異能力と妖と

彩茸

文字の大きさ
上 下
82 / 203
聖夜祭編

令嬢

しおりを挟む
―――時は過ぎ、12月。今日は保護学級のクリスマスパーティーの日だ。
施設へは笹野くんが案内してくれるらしく、僕達は学校が終わるとA組の教室前に
集合した。

「・・・あれ、一人足りないですね?」

 笹野くんがそう言って首を傾げる。

「ああ、すみません。あと一人は3年なんですけど・・・ホームルーム終わって
 ないんですかね?」

 僕がそう言うと、笹野くんは行ってみましょうかと歩き出す。
 階段を降りると3年の教室前に人だかりができており、もしやと思う。

「あ、山霧くんのお兄さん!」

 人だかりの中からそう言って手を振る清水さんの姿が見えた。清水さんの声に、
 何人かが振り返る。

「あ、この前の先輩だ」

「あれ、一緒に居る人私知ってる!あの先輩達もめちゃめちゃ強いんだよ!」

「俺も知ってる!学年首位争いしてる人達だって先生が言ってたぜ?」

「すっげー・・・」

 そんな事を話している3年生達の中から、晴樹と清水さんが鞄を持って駆け寄って
 来る。

「・・・何で君まで来るの」

「ん~、何となく?」

 不機嫌そうな晴樹に笑って答える清水さん。相変わらず度胸のある子だ・・・。

「えっと、清水さんも一緒に行きますか?これから保護学級のクリスマスパーティー
 があるんですけど・・・」

 笹野くんが清水さんに言うと、清水さんは良いんですか?!と目を輝かせる。

「え、知り合いなのか?」

 和正が驚いた顔で言うと、笹野くんと清水さんは頷いた。

「清水さんは保護学級の運営に経済的な協力をしてくださっている清水家のご令嬢
 で、彼女のご両親にはとてもお世話になっているんです」

 笹野くんの説明に、僕達は驚く。

「お嬢様だったんだ・・・」

「まあ、私は立場とかそこまで気にしていないんですけどね」

 誠の言葉に清水さんはそう言って笑うと、晴樹に言った。

「山霧くん、だから友達になろうよ」

「・・・嫌だ。何度断れば諦めるんだよ・・・」

 晴樹はそう言うと、僕を見た。こういう事だよと目で訴えているような気がして、
 僕は苦笑する。

「時間大丈夫なの?」

 ふと彩音が言う。笹野くんは時計を見ると、そろそろ行かないと遅れますねと
 言って僕達を見た。

「行きましょうか」

 笹野くんの言葉に僕達は頷く。晴樹は清水さんを見て嫌そうな顔をしつつも、
 諦めたのか小さく溜息を吐いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん
ファンタジー
 人族によって滅亡を辿る運命だった魔族を神々からの指名として救った魔王ジークルード・フィーデン。 しかし神々に与えられた恩恵が強力過ぎて神に近しい存在にまでなってしまった。  膨大に膨れ上がる魔力は自分が救った魔族まで傷付けてしまう恐れがあった。 なので魔王は魔力が漏れない様に自身が張った結界の中で一人過ごす事になったのだが、暇潰しに色々やっても尽きる気配の無い寿命を前にすると焼け石に水であった。  暇に耐えられなくなった魔王はその魔王生を終わらせるべく自分を殺そうと召喚魔法によって神を下界に召喚する。 神に自分を殺してくれと魔王は頼んだが条件を出された。  それは神域に至った魔王に神になるか人族として転生するかを選べと言うものだった。 神域に至る程の魂を完全に浄化するのは難しいので、そのまま神になるか人族として大きく力を減らした状態で転生するかしか選択肢が無いらしい。  魔王はもう退屈はうんざりだと言う事で神になって下界の管理をするだけになるのは嫌なので人族を選択した。 そして転生した魔王が今度は人族として2度目の人生を送っていく。  魔王時代に知り合った者達や転生してから出会った者達と共に、元魔王様がセカンドライフを送っていくストーリーです! 元魔王が人族として自由気ままに過ごしていく感じで書いていければと思ってます!  カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております!

転生魔法伝記〜魔法を極めたいと思いますが、それを邪魔する者は排除しておきます〜

凛 伊緒
ファンタジー
不運な事故により、23歳で亡くなってしまった会社員の八笠 美明。 目覚めると見知らぬ人達が美明を取り囲んでいて… (まさか……転生…?!) 魔法や剣が存在する異世界へと転生してしまっていた美明。 魔法が使える事にわくわくしながらも、王女としての義務もあり── 王女として生まれ変わった美明―リアラ・フィールアが、前世の知識を活かして活躍する『転生ファンタジー』──

悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん
ファンタジー
 人気乙女ゲー『月と共に煌めいて~キラキラ魔法学園、ラブ注入200%~』略称『とにキラ』の世界。  エステリア・ハーブスト公爵令嬢はゲーム内の最大ライバルである悪役令嬢でどのルートでも悲惨な運命を辿る。ある日、前世の記憶を持って転生した事を知ったエステリア(5歳)は悲惨な運命を回避する為に動き出す!

