣に座り大きな溜息を吐きながら頭を抱えると、よく分からないけどお疲れ
 と頭を撫でられた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】虐げられた令嬢の復讐劇 〜聖女より格上の妖精の愛し子で竜王様の番は私です~

大福金
ファンタジー
10歳の時、床掃除をしている時に水で足を滑らせ前世の記憶を思い出した。侯爵家令嬢ルチア 8さいの時、急に現れた義母に義姉。 あれやこれやと気がついたら部屋は義姉に取られ屋根裏に。 侯爵家の娘なのに、使用人扱い。 お母様が生きていた時に大事にしてくれた。使用人たちは皆、義母が辞めさせた。 義母が連れてきた使用人達は私を義母と一緒になってこき使い私を馬鹿にする…… このままじゃ先の人生詰んでる。 私には 前世では25歳まで生きてた記憶がある! 義母や義姉!これからは思い通りにさせないんだから! 義母達にスカッとざまぁしたり 冒険の旅に出たり 主人公が妖精の愛し子だったり。 竜王の番だったり。 色々な無自覚チート能力発揮します。 竜王様との溺愛は後半第二章からになります。 ※完結まで執筆済みです。(*´꒳`*)10万字程度。 ※後半イチャイチャ多めです♡ ※R18描写♡が入るシーンはタイトルに★マークをいれています。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される

中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。 実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。 それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。 ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。 目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。 すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。 抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……? 傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに たっぷり愛され甘やかされるお話。 このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。 修正をしながら順次更新していきます。 また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。 もし御覧頂けた際にはご注意ください。 ※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。

便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~

卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。 店主の天さんは、実は天狗だ。 もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。 「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。 神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。 仲間にも、実は大妖怪がいたりして。 コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん! (あ、いえ、ただの便利屋です。) ----------------------------- ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。 カクヨムとノベプラにも掲載しています。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

処理中です...