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聖夜祭編
招待
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―――先生に討伐の報告をしていると、和正達が戻って来た。
「おー、お疲れー」
「・・・あれ、笹野くんだ。山野くんはどうしたの?」
和正と誠がそう言いながら僕達に近付いて来る。事情を説明すると、誠が言った。
「へー、僕達の方にはそんな事頼もうともしてなかったけど」
「まあ、山野は静也と何回か臨時で組んでるからな。実力も分かってるだろうし、
俺達よりも頼みやすかったんだろ」
少し不機嫌そうな誠を和正が宥めながら言う。
「組みたくて組んでる訳じゃない、先生に組まされてるんだよ・・・。夏休み前の
一件で教頭先生の提案に乗ったからって、この前なんか最初から教頭先生が頼んで
きたし・・・」
「私が休む度に山野と組まされてない?静也」
彩音の言葉に、笹野くんが申し訳なさそうな顔をして言った。
「すみません、自分の体が弱いばかりに・・・」
「いえ、笹野くんは気にしないでください。悪いのは、意地でも山野と組ませようと
してくる先生達なので」
僕がそう言うと、彩音も賛同するように頷いて言った。
「私もよく体調崩して学校休んでるから、笹野くんは気にしないで良いのよ」
「すみません、ありがとうございます・・・」
そう言ってペコリと頭を下げる笹野くん。山野とは違って常に優しい子なんだなと
僕は思っていた。
―――次の日教室に行くと、僕の机の上に手のひらサイズの封筒が置いてあった。
裏を見てみると、右下に山野と書いてある。
昨日言ってた埋め合わせについてか?などと思いながら封筒を開けると、中には
手紙と招待状と書かれた紙が入っていた。
「招待状・・・?」
僕はそう呟きながら、手紙を読む。
手紙の内容を要約すると、12月25日に保護学級で招待者限定のクリスマス
パーティーをするから来いという事だった。
招待者の管理は笹野くんの担当らしく、他にも連れて行きたい人がいるなら
笹野くんに言えば良いらしい。
それなら晴樹達も連れて行こうと思い、笹野くんを探すため立ち上がる。
笹野くんは何組なんだろうと思いながら教室を出ようとすると、教室の前の方で
本を読んでいる笹野くんが目に入った。・・・同じクラス、だったのか。
「笹野くん、ちょっと良いですか?」
僕が話し掛けると、笹野くんは読んでいた本を閉じてこちらを見る。
「あ、山霧くん。・・・もしかして、招待状の事ですか?」
「はい。僕と彩音の他に、もう三人誘いたいんですが・・・」
「分かりました。後で変更しておきますね」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
用件を済ませた僕は席へ戻る。笹野くんもすぐに本を読み始めたため、周りの
人達が何だったんだ今の・・・と不思議そうな顔で僕達を見ていた。
彩音に、和正達も誘うことにしたと伝えておこう。そう思った僕は彩音と話すべく
教室を出る。
C組に向かう途中でB組の中がちらりと見えた。そこには女子に囲まれながら、
笑顔で話す和正の姿が。いつもの光景なのだが、最近気付いた事がある。和正は
誠を始めとした僕達友人の前で見せる笑顔とは別に、クラスメートなどと話すとき
の笑顔がある。後者は、僕から見ればどこか貼りつけたもののように感じられた。
「彩音ー?」
僕がC組を覗くとそこに彩音はおらず、僕に気付いた誠が駆け寄ってきた。
「彩音ならさっきトイレ行ったよ~。何か用事?」
誠がそう言って耳をぴょこぴょこさせる。
「まあな。詳しくは寮に帰ったら話すよ」
「それ授業中も気になっちゃうやつじゃんかー」
誠とそんな会話をしていると、彩音が戻って来た。
彩音に山野の件で・・・と言うと、彩音はスカートのポケットから封筒を
取り出して言った。
「これの事でしょ?笹野くんに追加で誘うって言おうとしたんだけど・・・
もしかして言ってくれた?」
「ああ、三人はな。彩音は他に誰か誘うのか?」
「ううん。響子先輩もみなも先輩もその日は用事があるらしくて。だから、私達
だけね」
「ねー、何の話してるか凄い気になるんだけどー」
誠がそう言いながら、僕と彩音の周りをぐるぐる回る。
「ここでは言いにくい話なの、だから放課後にね」
彩音にそう言われ、誠は渋々頷く。
教室に戻る途中で山野とすれ違った。ちらりと山野を見ると、彼と目が合う。
「・・・招待、ありがとうございます」
そう言った僕に山野は少し驚いた顔をした後、目を逸らして言った。
「・・・どういたしまして」
僕と山野はそれぞれ自分の教室に入る。
