異能力と妖と

彩茸

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梅雨編

小雨

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―――それから数週間が経った。彩音経由で、響子先輩がみなも先輩となら少しずつ
話をするようになったと知った。
それなら僕達は干渉しなくても大丈夫だろう。そう思いながら、僕はいつも通りの
生活を送る。
ある日合同授業が終わり教室へ戻ろうとすると、小雨が降っていた。

「授業前は晴れてたのに・・・」

 誠がそう言って不機嫌そうな顔をする。

「まあ、梅雨だしな。このくらいだったら、走ればそこまで濡れないだろ」

 訓練室と校舎の間には屋根が無い。雨がしっかり降っていれば諦めてびしょ濡れに
 なりながら戻るのだが、この程度だと何となく濡れたくない気持ちになる。

「今日雨降るって天気予報で言ってたじゃない。何で傘持ってないのよ」

 その声に振り向くと、彩音が傘を持って立っていた。

「見てなかったんだよ。・・・というか、彩音携帯持ってなかったよな?どうやって
 天気なんて知ったんだ」

「私、ラジオは持ってるのよ」

 僕の言葉に彩音は自慢げに言う。すると誠が彩音に駆け寄り、言った。

「彩音!お願い、傘入れて!!」

「え、まあ良いけど・・・」

 誠は嬉しそうにありがとう!と言うと、キラキラした顔で僕を見る。

「えっと・・・静也も入る?」

 彩音に聞かれ、僕は悩む。流石に三人は狭いだろと思っていると、和正の声が
 した。

「あれ、傘は?」

 声のした方を見ると、和正が傘を持って僕達を見ていた。
 丁度良い所に。僕は和正に駆け寄り、傘に入れてくれと頼む。和正は良いぜ!と
 頷くと、傘を開いた。



―――小雨の中、僕は和正の、誠は彩音の傘に入り校舎への道を歩く。

「和くんはちゃんと傘持って来たんだ~」

「ああ、晴樹が今日は雨だって朝言ってたからな」

 誠の言葉に和正はそう言うと、ちらりと僕を見る。

「・・・何だよ」

「いや、別に」

 和正はニッコリと笑うと、視線を前へ戻す。

「兄弟でも、似てない所ってあるわよね・・・」

 彩音がボソッと呟くと、誠と和正もうんうんと頷いた。

「そりゃそうだろ、別の人間なんだから。・・・そういえば、皆は兄弟いない
 のか?」

 僕がそう聞くと、皆はいないと言って首を横に振る。

「兄弟ってちょっと羨ましいんだよね」

 誠がそう言いながら、耳をぴょこぴょこと動かした。
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