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聖夜祭編
不穏
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―――遊戯室に着くと、僕達は山野の言った場所で置時計を探す。
窓際の右奥は先程兎と戦った所為で、かなりの量の瓦礫が散乱していた。それで和正
だけじゃなく僕達まで行けと言われたのかと納得する。
「・・・ん?なあ静也、置時計ってこれか?」
瓦礫をどかしていた和正が、押しつぶされて完全に壊れている時計を持って僕の
元に来る。
「あー、形状的にもそれっぽいな」
「おお!よし、戻るか!晴樹ー、見つかったから戻るぞー」
和正がそう言って晴樹の方を見る。晴樹は持っていた瓦礫をその辺に投げると
頷いた。
部屋を出ようと足を踏み出した時、ふと後ろが気になった。本当に何となく、
僕は後ろを振り返る。
「・・・あれ?」
目に入った大きな兎の死骸に違和感を覚え、近付く。
よく見ると横になっていたはずの兎は仰向けに倒れており、お腹は何者かによって
抉られていた。
「あれ、こいつこんな感じだったっけ?」
そう言いながら和正が僕の横から顔を覗かせる。そして彼は何気なく呟いた。
「お、こいつメスだ」
何故だろう、心がざわつく。ちらりと晴樹を見ると、晴樹も何かを感じたのか
僕の袖を握って言った。
「・・・静兄、どうしよう。僕、変な想像しちゃった」
あの日の光景がフラッシュバックしそうになり、慌てて僕は兎から目を背ける。
「行こう、遅くなったら山野に悪態を吐かれそうだ」
そう言って歩き出した僕に、和正が心配そうな声で言った。
「何か・・・あったのか?」
「大丈夫、何もないから」
「・・・何も、ないと良いね」
僕と晴樹の言葉に、和正は首を傾げる。
そのまま僕達は会議室へと戻り、山野に壊れた置時計を渡した。
物を探していた子供達も全員戻り、クリスマスパーティーは子供達の笑顔と共に
終わりを迎えるのだった。
窓際の右奥は先程兎と戦った所為で、かなりの量の瓦礫が散乱していた。それで和正
だけじゃなく僕達まで行けと言われたのかと納得する。
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「おお!よし、戻るか!晴樹ー、見つかったから戻るぞー」
和正がそう言って晴樹の方を見る。晴樹は持っていた瓦礫をその辺に投げると
頷いた。
部屋を出ようと足を踏み出した時、ふと後ろが気になった。本当に何となく、
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よく見ると横になっていたはずの兎は仰向けに倒れており、お腹は何者かによって
抉られていた。
「あれ、こいつこんな感じだったっけ?」
そう言いながら和正が僕の横から顔を覗かせる。そして彼は何気なく呟いた。
「お、こいつメスだ」
何故だろう、心がざわつく。ちらりと晴樹を見ると、晴樹も何かを感じたのか
僕の袖を握って言った。
「・・・静兄、どうしよう。僕、変な想像しちゃった」
あの日の光景がフラッシュバックしそうになり、慌てて僕は兎から目を背ける。
「行こう、遅くなったら山野に悪態を吐かれそうだ」
そう言って歩き出した僕に、和正が心配そうな声で言った。
「何か・・・あったのか?」
「大丈夫、何もないから」
「・・・何も、ないと良いね」
僕と晴樹の言葉に、和正は首を傾げる。
そのまま僕達は会議室へと戻り、山野に壊れた置時計を渡した。
物を探していた子供達も全員戻り、クリスマスパーティーは子供達の笑顔と共に
終わりを迎えるのだった。
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