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霧ヶ山編
顔無
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―――次の日目が覚めると、隣の布団で寝ていたはずの晴樹が僕の布団の中に居た。
「うわっ」
僕が驚いて声を上げると、晴樹は薄っすらと目を開ける。
「あれ、静兄・・・?何で、同じ布団に・・・」
「いや、こっちの台詞なんだけど」
寝ぼけ声の晴樹にそう言うと、晴樹は眠そうに目を擦りながら起き上がる。
暫くボーっとしていた晴樹だが、突然ハッとした顔になり僕を見た。
「うわ、ご、ごめん」
晴樹は少し恥ずかしそうに頬を染めると、慌てて僕の布団から出る。
「昨日の夜、寒かったもんな」
僕がそう言って笑うと、晴樹は顔を背けて小さく頷いた。
―――朝食を食べながら、今日の予定について話し合う。
「晴樹は何かしたいこととかないのか?」
僕がそう聞くと、晴樹は首を横に振る。
「・・・静兄は、何かやりたいことあるの?」
「いや、特には・・・」
少しの間沈黙が流れる。今まで春休み何してたっけな・・・と考えていると、
晴樹が言った。
「・・・あ、思い出した」
「え?」
「そういえば僕、柊に戻って来たこと伝えてない」
確かに夏休みの間晴樹は基本僕と居たから、柊と話す機会が無かった。
行ってこいよと言うと、晴樹は困ったように首を傾げて言った。
「・・・でも僕、柊の家知らない」
「え、今までどうやって会ってたんだよ」
「柊が僕を探して会いに来てたから・・・」
「ああ、なるほど・・・」
森に住んでるのは聞いたことがあると言った晴樹に、それならと赤芽の所に行く
ことを提案する。
「静兄も付いて来て」
特に用事も無いので、僕は頷く。
朝食を食べ終わった後、僕と晴樹は赤芽の住んでいる所へ向かった。
―――赤芽の住処に着くと、猫の姿の赤芽がひょっこりと顔を出す。
「あら、おはよう。・・・と、おかえりなさい。何か用事?」
「おはよう。・・・あのさ、柊の家知らないか?」
僕がそう聞くと、赤芽は少し悩んで言った。
「柊って、豆狸の柊よね?・・・確かあの子、この前引っ越したのよ」
「え、何処に?」
晴樹の問いに赤芽は獣人の姿に変化すると、木々の隙間から見える高い山を
指さす。
「・・・霧ヶ山?」
僕がそう言うと、赤芽は頷いて言った。
「だから私より、天春・・・いや、天春は絶対興味ないわね。天狗さんの方が
詳しいんじゃないかしら」
僕と晴樹は顔を見合わせ、赤芽にお礼を言って立ち去る。
家に戻る途中で天春に電話を掛け、家の前まで迎えに来てもらった。
―――天春の妖術で、霧ヶ山のお堂へ向かう。
強い風が止み目を開けると、目の前にお堂の前を箒で掃いているのっぺらぼうが
居た。
「・・・何の用ダ」
のっぺらぼうは僕達を見ると、嫌そうな顔をした気がした。
「お父さんに用事なんだって」
天春がそう言うと、のっぺらぼうは箒を動かす手を止めてお堂を指さす。
「天狗なら、中で読書中だゾ」
そう言ったのっぺらぼうにぺこりと頭を下げつつ、僕達はお堂の扉を開ける。
中に入る前にちらりとのっぺらぼうを見ると、再びお堂の前を掃いていた。
「・・・のっぺらぼう、何で掃除してるの?」
晴樹が天春に小さな声で聞くと、天春も小さな声で答えた。
「夏に晴が戻って来た後にね、お父さんが命を保証する代わりに雑用係としてここで
暮らせって。のっぺらぼう、お父さんと狗神さんに逆らえないから、大人しく条件
飲んでたよ」
「僕と和正を襲ったばっかりに・・・」
「あはは・・・」
天春は苦笑いを浮かべると、まあそれが妖ってものだからと呟いた。
狭いように見えて意外と広いお堂の隅で、天狗さんが本を読んでいる。そちらを
見ると、天狗さんが顔を上げて言った。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
僕と晴樹が声を揃えて言うと、天狗さんはニッコリと笑う。
「昨日、天檎の実のジュース作ったんだ!持って来るから座ってて!」
