71 / 203
夏祭編
手紙
しおりを挟む
―――夜宮神社に行ったあの日から一週間が経った。僕達が家でくつろいでいると、
扉をノックする音が聞こえる。
玄関に行くと、人間ではないシルエットが見えた。
「どちら様ですか・・・?」
僕がそう言いながら少し扉を開けると、ピイィと鳴き声がした。聞き覚えのある
その鳴き声に、僕は思いっ切り扉を開ける。
「曹灰!」
扉の前にいたのは彩音の式神である、化け鷹の曹灰だった。曹灰は僕を見ると
もう一度ピイィと鳴く。そして僕に片足を突き出して見せた。
足には縦長に折りたたまれた紙が紐で結び付けてあり、それを開くと案の定彩音
からの手紙だった。
『静也へ
先日話したお祭りの件ですが、時間を伝え忘れていました。明日、午後7時に
神事を行います。
屋台は夕方から出ています。どうせ和正と誠は屋台目当てだろうから、早めに
来て楽しんでください。
宇迦様と御魂様から晴樹くんに稲荷寿司を渡すように頼まれたので、神事が
終わった後社務所に来てくれると助かります。
追伸:静也の家は狗神さんが教えてくれました。
曹灰と仲良くしてあげてください。
彩音』
手紙の文章を読み、そういえば明日だったかと思い出す。帰る前に祭りの日付は
聞いていたが、確かに時間を聞くのを忘れていた。
和正と誠にも日付しか伝えていないので、後で伝えておかなければいけない。
「静くん、何か知ってるニオイがしたんだけど・・・」
誠がそう言いながら玄関にやって来る。そして曹灰を見ると、嬉しそうに手を
振って言った。
「わあ、曹灰だ!久しぶり~」
「・・・わ、大きい鷹」
誠の後ろから顔を覗かせた晴樹が言う。更にその後ろから和正も顔を覗かせ、
曹灰に手を振った。
曹灰はピイィと鳴くと、晴樹を見て首を傾げる。誰だとか思っているんだろうかと
考えつつ、僕は晴樹に言った。
「晴樹、この前彩音と会ったろ?その子の式神の曹灰だ。触ってみるか?」
「良いの・・・?」
晴樹はそう言いながら曹灰に近付く。曹灰はどうぞとでも言いたげにその場に
座った。
晴樹は遠慮がちに手を伸ばし、曹灰の羽に触る。そっと撫でた後、晴樹は僕に
言った。
「・・・静兄、彩音さんにお礼言っといて」
なるほど、気に入ったのか。自分で言えよと僕が言うと、晴樹は首をブンブンと
横に振った。
―――曹灰を晴樹が撫でまわしている間に、僕は和正と誠に手紙の内容を伝える。
晴樹は僕に付いて来るだろうと思いつつ晴樹の方を見ると、曹灰と目が合った。
「ありがとな、曹灰」
僕がそう言うと、曹灰はピイィと鳴いて立ち上がった。そして晴樹の頬に頭を摺り
寄せると、そのまま飛び立っていった。
晴樹は曹灰に手を振りながら言った。
「・・・やっぱり、曹灰にお礼言うついでに彩音さんにもお礼言うよ」
「彩音と仲良くなったら、他の式神も触らせてもらえるかもな」
僕がそう言うと、晴樹がちらりと僕を見る。そして視線を外すと小さく呟いた。
「・・・・・・頑張る」
どうやら式神がかなり気に入ったらしい。稲荷寿司と式神で動く晴樹を見て、僕は
喜ばしくも少し心配な気持ちになるのだった。
扉をノックする音が聞こえる。
玄関に行くと、人間ではないシルエットが見えた。
「どちら様ですか・・・?」
僕がそう言いながら少し扉を開けると、ピイィと鳴き声がした。聞き覚えのある
その鳴き声に、僕は思いっ切り扉を開ける。
「曹灰!」
扉の前にいたのは彩音の式神である、化け鷹の曹灰だった。曹灰は僕を見ると
もう一度ピイィと鳴く。そして僕に片足を突き出して見せた。
足には縦長に折りたたまれた紙が紐で結び付けてあり、それを開くと案の定彩音
からの手紙だった。
『静也へ
先日話したお祭りの件ですが、時間を伝え忘れていました。明日、午後7時に
神事を行います。
屋台は夕方から出ています。どうせ和正と誠は屋台目当てだろうから、早めに
来て楽しんでください。
宇迦様と御魂様から晴樹くんに稲荷寿司を渡すように頼まれたので、神事が
終わった後社務所に来てくれると助かります。
追伸:静也の家は狗神さんが教えてくれました。
曹灰と仲良くしてあげてください。
彩音』
手紙の文章を読み、そういえば明日だったかと思い出す。帰る前に祭りの日付は
聞いていたが、確かに時間を聞くのを忘れていた。
和正と誠にも日付しか伝えていないので、後で伝えておかなければいけない。
「静くん、何か知ってるニオイがしたんだけど・・・」
誠がそう言いながら玄関にやって来る。そして曹灰を見ると、嬉しそうに手を
振って言った。
「わあ、曹灰だ!久しぶり~」
「・・・わ、大きい鷹」
誠の後ろから顔を覗かせた晴樹が言う。更にその後ろから和正も顔を覗かせ、
曹灰に手を振った。
曹灰はピイィと鳴くと、晴樹を見て首を傾げる。誰だとか思っているんだろうかと
考えつつ、僕は晴樹に言った。
「晴樹、この前彩音と会ったろ?その子の式神の曹灰だ。触ってみるか?」
「良いの・・・?」
晴樹はそう言いながら曹灰に近付く。曹灰はどうぞとでも言いたげにその場に
座った。
晴樹は遠慮がちに手を伸ばし、曹灰の羽に触る。そっと撫でた後、晴樹は僕に
言った。
「・・・静兄、彩音さんにお礼言っといて」
なるほど、気に入ったのか。自分で言えよと僕が言うと、晴樹は首をブンブンと
横に振った。
―――曹灰を晴樹が撫でまわしている間に、僕は和正と誠に手紙の内容を伝える。
晴樹は僕に付いて来るだろうと思いつつ晴樹の方を見ると、曹灰と目が合った。
「ありがとな、曹灰」
僕がそう言うと、曹灰はピイィと鳴いて立ち上がった。そして晴樹の頬に頭を摺り
寄せると、そのまま飛び立っていった。
晴樹は曹灰に手を振りながら言った。
