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後輩編
犬狐
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―――絞蛇との戦いから、3日。完全に回復した僕は、いつも通りの時間に起き、
いつも通りの時間に教室へと向かう。
席に着くと、数名のクラスメートが僕の元へやって来た。
「山霧くん、もう大丈夫なの?」
「毒食らって倒れたって聞いたけど・・・」
クラスメートに心配され、僕は苦笑いを浮かべる。
「もう大丈夫です。心配掛けてすみません・・・」
僕の言葉にクラスメートは安堵の表情を浮かべる。優しい人達だなあ・・・なんて
思っていると、教室の扉がガラリと開いた。
「笹野、昨日貸したノート・・・うわ、山霧が居る」
山野が顔を覗かせ、僕を見て嫌そうな顔をする。
「・・・何ですか、居たら悪いですか」
僕がそう言うと、山野は馬鹿にするように言った。
「別に?お前って案外しぶといんだな。毒でくたばったもんだと思ってたよ」
「喧嘩売ってます?」
「あ、朝から喧嘩はやめてくださいね・・・?」
僕と山野が睨み合うと、笹野くんが慌てて止めに入る。
その時、廊下から僕を呼ぶ声がした。
誰だと教室から顔を覗かせると、B組の名前も知らない男子が僕を手招きする。
「何かありました?」
そう言いながら男子の元へ向かうと、清水さんが立っていた。
「あ、山霧くんのお兄さん!あの、山霧くん見てませんか?」
清水さんの言葉に、僕は首を傾げる。その隣で、僕を呼んだ男子が山霧って弟
いたんだな・・・と呟いた。
「僕は見てないですけど・・・。僕より、和正の方が詳しいんじゃないですか?
ルームメイトですし」
「それが、日野先輩もいないんです。山霧くん、いつもこの時間には教室に居るはず
なのに・・・」
晴樹と和正は一体何処に行ったんだろうか?
僕は清水さんを連れて、C組を訪れる。教室を覗くと、彩音と目が合った。
「何かあった?」
彩音がそう言いながら僕達に近付いて来る。その後ろから、誠もやって来た。
「晴樹と和正見てないか?」
僕がそう聞くと、二人は首を傾げる。すると、誠が鼻をスンと動かして言った。
「・・・あれ、火薬のにおいがする」
「え、何処から?」
彩音の言葉に誠は外を指さす。窓から誠の指さした方向を見てみると、訓練室が
あった。
「あー・・・行ってみます?」
僕が清水さんに聞くと、彼女はコクリと頷く。
僕と清水さんは、誠、彩音、そして何人かの野次馬を連れて訓練室へ向かった。
―――訓練室の扉を開けると、犬と狐が舞っていた。・・・いや、正しくは黒い犬の
お面を被った和正と黒い狐のお面を被った晴樹が、銃を撃ち合って戦っていたのだ。
「何あれ、凄い・・・」
「日野と撃ち合ってるの、誰だ?」
「多分、山霧の弟なんじゃねえかな」
「えっ、山霧くん弟いたの?」
銃弾を避け、銃を撃ち・・・まるでひらりひらりと舞う蝶のように戦う和正と
晴樹を見て、野次馬達がコソコソと話す。
おおーと言う声が聞こえたのでちらりと誠と清水さんを見ると、二人は目を
キラキラと輝かせていた。
「ねえ静也。あのお面、夏祭りの時のよね?」
彩音がそう言って僕を見る。僕は頷くと、丁度互いに銃口を向け合った和正と晴樹
に大きな声で言った。
「そこまで!!」
和正と晴樹はビクッと肩を震わせる。二人はお面を外すと、僕達を見た。
「あれ、お前らどうしたんだ?」
「うわ、何かいっぱい居る・・・」
和正は首を傾げ、晴樹は嫌そうな顔をする。