天春がそう言って台所へ駆けて行く。
僕と晴樹は天狗さんの傍まで行くと、その場に座って天春が戻るのを待っていた。
「うわっ」
僕が驚いて声を上げると、晴樹は薄っすらと目を開ける。
「あれ、静兄・・・?何で、同じ布団に・・・」
「いや、こっちの台詞なんだけど」
寝ぼけ声の晴樹にそう言うと、晴樹は眠そうに目を擦りながら起き上がる。
暫くボーっとしていた晴樹だが、突然ハッとした顔になり僕を見た。
「うわ、ご、ごめん」
晴樹は少し恥ずかしそうに頬を染めると、慌てて僕の布団から出る。
「昨日の夜、寒かったもんな」
僕がそう言って笑うと、晴樹は顔を背けて小さく頷いた。
―――朝食を食べながら、今日の予定について話し合う。
「晴樹は何かしたいこととかないのか?」
僕がそう聞くと、晴樹は首を横に振る。
「・・・静兄は、何かやりたいことあるの?」
「いや、特には・・・」
少しの間沈黙が流れる。今まで春休み何してたっけな・・・と考えていると、
晴樹が言った。
「・・・あ、思い出した」
「え?」
「そういえば僕、柊に戻って来たこと伝えてない」
確かに夏休みの間晴樹は基本僕と居たから、柊と話す機会が無かった。
行ってこいよと言うと、晴樹は困ったように首を傾げて言った。
「・・・でも僕、柊の家知らない」
「え、今までどうやって会ってたんだよ」
「柊が僕を探して会いに来てたから・・・」
「ああ、なるほど・・・」
森に住んでるのは聞いたことがあると言った晴樹に、それならと赤芽の所に行く
ことを提案する。
「静兄も付いて来て」
特に用事も無いので、僕は頷く。
朝食を食べ終わった後、僕と晴樹は赤芽の住んでいる所へ向かった。
―――赤芽の住処に着くと、猫の姿の赤芽がひょっこりと顔を出す。
「あら、おはよう。・・・と、おかえりなさい。何か用事?」
「おはよう。・・・あのさ、柊の家知らないか?」
僕がそう聞くと、赤芽は少し悩んで言った。
「柊って、豆狸の柊よね?・・・確かあの子、この前引っ越したのよ」
「え、何処に?」
晴樹の問いに赤芽は獣人の姿に変化すると、木々の隙間から見える高い山を
指さす。
「・・・霧ヶ山?」
僕がそう言うと、赤芽は頷いて言った。
「だから私より、天春・・・いや、天春は絶対興味ないわね。天狗さんの方が
詳しいんじゃないかしら」
僕と晴樹は顔を見合わせ、赤芽にお礼を言って立ち去る。
家に戻る途中で天春に電話を掛け、家の前まで迎えに来てもらった。
―――天春の妖術で、霧ヶ山のお堂へ向かう。
強い風が止み目を開けると、目の前にお堂の前を箒で掃いているのっぺらぼうが
居た。
「・・・何の用ダ」
のっぺらぼうは僕達を見ると、嫌そうな顔をした気がした。
「お父さんに用事なんだって」
天春がそう言うと、のっぺらぼうは箒を動かす手を止めてお堂を指さす。
「天狗なら、中で読書中だゾ」
そう言ったのっぺらぼうにぺこりと頭を下げつつ、僕達はお堂の扉を開ける。
中に入る前にちらりとのっぺらぼうを見ると、再びお堂の前を掃いていた。
「・・・のっぺらぼう、何で掃除してるの?」
晴樹が天春に小さな声で聞くと、天春も小さな声で答えた。
「夏に晴が戻って来た後にね、お父さんが命を保証する代わりに雑用係としてここで
暮らせって。のっぺらぼう、お父さんと狗神さんに逆らえないから、大人しく条件
飲んでたよ」
「僕と和正を襲ったばっかりに・・・」
「あはは・・・」
天春は苦笑いを浮かべると、まあそれが妖ってものだからと呟いた。
狭いように見えて意外と広いお堂の隅で、天狗さんが本を読んでいる。そちらを
見ると、天狗さんが顔を上げて言った。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
僕と晴樹が声を揃えて言うと、天狗さんはニッコリと笑う。
「昨日、天檎の実のジュース作ったんだ!持って来るから座ってて!」
天春がそう言って台所へ駆けて行く。
僕と晴樹は天狗さんの傍まで行くと、その場に座って天春が戻るのを待っていた。
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