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聖夜祭編
保護
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―――それから時は経ち、11月。僕と彩音が実践授業の準備をしていると、眠そうな
顔をした山野がふらふらとした足取りで歩いて来た。
「・・・何か用ですか」
「・・・神宮、とついでに山霧に頼みがあるんだが」
「何かしら」
山野は後ろから走って来る背の低い男子を指さして言った。
「オレ、今日休むから・・・あいつの事、頼んだ」
「はい?」
背の低い男子は僕と彩音の前まで来ると、ぺこりと頭を下げて言った。
「山野くんのペアの、笹野と言います。小里先生に他のペアに入れてもらえと言われ
たのでお邪魔したいんですが、良いでしょうか?」
「えっと・・・静也、どうする?」
彩音に聞かれ、どうしようかと笹野くんを見る。笹野くんは不安そうな目で山野を
見ていた。
「あー・・・分かりました。前に山野と組んだ時のように、討伐数は両チームに
入りますよね?」
僕がそう言うと山野は頷き、笹野くんはとても嬉しそうな顔をした。
「じゃ、そう言う事で。・・・お前らに、特に山霧に頼むのはマジで癪だが、
埋め合わせはするよ」
「喧嘩売ってるんですか?買いますよ?」
「・・・喧嘩してたら終わる時間伸びちゃうから、聞かなかった事にしてあげるわ。
ほら静也、行くわよ」
彩音がそう言うと、山野はふらふらとしながら体育館から出て行く。
「よ、よろしくお願いします」
笹野くんは心配そうな顔で山野を見た後、そう言って僕達に頭を下げる。
「よろしくお願いします」
あの山野のペアなんて、碌な奴じゃない気がする。そんな事を思いながら、僕も
頭を下げるのだった。
―――良い意味で、予想が外れた。笹野くんは完全補助型のようで、僕の動きに
合わせて壁を作り出し、妖の攻撃から僕を守ってくれていた。
小妖怪達を纏めていた中妖怪を倒し、残党処理をする。彩音の放った矢が最後の
一匹を仕留めると、僕達はほっと息を吐いた。
「笹野くん、ありがとうございました。戦いやすかったです」
「あなたやるわね、とても良い連携だったわ」
僕と彩音がそう言うと、笹野くんは照れ臭そうに笑う。
「・・・山野くんは、いつも突っ込んでいきますから。山霧くんは敵を引き付けて
戦っていたので、ちゃんとサポートできていたか不安でしたが・・・お役に立てた
ようなら良かったです」
「そういえば、何で山野はあんなにふらふらだったのかしら?」
ふと彩音がそう言うと、笹野くんはちょっと困った顔をして言った。
「実は昨日、学園に保護された子供達が住んでいる施設・・・保護学級って呼ばれて
いるんですけど、そこの子が熱を出しちゃいまして。山野くんが夜通し看病して
いたんです。それで、寝不足に・・・」
「何で山野が保護学級の子の看病をしているんですか?」
「山野くん、保護学級からここに入学しているんです。・・・自分もそこの出で、
山野くんとはそこで知り合ったんです。施設を出てからも、山野くんは先生の手が
足りない時に保護学級の子達の面倒を見ているんですよ。・・・保護学級の皆の、
兄みたいな存在です」
笹野くんはそう言ってふわりと笑う。僕と顔を合わせれば喧嘩ばかりしている
あの山野に、そんな一面が。
あの山野が・・・?と驚く彩音と僕に、笹野くんは意外そうな顔をした。
「普段の山野くん、凄くクールで優しい良い人ですよ?」
「・・・すみません、想像がつかないです」
「静也に同じく・・・」
「ええ・・・」
微妙な空気の中、僕達は帰路に就く。中妖怪の持っていた槍を黄玉に運ばせ
ながら、少し早足で帰るのだった。
顔をした山野がふらふらとした足取りで歩いて来た。
「・・・何か用ですか」
「・・・神宮、とついでに山霧に頼みがあるんだが」
「何かしら」
山野は後ろから走って来る背の低い男子を指さして言った。
「オレ、今日休むから・・・あいつの事、頼んだ」
「はい?」
背の低い男子は僕と彩音の前まで来ると、ぺこりと頭を下げて言った。
「山野くんのペアの、笹野と言います。小里先生に他のペアに入れてもらえと言われ
たのでお邪魔したいんですが、良いでしょうか?」
「えっと・・・静也、どうする?」
彩音に聞かれ、どうしようかと笹野くんを見る。笹野くんは不安そうな目で山野を
見ていた。
「あー・・・分かりました。前に山野と組んだ時のように、討伐数は両チームに
入りますよね?」
僕がそう言うと山野は頷き、笹野くんはとても嬉しそうな顔をした。
「じゃ、そう言う事で。・・・お前らに、特に山霧に頼むのはマジで癪だが、
埋め合わせはするよ」
「喧嘩売ってるんですか?買いますよ?」
「・・・喧嘩してたら終わる時間伸びちゃうから、聞かなかった事にしてあげるわ。
ほら静也、行くわよ」
彩音がそう言うと、山野はふらふらとしながら体育館から出て行く。
「よ、よろしくお願いします」
笹野くんは心配そうな顔で山野を見た後、そう言って僕達に頭を下げる。
「よろしくお願いします」
あの山野のペアなんて、碌な奴じゃない気がする。そんな事を思いながら、僕も
頭を下げるのだった。
―――良い意味で、予想が外れた。笹野くんは完全補助型のようで、僕の動きに
合わせて壁を作り出し、妖の攻撃から僕を守ってくれていた。
小妖怪達を纏めていた中妖怪を倒し、残党処理をする。彩音の放った矢が最後の
一匹を仕留めると、僕達はほっと息を吐いた。
「笹野くん、ありがとうございました。戦いやすかったです」
「あなたやるわね、とても良い連携だったわ」
僕と彩音がそう言うと、笹野くんは照れ臭そうに笑う。
「・・・山野くんは、いつも突っ込んでいきますから。山霧くんは敵を引き付けて
戦っていたので、ちゃんとサポートできていたか不安でしたが・・・お役に立てた
ようなら良かったです」
「そういえば、何で山野はあんなにふらふらだったのかしら?」
ふと彩音がそう言うと、笹野くんはちょっと困った顔をして言った。
「実は昨日、学園に保護された子供達が住んでいる施設・・・保護学級って呼ばれて
いるんですけど、そこの子が熱を出しちゃいまして。山野くんが夜通し看病して
いたんです。それで、寝不足に・・・」
「何で山野が保護学級の子の看病をしているんですか?」
「山野くん、保護学級からここに入学しているんです。・・・自分もそこの出で、
山野くんとはそこで知り合ったんです。施設を出てからも、山野くんは先生の手が
足りない時に保護学級の子達の面倒を見ているんですよ。・・・保護学級の皆の、
兄みたいな存在です」
笹野くんはそう言ってふわりと笑う。僕と顔を合わせれば喧嘩ばかりしている
あの山野に、そんな一面が。
あの山野が・・・?と驚く彩音と僕に、笹野くんは意外そうな顔をした。
「普段の山野くん、凄くクールで優しい良い人ですよ?」
「・・・すみません、想像がつかないです」
「静也に同じく・・・」
「ええ・・・」
微妙な空気の中、僕達は帰路に就く。中妖怪の持っていた槍を黄玉に運ばせ
ながら、少し早足で帰るのだった。
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