「和くん、時間時間」
誠がそう言って壁に掛けられた時計を指さす。HRの時間まで、あと10分だった。
「うお、もうこんな時間?!」
和正は驚いた声を上げると、慌てて部屋の隅に置いてあった鞄からタオルを取り
出し、晴樹に投げ渡した。
「静兄達はともかく・・・何で君まで居るんだよ」
晴樹がタオルで汗を拭きながら、清水さんを見る。
「山霧くんを探しに来たの。先生が、今日の合同授業は私と山霧くん代表戦除外
だって伝えておいてって」
「除外?そんなことあるのね」
清水さんの言葉に彩音が言うと、清水さんは納得がいかないといった表情で
言った。
「代表戦、毎回私と山霧くんは出場してたんですけど・・・。何か、ほぼ二人の力
だけで全勝してたら担任の先生が他のクラスの先生に怒られちゃったらしくて。
たまには他のメンバーもって・・・」
「・・・他の人が弱いだけなのに」
晴樹がボソッと呟く。
「やっぱり適度にサボるのが一番だよ~」
誠がそう言うと、それは嫌と晴樹が首を横に振った。
―――野次馬達を解散させた後、僕達は廊下を歩く。この後3年の合同授業がある
ため、鍵はそのままで良いらしい。
「そういえば、何でお面なんかしてたの?」
ふと彩音が聞くと、和正が言った。
「晴樹が、視界悪い状態で戦ってみたいって言ったからさ。お面あるじゃんって
なって」
「僕に言ってくれれば、霧出したのに」
僕がそう言うと、晴樹が小さく呟いた。
「・・・病み上がりの静兄に能力使わせるの、何か申し訳ない」
「お兄ちゃん思いだね~」
誠がそう言って笑う。
「銃使ってましたけど、怪我とかしてないんですか?」
清水さんが和正に聞くと、和正は頷いて言った。
「この前、校長先生にゴム弾貰ったんだよ。今日はそれ使ったから、当たったら
痛いけど怪我はしないって感じでやってた」
「・・・そもそも、当てないように撃ってたし」
晴樹の言葉に、和正は頷く。そんな器用なことをしてたのかと、僕は感心した。
いつも通りの時間に教室へと向かう。
席に着くと、数名のクラスメートが僕の元へやって来た。
「山霧くん、もう大丈夫なの?」
「毒食らって倒れたって聞いたけど・・・」
クラスメートに心配され、僕は苦笑いを浮かべる。
「もう大丈夫です。心配掛けてすみません・・・」
僕の言葉にクラスメートは安堵の表情を浮かべる。優しい人達だなあ・・・なんて
思っていると、教室の扉がガラリと開いた。
「笹野、昨日貸したノート・・・うわ、山霧が居る」
山野が顔を覗かせ、僕を見て嫌そうな顔をする。
「・・・何ですか、居たら悪いですか」
僕がそう言うと、山野は馬鹿にするように言った。
「別に?お前って案外しぶといんだな。毒でくたばったもんだと思ってたよ」
「喧嘩売ってます?」
「あ、朝から喧嘩はやめてくださいね・・・?」
僕と山野が睨み合うと、笹野くんが慌てて止めに入る。
その時、廊下から僕を呼ぶ声がした。
誰だと教室から顔を覗かせると、B組の名前も知らない男子が僕を手招きする。
「何かありました?」
そう言いながら男子の元へ向かうと、清水さんが立っていた。
「あ、山霧くんのお兄さん!あの、山霧くん見てませんか?」
清水さんの言葉に、僕は首を傾げる。その隣で、僕を呼んだ男子が山霧って弟
いたんだな・・・と呟いた。
「僕は見てないですけど・・・。僕より、和正の方が詳しいんじゃないですか?
ルームメイトですし」
「それが、日野先輩もいないんです。山霧くん、いつもこの時間には教室に居るはず
なのに・・・」
晴樹と和正は一体何処に行ったんだろうか?
