異能力と妖と

彩茸

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夏祭編

合流

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―――晴樹が式神達と触れ合っているのを見ていると、彩音が僕に聞いてきた。

「えっと、そこの烏を乗せた方は?」

 彩音の視線の先に居たのは赤芽。赤芽の頭には、天春が乗っていた。

「ああ、紹介するよ。僕の友達の赤芽と天春だ」

「あれ?静也って人間の友達、私達の他にいたっけ?」

 彩音が首を傾げると、晴樹の所にいたはずの藍晶が彩音の足元で赤芽に向かって
 唸り声を上げた。それを見て彩音は察したのか、藍晶を宥めながら言った。

「・・・なるほど、そういう事ね。えっと、あなたと頭の上の烏もかしら?」

「ええ。私が赤芽、こっちの烏に化けているのが天春よ」

 赤芽がそう言って頭上の天春をつつくと、天春は一度飛び立ち、空中で元の姿へと
 戻った。

「わっ、人型になった」

 驚く彩音に天春はニコッと笑うと、自己紹介を始めた。

「僕は天狗の天春!彩音ちゃんの話は静から聞いたよ、よろしくね!」

「彩音で良いわ、よろしく。・・・で、赤芽は何の妖なの?」

 彩音に聞かれ、赤芽は変化を解いてみせる。猫又なの?!と驚く彩音に赤芽は
 言った。

「完璧な変化だったでしょ。まあ、式神にはバレちゃってたけど」

「ボクも赤芽に特訓してもらったんだよ!」

 誠がそう言って赤芽に見て見て~と近付く。

「そういえば犬耳無くなってる?!え、凄いわ・・・」

 彩音の言葉に赤芽は誇らしげに笑うと、再び人間の姿に化けた。

「なあ彩音、俺も藍晶触って良いか?」

 ずっとうずうずしていた和正が、彩音に聞く。良いわよと彩音が言うと、和正は
 嬉しそうに藍晶と触れ合い始めた。
 そういえば、動物のフワフワが好きって言ってたっけな。

「人懐っこい子だけど、牙は鋭いから気を付けてね」

 彩音がそう言うと、和正は分かったと言いつつ藍晶をモフモフしていた。


―――皆の様子を微笑ましげに見ていた宇迦と御魂が、ふと空を見上げる。

「宇迦様、御魂様どうされました?」

 彩音がそう聞くと、御魂が目を細めて言った。

「・・・あ奴、神事が終わるのを待っておったのかの?」

「え?」

 彩音が何の事かと首を傾げると、僕達の後ろから声がした。

「流石に仕事の邪魔はせんわい」

 振り向くと、そこには狗神が立っていた。

「お祖父ちゃんだ~」

 誠が嬉しそうに駆け寄ると、狗神は少し驚いた顔をして言った。

「何じゃ誠、変化できるようになったんじゃな」

「えへへ、赤芽に特訓してもらったんだ!」

 そうかそうかと狗神は誠の頭を撫でると、赤芽にお礼を言う。赤芽は少し照れ臭
 そうにしながら、どういたしましてと言った。

「何の用じゃ?」

 宇迦が狗神に聞く。狗神はニッコリと笑うと言った。

「稲荷寿司を貰いに来た・・・と言いたいところじゃが、今日は遊びに来たんじゃ」

「遊びに?」

 僕が聞くと、狗神は頷いて言った。

「たまには人間に紛れて祭りを楽しむのも一興じゃ。折角じゃし、ワシも屋台を回ろうとな」

「じゃあ皆で回ろうよ!」

 誠がそう言うと、狗神はにこやかに頷く。

「い、狗神さん。その耳だと流石に・・・」

 彩音がそう言うと、狗神は大丈夫じゃと笑って頭をポンポンと叩く。すると犬耳が
 消え、銀色だった髪が焦げ茶色に変わった。

「凄い、お父さんそっくり!」

 誠の言葉に狗神はムスッとした顔で言った。

「違うわい、真悟がワシにそっくりなんじゃ!」

 よく見ると、狗神の目も少し獣っぽいものから人間のものへと変わっていた。
 細かいな・・・と思いつつ、僕は晴樹に声を掛ける。

「・・・何?」

 黄玉を撫でながら晴樹は振り返る。狗神の姿を見て多少嫌な顔をしたが、何となく
 狗神だと分かったのか、軽く会釈した。

「今から狗神さんともう一回屋台回るけど、晴樹も来るか?」

 いつの間にか藍晶を撫でる手を止めていた和正がそう言うと、晴樹は無言で首を
 横に振る。

「晴樹くんは私とこの子達で見とくから、行ってきなさいよ」

 彩音がそう言って手を振る。

「我らもここに残るぞ」

 宇迦がそう言うと、御魂も頷く。
 それじゃあと僕達は狗神を連れて、屋台へと向かうのだった。
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