異能力と妖と

彩茸

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夏季休暇編

幽霊

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―――それから少し経ち、夏休み。キャンプは8月上旬に二泊三日らしく、その日
まで寮で過ごすことにした。
誠、彩音、清水さんは一旦家に帰り、現地集合するらしい。
夏休みの食堂には人がほとんどおらず、食堂の人がメニューに無くてもリクエスト
すれば何でも作ってくれるという日が何日かあった。
キャンプを前日に控えた日の昼。和正がリクエストした冷やし中華を三人で食べて
いると、和正が言った。

「晴樹には話したんだけどさ、明日行くキャンプ場、最近変な幽霊が出るらしいぜ」

「変な幽霊?」

 僕が首を傾げると、和正は頷く。

「普通の人間に見えるんだけど、いつの間にか姿を消してさ。居なくなったのかと
 思ったら近くから現れて、今度は目の前で姿を消して・・・。足も透けてないし、
 幽霊じゃないだろって書き込みもあったんだけどさ。何か面白そうじゃね?」

「・・・異能力者か妖じゃないかって、和正くんと話してた」

 和正の言葉に晴樹がそう付け加える。

「異能力者だとしたら悪質すぎるだろ・・・。妖ならまあ、脅かすのが本分みたいな
 奴もいるから何とも言えないけど」

 僕がそう言うと、晴樹が確かにと頷く。

「肝試しって名目で調査できねえかなー」

 いつの間にか冷やし中華を食べ終えていた和正が言うと、後ろから声がした。

「キャンプで肝試し?良いね、主催の子に提案しておく!」

 振り向くと、そこには僕達をキャンプに誘ったクラスメートの女子が。
 お前も居たのかよ。

「おー、じゃあよろしく!」

 和正がそう言うと、女子は楽しそうに食堂から出て行く。

「妖騒動の後から、凄い話し掛けてくるようになったんだよな・・・」

 女子が部屋を出て少ししてから僕が呟くと、晴樹が和正を見て言った。

「和正くん、何でいつもニコニコしていられるの?僕、最近疲れてきたん
 だけど・・・」

「・・・顔が広い奴は、利用するに限るからな」

 ボソッと呟いた和正に、僕だけでなく晴樹も驚いた顔をする。

「周りと仲良くするのは大事だぜ!」

 和正はそう言って、ニッコリと笑った。
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