異能力と妖と

彩茸

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聖夜祭編

感謝

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―――会議室に着くと、子供達が心配そうな顔をして僕達を迎えた。

「だ、大丈夫だった・・・?」

 年長者らしき少女がそう言いながら山野に近付いて来る。

「ああ、侵入者は退治したよ」

 山野がそう言うと、子供達から歓声が上がった。
 勇人お兄ちゃんありがとうなんて声が次々と聞こえてくる中、山野は袋を置いて
 言った。

「皆、怖い思いさせて悪かったな。・・・退治に協力してくれた、そこの兄ちゃん
 姉ちゃんにもお礼言っとけ」

 子供達は僕達に群がると、口々に感謝の言葉を述べる。
 誠の所に先程耳を触っていた子供達が駆け寄り、腕の事を心配していた。誠は少し
 嬉しそうに耳をぴょこぴょこと動かす。

「大丈夫だよ!」

 誠がそう言うと、子供達は良かったぁと安心したように言った。

「・・・耳、気にしないんだ?」

 晴樹が誠に群がる子供達を見ながら、意外そうな声で呟く。

「まあ、小さい子はそんな些細な違いで恐れたりはしないもんなんだろ」

 僕がそう言うと、晴樹はふーん・・・と言って不思議そうな顔をした。

「さて皆さん、本日最後のイベントです」

 笹野くんが皆に向かって言うと、子供達は目を輝かせる。
 笹野くんが山野に目配せすると、山野は大きな袋の中からA4サイズのノートを
 取り出して言った。

「今年来たばかりの奴もいるからな、改めて説明するぞ。今から『クリスマス
 プレゼント争奪戦』を行う。ルールは簡単、今からオレが言う物をこの建物内から
 見つけ出し、ここに持ち帰って来た奴から順番にプレゼントを渡していく。
 良い物が欲しかったら、早く帰ってこい。能力の使用は禁止、勿論喧嘩も禁止、
 持って来る物は一人一つだ。ルール違反を見つけ次第、そいつのプレゼントは没収
 だからな。・・・分かったか?」

 山野の言葉に、子供達ははーい!と元気よく返事をする。
 山野はノートを開き、子供達一人一人に課題の物を伝えていく。子供達が全員
 部屋を出て行ったのを見届けてから、僕は山野に聞いた。

「何でこんな遠回りな事をするんですか?」

「・・・ここだけの話、さっき言った物は全部処分品なんだ。大掃除の時に一気に
 捨てるのも良いんだが、こうやって集めさせる事でオレらの負担を軽くしてるん
 だよ」

「え、山野くん大掃除の手伝いもしてるの?」

 誠が驚いて山野を見る。山野は頷くと、笹野もだよと笹野くんを指さした。

「流石に、ここの担当の先生だけでは人数が足りませんからね・・・」

 苦笑する笹野くんに、大変なのね・・・と彩音が言った。

「俺やる事ねえし、何か持ってこようか?」

 和正がそう言って山野のノートを覗き込む。山野はパラパラとページをめくると、
 これ持って来てくれと指さした。
 そこに書かれていたものを見て、和正は首を傾げる。気になったので僕もノートを
 覗くと、そこには『遊戯室の置時計』と書かれていた。

「置時計なんてあったか?」

 和正の言葉に山野は頷くと、僕を見て言った。

「山霧、お前も日野を手伝いに行け」

「え?まあ、行きますけど・・・」

 何で僕も?と首を傾げると、山野は行ったら分かると小さく呟いた。

「置時計の場所は、窓際の右奥だ。そうだな・・・おい、お前」

 山野が晴樹を見ると、晴樹は首を傾げる。

「お前も山霧と日野と一緒に行ってこい。人数いた方が効率的だろう」

「・・・僕も山霧なんだけど」

 晴樹が不機嫌そうに呟くと、山野は驚いた顔をする。そういえば言ってなかったな
 と思いつつ、僕は山野に言った。

「一応紹介しておきますね。僕の弟の晴樹です、よろしくしなくて結構ですけど」

「そういや、弟いるって言ってたな。・・・安心しろ、お前と同じ考えの奴なら
 よろしくしてやる気はない」

 山野の言葉に晴樹は嫌悪感を露わにすると、僕の袖を引っ張って無言で部屋を
 出る。僕と和正も共に部屋を出て、廊下を歩く。

「・・・僕、あいつ嫌いだ」

 ボソッと晴樹が呟いたので、僕も頷いて言った。

「山野とは一生仲良くなれる気がしねえ。つーか、仲良くなんてしたくねえ」

「気持ちは分かるけど、兄弟揃って学校で喧嘩はしないでくれな・・・」

 そう言って和正は溜息を吐いた。
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