異能力と妖と

彩茸

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聖夜祭編

応報

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「先輩、凄い・・・」

 静まり返った室内に、清水さんの呟く声が聞こえる。

「結局最後は人任せかよ・・・」

 山野がそう言って呆れた顔をする。

「しょうがないでしょう、武器が無いんですから」

 僕はそう言いながら山野達に近付く。晴樹と和正も僕の後ろから付いて来て、少し
 ムスッとした顔で山野を見た。

「流石に言い過ぎなんじゃないか?山野」

 和正の言葉に、山野は嫌そうな顔をする。

「良いんだ、挑発に乗ったのは僕だから。・・・誠、山野の治療も頼めるか?」

 僕がそう言うと、誠は不服そうな顔をしながらも山野に治癒術を掛ける。

「・・・静也優しいのな」

 和正がそう言って僕を見たので、ニッコリと笑っておいた。和正は何かを察した
 のか、引きつった顔をする。
 治療が終わった山野が立ち上がろうとしたので、すかさず僕は胸ぐらを掴んだ。

「・・・は?」

 山野が僕を睨んできたので、僕はわざと笑顔を作りながらグーで思いっきり山野の
 頬を殴った。
 清水さんが驚く横で、誠が吹き出す。和正は溜息を吐き、晴樹は何とも言えない
 ような顔をしていた。

「何すんだ山霧!!」

「言いましたよね、後でぶん殴るって」

「お前今、狗神に怪我治させただろうが!」

「何ですか?もう一発いきますか?」

「はあ?!」

「せ、先輩方やめてください!」

 言い合いをする僕と山野の間に清水さんが割って入る。

「・・・静兄、ストップ。その人間に色々したら、後々面倒になる」

 晴樹にそう言われ、僕は山野から手を離した。

「お前覚えてろよ・・・」

「煽った上に、僕の頬にナイフ当たってるんですよ?おあいこでしょう」

「まあまあ、喧嘩するなって・・・」

 睨み合う僕達を和正が宥めようとしていると、部屋の扉が開いた。
 そこから顔を出した笹野くんは、僕達を見るとほっと息を吐く。

「良かった、ずっと大きな音が鳴っていたから心配してたんです」

「・・・他の皆は?」

 山野の言葉に、笹野くんは無事ですと頷く。

「そうか。・・・この部屋、暫く使えそうにないから会議室でアレやるぞ」

「はい、分かりました。荷物運びますね」

 山野の言葉に笹野くんはそう言うと、部屋の隅に置かれた段ボール箱の中に入って
 いたであろう袋を持って僕達を見た。

「すみませんが、運ぶのを手伝って頂けますか?」

 僕達は頷くと、笹野くんの元へ向かう。片腕が治っていない誠は軽い物を、それ
 以外の人達は両手で大きな袋を抱えて会議室へと向かった。
 歩きながら、笹野くんが山野の頬が少し腫れていることを指摘する。山野は僕を
 ちらりと見ると、小さく舌打ちした。
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