初めてイライラせずに会話をしたかもしれない。そんな事を考えながら、僕は席に
着いた。
「おー、お疲れー」
「・・・あれ、笹野くんだ。山野くんはどうしたの?」
和正と誠がそう言いながら僕達に近付いて来る。事情を説明すると、誠が言った。
「へー、僕達の方にはそんな事頼もうともしてなかったけど」
「まあ、山野は静也と何回か臨時で組んでるからな。実力も分かってるだろうし、
俺達よりも頼みやすかったんだろ」
少し不機嫌そうな誠を和正が宥めながら言う。
「組みたくて組んでる訳じゃない、先生に組まされてるんだよ・・・。夏休み前の
一件で教頭先生の提案に乗ったからって、この前なんか最初から教頭先生が頼んで
きたし・・・」
「私が休む度に山野と組まされてない?静也」
彩音の言葉に、笹野くんが申し訳なさそうな顔をして言った。
「すみません、自分の体が弱いばかりに・・・」
「いえ、笹野くんは気にしないでください。悪いのは、意地でも山野と組ませようと
してくる先生達なので」
僕がそう言うと、彩音も賛同するように頷いて言った。
「私もよく体調崩して学校休んでるから、笹野くんは気にしないで良いのよ」
「すみません、ありがとうございます・・・」
そう言ってペコリと頭を下げる笹野くん。山野とは違って常に優しい子なんだなと
僕は思っていた。
―――次の日教室に行くと、僕の机の上に手のひらサイズの封筒が置いてあった。
裏を見てみると、右下に山野と書いてある。
昨日言ってた埋め合わせについてか?などと思いながら封筒を開けると、中には
手紙と招待状と書かれた紙が入っていた。
「招待状・・・?」
僕はそう呟きながら、手紙を読む。
手紙の内容を要約すると、12月25日に保護学級で招待者限定のクリスマス
パーティーをするから来いという事だった。
招待者の管理は笹野くんの担当らしく、他にも連れて行きたい人がいるなら
笹野くんに言えば良いらしい。
それなら晴樹達も連れて行こうと思い、笹野くんを探すため立ち上がる。
笹野くんは何組なんだろうと思いながら教室を出ようとすると、教室の前の方で
本を読んでいる笹野くんが目に入った。・・・同じクラス、だったのか。
「笹野くん、ちょっと良いですか?」
僕が話し掛けると、笹野くんは読んでいた本を閉じてこちらを見る。
「あ、山霧くん。・・・もしかして、招待状の事ですか?」
「はい。僕と彩音の他に、もう三人誘いたいんですが・・・」
「分かりました。後で変更しておきますね」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
用件を済ませた僕は席へ戻る。笹野くんもすぐに本を読み始めたため、周りの
人達が何だったんだ今の・・・と不思議そうな顔で僕達を見ていた。
彩音に、和正達も誘うことにしたと伝えておこう。そう思った僕は彩音と話すべく
教室を出る。
C組に向かう途中でB組の中がちらりと見えた。そこには女子に囲まれながら、
笑顔で話す和正の姿が。いつもの光景なのだが、最近気付いた事がある。和正は
誠を始めとした僕達友人の前で見せる笑顔とは別に、クラスメートなどと話すとき
の笑顔がある。後者は、僕から見ればどこか貼りつけたもののように感じられた。
「彩音ー?」
僕がC組を覗くとそこに彩音はおらず、僕に気付いた誠が駆け寄ってきた。
「彩音ならさっきトイレ行ったよ~。何か用事?」
誠がそう言って耳をぴょこぴょこさせる。
「まあな。詳しくは寮に帰ったら話すよ」
「それ授業中も気になっちゃうやつじゃんかー」
誠とそんな会話をしていると、彩音が戻って来た。
彩音に山野の件で・・・と言うと、彩音はスカートのポケットから封筒を
取り出して言った。
「これの事でしょ?笹野くんに追加で誘うって言おうとしたんだけど・・・
もしかして言ってくれた?」
「ああ、三人はな。彩音は他に誰か誘うのか?」
「ううん。響子先輩もみなも先輩もその日は用事があるらしくて。だから、私達
だけね」
「ねー、何の話してるか凄い気になるんだけどー」
誠がそう言いながら、僕と彩音の周りをぐるぐる回る。
「ここでは言いにくい話なの、だから放課後にね」
彩音にそう言われ、誠は渋々頷く。
教室に戻る途中で山野とすれ違った。ちらりと山野を見ると、彼と目が合う。
「・・・招待、ありがとうございます」
そう言った僕に山野は少し驚いた顔をした後、目を逸らして言った。
「・・・どういたしまして」
僕と山野はそれぞれ自分の教室に入る。
初めてイライラせずに会話をしたかもしれない。そんな事を考えながら、僕は席に
着いた。
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