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後輩編
反省
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―――目が覚めると、保健室のベッドの上だった。上体を起こそうとするも、体が
言う事を聞かない。
「あー・・・」
やってしまった、と思う。遠くから晴樹か和正に撃ってもらうべきだった。
・・・あんなに慌てた顔の晴樹、久々に見たな。そんな事を考えていると、扉の
開く音がした。
顔をそちらに向けると、和正が安心したような顔をして近付いて来る。
「良かった、目え覚めたんだな」
「・・・ごめん」
僕が謝ると、和正は気にするなと言って僕の頭を撫でた。
「絞蛇、あの後どうなった?」
「塵になって消えたよ。牙だけ残ってたから、それ持って帰って証明にした」
「そっか・・・」
少しの間、沈黙が流れる。何となく気まずく感じていると、和正が言った。
「・・・討伐報告、誠と彩音がしてくれたんだけどさ。あいつら、凄い剣幕で先生に
詰め寄ってたよ。絞蛇の毒については先生も知らなかったらしくて、静也のこと
聞いて顔面蒼白になってた。あとは・・・ああ、そういえば」
和正はそこで一旦言葉を止めると、保健室の先生が普段座っている椅子を持って
来て僕の隣に座った。
「晴樹、心配してたぞ。お前が呼んでも揺すっても全く起きないから、半泣きに
なってた」
「晴樹が?」
「俺らもかなり焦ってたけどさ、晴樹が一番焦ってたんだろうな。いつもの無表情は
何処へやらってくらい、学園に戻る途中もずっと泣きそうな顔してたよ」
「・・・後で、謝らなきゃ」
「ははっ、多分謝るよりもお礼言った方が良いと思うぞ?」
「え?」
「晴樹な、保健室の先生連れて解毒作用のある薬草探しに行ってるんだよ。この学校
には毒を作る異能力者は居ても、解毒の能力を持った人は居なくてな。誠も緩和
程度しかできないって言ってたし・・・」
「今まで毒食らった人いなかったのか・・・?」
「いや?その時は元々毒を持ってる妖だって分かってたから、専用の解毒薬を用意
してたらしいぜ。保健室の先生曰く、毒によって使える薬が違うんだってさ」
「へー・・・」
絞蛇の毒の存在は先生も知らなかった。
突然毒を持ったのか、元々毒を持っていたが気付かれなかったのか・・・今と
なっては過ぎた事だが、改めて妖の恐ろしさを体感した気がする。
「そういえば、他の皆は無事だったのか?」
僕がそう聞くと、和正は頷いて言った。
「清水さんがちょっと血に触って体調崩してたけど、誠の治癒術で何とかなるレベル
だった。他はいつも通り、大して怪我もなかったよ」
「そっか、良かった」
「お前なあ、自分が一番重症なんだからな?さっきから思ってたけど、体動かないん
だろ?」
「まあ、うん・・・」
「他に症状は?」
「えっと・・・今は、少し吐き気がする程度」
「・・・言っとくが、誠が治癒術を掛けてそれだからな」
少し怒っているような和正にごめんと謝ると、大きな溜息を吐かれた。
「晴樹達が戻って来るまでもう少し寝てろ、俺が起こしてやるから」
和正がそう言って僕の頭を優しく撫でる。ずっと撫でられていると、眠気が襲って
来た。
「おやすみ」
和正の優しい声に安心感を覚えながら、僕は眠りについた。
言う事を聞かない。
「あー・・・」
やってしまった、と思う。遠くから晴樹か和正に撃ってもらうべきだった。
・・・あんなに慌てた顔の晴樹、久々に見たな。そんな事を考えていると、扉の
開く音がした。
顔をそちらに向けると、和正が安心したような顔をして近付いて来る。
「良かった、目え覚めたんだな」
「・・・ごめん」
僕が謝ると、和正は気にするなと言って僕の頭を撫でた。
「絞蛇、あの後どうなった?」
「塵になって消えたよ。牙だけ残ってたから、それ持って帰って証明にした」
「そっか・・・」
少しの間、沈黙が流れる。何となく気まずく感じていると、和正が言った。
「・・・討伐報告、誠と彩音がしてくれたんだけどさ。あいつら、凄い剣幕で先生に
詰め寄ってたよ。絞蛇の毒については先生も知らなかったらしくて、静也のこと
聞いて顔面蒼白になってた。あとは・・・ああ、そういえば」
和正はそこで一旦言葉を止めると、保健室の先生が普段座っている椅子を持って
来て僕の隣に座った。
「晴樹、心配してたぞ。お前が呼んでも揺すっても全く起きないから、半泣きに
なってた」
「晴樹が?」
「俺らもかなり焦ってたけどさ、晴樹が一番焦ってたんだろうな。いつもの無表情は
何処へやらってくらい、学園に戻る途中もずっと泣きそうな顔してたよ」
「・・・後で、謝らなきゃ」
「ははっ、多分謝るよりもお礼言った方が良いと思うぞ?」
「え?」
「晴樹な、保健室の先生連れて解毒作用のある薬草探しに行ってるんだよ。この学校
には毒を作る異能力者は居ても、解毒の能力を持った人は居なくてな。誠も緩和
程度しかできないって言ってたし・・・」
「今まで毒食らった人いなかったのか・・・?」
「いや?その時は元々毒を持ってる妖だって分かってたから、専用の解毒薬を用意
してたらしいぜ。保健室の先生曰く、毒によって使える薬が違うんだってさ」
「へー・・・」
絞蛇の毒の存在は先生も知らなかった。
突然毒を持ったのか、元々毒を持っていたが気付かれなかったのか・・・今と
なっては過ぎた事だが、改めて妖の恐ろしさを体感した気がする。
「そういえば、他の皆は無事だったのか?」
僕がそう聞くと、和正は頷いて言った。
「清水さんがちょっと血に触って体調崩してたけど、誠の治癒術で何とかなるレベル
だった。他はいつも通り、大して怪我もなかったよ」
「そっか、良かった」
「お前なあ、自分が一番重症なんだからな?さっきから思ってたけど、体動かないん
だろ?」
「まあ、うん・・・」
「他に症状は?」
「えっと・・・今は、少し吐き気がする程度」
「・・・言っとくが、誠が治癒術を掛けてそれだからな」
少し怒っているような和正にごめんと謝ると、大きな溜息を吐かれた。
「晴樹達が戻って来るまでもう少し寝てろ、俺が起こしてやるから」
和正がそう言って僕の頭を優しく撫でる。ずっと撫でられていると、眠気が襲って
来た。
「おやすみ」
和正の優しい声に安心感を覚えながら、僕は眠りについた。
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