風切山キャンプ場は本日も開拓中 〜妖怪達と作るキャンプ場開業奮闘記〜

古道 庵
キャラ文芸
弱り目に祟り目。 この数ヶ月散々な出来事に見舞われ続けていた"土井 涼介(どい りょうすけ)"二十八歳。 最後のダメ押しに育ての親である祖母を亡くし、田舎の実家と離れた土地を相続する事に。 都内での生活に限界を感じていたこともあり、良いキッカケだと仕事を辞め、思春期まで過ごした"風切村(かざきりむら)"に引っ越す事を決める。 手元にあるのは相続した実家と裏山の土地、そして趣味のキャンプ道具ぐらいなものだった。 どうせ自分の土地ならと、自分専用のキャンプ場にしようと画策しながら向かった裏山の敷地。 そこで出会ったのは祖父や祖母から昔話で聞かされていた、個性豊かな妖怪達だった。 彼らと交流する内、山と妖怪達が直面している窮状を聞かされ、自分に出来ることは無いかと考える。 「……ここをキャンプ場として開いたら、色々な問題が丸く収まるんじゃないか?」 ちょっとした思いつきから端を発した開業の話。 甘い見通しと希望的観測から生まれる、中身がスカスカのキャンプ場経営計画。 浮世離れした妖怪達と、田舎で再起を図るアラサー男。 そしてそんな彼らに呆れながらも手を貸してくれる、心優しい友人達。 少女姿の天狗に化け狸、古杣(ふるそま)やら山爺やら鎌鼬(かまいたち)やら、果ては伝説の大妖怪・九尾の狐に水神まで。 名も無き山に住まう妖怪と人間が織りなすキャンプ場開業&経営の物語。 風切山キャンプ場は、本日も開拓中です! -------- 本作は第6回キャラ文芸大賞にて、奨励賞を受賞しました!

稀代の大賢者は0歳児から暗躍する〜公爵家のご令息は運命に抵抗する〜

撫羽
ファンタジー
ある邸で秘密の会議が開かれていた。 そこに出席している3歳児、王弟殿下の一人息子。実は前世を覚えていた。しかもやり直しの生だった!? どうしてちびっ子が秘密の会議に出席するような事になっているのか? 何があったのか? それは生後半年の頃に遡る。 『ばぶぁッ!』と元気な声で目覚めた赤ん坊。 おかしいぞ。確かに俺は刺されて死んだ筈だ。 なのに、目が覚めたら見覚えのある部屋だった。両親が心配そうに見ている。 しかも若い。え? どうなってんだ? 体を起こすと、嫌でも目に入る自分のポヨンとした赤ちゃん体型。マジかよ!? 神がいるなら、0歳児スタートはやめてほしかった。 何故だか分からないけど、人生をやり直す事になった。実は将来、大賢者に選ばれ魔族討伐に出る筈だ。だが、それは避けないといけない。 何故ならそこで、俺は殺されたからだ。 ならば、大賢者に選ばれなければいいじゃん!と、小さな使い魔と一緒に奮闘する。 でも、それなら魔族の問題はどうするんだ? それも解決してやろうではないか! 小さな胸を張って、根拠もないのに自信満々だ。 今回は初めての0歳児スタートです。 小さな賢者が自分の家族と、大好きな婚約者を守る為に奮闘します。 今度こそ、殺されずに生き残れるのか!? とは言うものの、全然ハードな内容ではありません。 今回も癒しをお届けできればと思います。

【ダンジョン・ニート・ダンジョン】 ~ダンジョン攻略でお金が稼げるようになったニートは有り余る時間でダンジョンに潜る~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、松井秀喜は現在ニート。 もちろんあの有名なアスリートではない。ただの同姓同名の二十六歳の男だ。 ある日の晩、愛犬ポチとアニメ鑑賞をしていたら庭の物置が爆発しその代わりにダンジョンが出来ていた! これはニートが有り余る時間でダンジョンに潜ったり潜らなかったりするお話。

オリジン・オブ・クラウン

フルハヤタ ツル
ファンタジー
「俺の名前は……わかりません」  異世界で目を覚ました少年は、記憶も常識もない。魔法も使えない。 ーーー挙句の果てには美少女に無視される。  そんなどん底で、命を脅かされた末に手に入れたのは、全ての物質を作り出す、忌まわしき『異能』だった。  あらゆる物質を作り出す異能『オリジン』。少年は辛うじてチートと呼べる能力を手に、迫り来る魔獣や魔人の脅威、そして待ち受ける己の運命に立ち向かう。

処理中です...