僕は清水さんを連れて、C組を訪れる。教室を覗くと、彩音と目が合った。
「何かあった?」
彩音がそう言いながら僕達に近付いて来る。その後ろから、誠もやって来た。
「晴樹と和正見てないか?」
僕がそう聞くと、二人は首を傾げる。すると、誠が鼻をスンと動かして言った。
「・・・あれ、火薬のにおいがする」
「え、何処から?」
彩音の言葉に誠は外を指さす。窓から誠の指さした方向を見てみると、訓練室が
あった。
「あー・・・行ってみます?」
僕が清水さんに聞くと、彼女はコクリと頷く。
僕と清水さんは、誠、彩音、そして何人かの野次馬を連れて訓練室へ向かった。
―――訓練室の扉を開けると、犬と狐が舞っていた。・・・いや、正しくは黒い犬の
お面を被った和正と黒い狐のお面を被った晴樹が、銃を撃ち合って戦っていたのだ。
「何あれ、凄い・・・」
「日野と撃ち合ってるの、誰だ?」
「多分、山霧の弟なんじゃねえかな」
「えっ、山霧くん弟いたの?」
銃弾を避け、銃を撃ち・・・まるでひらりひらりと舞う蝶のように戦う和正と
晴樹を見て、野次馬達がコソコソと話す。
おおーと言う声が聞こえたのでちらりと誠と清水さんを見ると、二人は目を
キラキラと輝かせていた。
「ねえ静也。あのお面、夏祭りの時のよね?」
彩音がそう言って僕を見る。僕は頷くと、丁度互いに銃口を向け合った和正と晴樹
に大きな声で言った。
「そこまで!!」
和正と晴樹はビクッと肩を震わせる。二人はお面を外すと、僕達を見た。
「あれ、お前らどうしたんだ?」
「うわ、何かいっぱい居る・・・」
和正は首を傾げ、晴樹は嫌そうな顔をする。
「和くん、時間時間」
誠がそう言って壁に掛けられた時計を指さす。HRの時間まで、あと10分だった。
「うお、もうこんな時間?!」
和正は驚いた声を上げると、慌てて部屋の隅に置いてあった鞄からタオルを取り
出し、晴樹に投げ渡した。
「静兄達はともかく・・・何で君まで居るんだよ」
晴樹がタオルで汗を拭きながら、清水さんを見る。
「山霧くんを探しに来たの。先生が、今日の合同授業は私と山霧くん代表戦除外
だって伝えておいてって」
「除外?そんなことあるのね」
清水さんの言葉に彩音が言うと、清水さんは納得がいかないといった表情で
言った。
「代表戦、毎回私と山霧くんは出場してたんですけど・・・。何か、ほぼ二人の力
だけで全勝してたら担任の先生が他のクラスの先生に怒られちゃったらしくて。
たまには他のメンバーもって・・・」
「・・・他の人が弱いだけなのに」
晴樹がボソッと呟く。
「やっぱり適度にサボるのが一番だよ~」
誠がそう言うと、それは嫌と晴樹が首を横に振った。
―――野次馬達を解散させた後、僕達は廊下を歩く。この後3年の合同授業がある
ため、鍵はそのままで良いらしい。
「そういえば、何でお面なんかしてたの?」
ふと彩音が聞くと、和正が言った。
「晴樹が、視界悪い状態で戦ってみたいって言ったからさ。お面あるじゃんって
なって」
「僕に言ってくれれば、霧出したのに」
僕がそう言うと、晴樹が小さく呟いた。
「・・・病み上がりの静兄に能力使わせるの、何か申し訳ない」
「お兄ちゃん思いだね~」
誠がそう言って笑う。
「銃使ってましたけど、怪我とかしてないんですか?」
清水さんが和正に聞くと、和正は頷いて言った。
「この前、校長先生にゴム弾貰ったんだよ。今日はそれ使ったから、当たったら
痛いけど怪我はしないって感じでやってた」
「・・・そもそも、当てないように撃ってたし」
晴樹の言葉に、和正は頷く。そんな器用なことをしてたのかと、僕は感心した。
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