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霧ヶ山編
墓参
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―――それから数日後、進級試験を終えた僕、晴樹、和正、誠、彩音は朝の食堂で
春休みの予定を話す。
今年は誠も補習にかかることなく、平穏な春休みを迎えることができそうだ。
「去年家に帰ったら来年も帰っておいでって言われたから、今年は自分の家に
帰るよ。・・・皆も来る?」
誠がそう言って僕達を見たので、僕は首を横に振った。
「・・・僕は、静兄と家に帰るから」
晴樹もそう言って首を横に振る。
「私は実家で巫女の仕事があるから」
彩音がそう言って首を横に振ると、誠はそっかあとしょんぼりした顔をする。
「俺行こうかな・・・」
和正がそう言うと、誠はパッと嬉しそうな顔をした。
「おいで!!今年はちゃんと帰る連絡するから、大歓迎してくれると思うよ!」
誠はそう言って耳をぴょこぴょこと動かす。誠に尻尾は生えていないが、何となく
ブンブンと尻尾を振っているように感じられた。
―――春休みが始まり、僕と晴樹は実家に帰省する。今年はちゃんと連絡しておいた
ので、赤芽に怒られることもないだろう。
晴樹の提案で、電車に乗ってのんびりと家に帰る。途中買い物をしたりと寄り道を
していたら、家に着く頃には日が沈んでいた。
「あ、鍵穴見えねえ」
僕がそう呟くと、晴樹が光を作り出し手元を照らしてくれる。
ありがとうとお礼を言うと、晴樹は少し嬉しそうにうんと頷いた。
鍵を開け、中に入り、電気を点ける。家に帰るのは半年ぶりだが、小妖怪達が
こまめに掃除をしてくれているのか、家の中は綺麗だった。
「・・・ねえ静兄。あの世って、あるのかな」
お墓に買った花を供え手を合わせた後、晴樹が言う。
「さあな。・・・でも父さんと母さんのことだから、僕達を心配してまだこの世に
残ってたりしてな」
「・・・じゃあ、心配させないように僕達強くならなきゃね」
「・・・・・・ああ、そうだな」
冷たい風が頬を撫でる。・・・僕は、僕達は強くならなきゃいけない。
力の強さだけじゃない。自分の心も、強く。
「さ、ご飯にしよう。手伝ってくれるか?」
「うん、分かった」
僕は晴樹を連れて家の中へと入る。
カセットコンロも買ったし、今日は鍋にしよう。そんなことを考えながら、僕は
台所へ向かった。
春休みの予定を話す。
今年は誠も補習にかかることなく、平穏な春休みを迎えることができそうだ。
「去年家に帰ったら来年も帰っておいでって言われたから、今年は自分の家に
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「・・・僕は、静兄と家に帰るから」
晴樹もそう言って首を横に振る。
「私は実家で巫女の仕事があるから」
彩音がそう言って首を横に振ると、誠はそっかあとしょんぼりした顔をする。
「俺行こうかな・・・」
和正がそう言うと、誠はパッと嬉しそうな顔をした。
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誠はそう言って耳をぴょこぴょこと動かす。誠に尻尾は生えていないが、何となく
ブンブンと尻尾を振っているように感じられた。
―――春休みが始まり、僕と晴樹は実家に帰省する。今年はちゃんと連絡しておいた
ので、赤芽に怒られることもないだろう。
晴樹の提案で、電車に乗ってのんびりと家に帰る。途中買い物をしたりと寄り道を
していたら、家に着く頃には日が沈んでいた。
「あ、鍵穴見えねえ」
僕がそう呟くと、晴樹が光を作り出し手元を照らしてくれる。
ありがとうとお礼を言うと、晴樹は少し嬉しそうにうんと頷いた。
鍵を開け、中に入り、電気を点ける。家に帰るのは半年ぶりだが、小妖怪達が
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お墓に買った花を供え手を合わせた後、晴樹が言う。
「さあな。・・・でも父さんと母さんのことだから、僕達を心配してまだこの世に
残ってたりしてな」
「・・・じゃあ、心配させないように僕達強くならなきゃね」
「・・・・・・ああ、そうだな」
冷たい風が頬を撫でる。・・・僕は、僕達は強くならなきゃいけない。
力の強さだけじゃない。自分の心も、強く。
「さ、ご飯にしよう。手伝ってくれるか?」
「うん、分かった」
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台所へ向かった。
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