異能力と妖と

彩茸

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襲撃事件編

事件

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―――晴樹と清水さんが同じ学年になったからか、学校生活は去年よりも騒がしく
なった。
晴樹はついに根負けしたらしく、清水さんを友達と認め、一緒に行動する機会が
増えていった。
6年生になった響子先輩とみなも先輩と一緒に実践授業に行くようになり、去年より
強い妖と対峙することも増えた。
充実した学校生活。・・・そんなある日のこと。

「急だけど、今から全校集会があります。皆、早く集合してね」

 朝のHR、担任の先生にそう言われた僕達は皆でぞろぞろと移動する。
 全校集会なんて始業式や終業式の時くらいしかなかったじゃないか。そんなことを
 考えながら歩いていると、暗い顔をした彩音の姿が見えた。


―――校長先生が壇上に上がり、全校集会が始まった。

「皆さんに、大切なお話があります。・・・昨日、6年生五名が亡くなりました」

 校長先生の言葉に、生徒たちはざわつく。
 教頭先生が静かに!と皆を静かにさせると、校長先生は言葉を続けた。

「現場の確認に向かった先生からの報告では、五名の生徒は対象の討伐後何者かに
 よって襲われたとのことでした。・・・このことから、犯人が見つかるまでの
 実践授業は原則禁止、寮生以外の生徒は教員が送り迎えをします。皆さんも、
 自分の安全を第一に考えて行動してください」

 校長先生が壇上から降り、それぞれの学年主任が今後の授業についての話をする。
 5年は実践授業の代わりに合同授業を行うらしい。
 全員の話が終わると、司会の先生が全校集会の終了を告げる。
 それから教室に戻るまで、誰一人言葉を発しなかった。



―――放課後、寮に戻ろうと誠と歩いていると後ろから彩音に呼び止められた。
振り向くと、真剣な顔をした彩音と同じく呼び止められたのであろう和正、晴樹、
清水さんが居た。

「・・・大事な話があるの。二人の部屋、行って良い?」

 彩音の言葉に僕と誠は頷く。
 彩音はありがとうと言うと、歩き出した。一体何の話なんだろうか。そんなことを
 考えながら、寮への道を歩く。
 僕達の部屋に入ると、彩音は胸ポケットから折りたたまれた紙を取り出した。

「これ、他の人には話さないでね」

 彩音はそう言って紙を開く。どうやら手紙のようで、僕達はそれを覗き込んだ。
 端正な字で書かれた手紙。そこに書かれていたことに僕達は言葉を失う。

 『彩音ちゃんへ

  もしかしたら迷惑を掛けてしまうかもしれないから、手紙を残します。
  今日、先生から同級生が五人死んだと聞かされました。詳しいことを尋ねる
  と、6年生の討伐数ランキング上位の班の人達でした。
  彩音ちゃんは知っているだろうけど、今の学年一位は私とみなもちゃんの班。
  だから明日、生徒を代表して先生達と現場周辺の調査に向かうことになりま
  した。
  もし私達が次の日になっても戻らなかったら、もう戻ってこないものだと
  思ってください。
  なるべく安全に調査するつもりではいますが、何だか嫌な予感がするんです。
  ・・・あはは、本当は彩音ちゃんに心配掛けるようなこと書いちゃいけない
  んだけどね。
  他の班員には伝えても良いけど、それ以外の人には黙っていてね。
  それじゃあ、行ってきます。
                                            
                                  響子』

「・・・朝、教頭先生に渡されたの。昨日預かったって・・・」

 彩音が泣きそうな顔で言う。その様子だと、まだ戻って来てはいないのだろう。

「なあ誠、先輩達をニオイで追えたりしないか・・・?」

 和正の言葉に、誠は手紙を鼻に近付けながら言った。

「うーん、無理そう。この手紙、しっかりボク対策してあるよ。花の匂いが邪魔で、
 全然分からなくなってる」

 多分和くんも分かるくらいと言って、誠は和正に手紙を差し出す。和正は手紙に
 鼻を近付けると言った。

「・・・あ、ほんとだ。何かの花みたいな匂いがする」

「きっと先輩、私達が探そうとするかもしれないこと分かってたんですね。
 ・・・待ちましょう」

 清水さんがそう言うと、晴樹も同意するように頷く。

「きっと帰って来る。だからそんな顔するなよ」

 僕の言葉に彩音はコクリと頷くと、手紙を和正から受け取って胸ポケットに
 仕舞う。

「えっと・・・皆座ってて!ボク飲み物買って来るね!」

 誠がそう言って部屋を出ると、俺も行くよと和正も部屋を出た。
 残った僕達は床に座り、誠達の帰りを待つ。清水さんが不安そうな顔で、俯いて
 いる彩音を見ていた。
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