「・・・やっぱり、曹灰にお礼言うついでに彩音さんにもお礼言うよ」
「彩音と仲良くなったら、他の式神も触らせてもらえるかもな」
僕がそう言うと、晴樹がちらりと僕を見る。そして視線を外すと小さく呟いた。
「・・・・・・頑張る」
どうやら式神がかなり気に入ったらしい。稲荷寿司と式神で動く晴樹を見て、僕は
喜ばしくも少し心配な気持ちになるのだった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―
もいもいさん
ファンタジー
人気乙女ゲー『月と共に煌めいて~キラキラ魔法学園、ラブ注入200%~』略称『とにキラ』の世界。
エステリア・ハーブスト公爵令嬢はゲーム内の最大ライバルである悪役令嬢でどのルートでも悲惨な運命を辿る。ある日、前世の記憶を持って転生した事を知ったエステリア(5歳)は悲惨な運命を回避する為に動き出す!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~
卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。
店主の天さんは、実は天狗だ。
もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。
「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。
神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。
仲間にも、実は大妖怪がいたりして。
コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん!
(あ、いえ、ただの便利屋です。)
-----------------------------
ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。
カクヨムとノベプラにも掲載しています。
異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。
暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。
18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした
田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。
しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。
そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。
そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。
なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。
あらすじを読んでいただきありがとうございます。
併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。
より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!
家に住み着いている妖精に愚痴ったら、国が滅びました
猿喰 森繁 (さるばみ もりしげ)
ファンタジー
【書籍化決定しました!】
11月中旬刊行予定です。
これも多くの方が、お気に入り登録してくださったおかげです
ありがとうございます。
【あらすじ】
精霊の加護なくして魔法は使えない。
私は、生まれながらにして、加護を受けることが出来なかった。
加護なしは、周りに不幸をもたらすと言われ、家族だけでなく、使用人たちからも虐げられていた。
王子からも婚約を破棄されてしまい、これからどうしたらいいのか、友人の屋敷妖精に愚痴ったら、隣の国に知り合いがいるということで、私は夜逃げをすることにした。
まさか、屋敷妖精の一声で、精霊の信頼がなくなり、国が滅ぶことになるとは、思いもしなかった。
全スキル自動攻撃【オートスキル】で無双 ~自動狩りで楽々レベルアップ~
桜井正宗
ファンタジー
おっさんに唯一与えられたもの――それは【オートスキル】。
とある女神様がくれた素敵なプレゼントだった。
しかし、あまりの面倒臭がりのおっさん。なにもやる気も出なかった。長い事放置して、半年後にやっとやる気が出た。とりあえず【オートスキル】を極めることにした。とはいえ、極めるもなにも【オートスキル】は自動で様々なスキルが発動するので、24時間勝手にモンスターを狩ってくれる。起きていようが眠っていようが、バリバリモンスターを狩れてしまえた。そんなチートも同然なスキルでモンスターを根こそぎ狩りまくっていれば……最強のステータスを手に入れてしまっていた。これは、そんな爆笑してしまう程の最強能力を手に入れたおっさんの冒険譚である――。
【完結】虐げられた令嬢の復讐劇 〜聖女より格上の妖精の愛し子で竜王様の番は私です~
大福金
ファンタジー
10歳の時、床掃除をしている時に水で足を滑らせ前世の記憶を思い出した。侯爵家令嬢ルチア
8さいの時、急に現れた義母に義姉。
あれやこれやと気がついたら部屋は義姉に取られ屋根裏に。
侯爵家の娘なのに、使用人扱い。
お母様が生きていた時に大事にしてくれた。使用人たちは皆、義母が辞めさせた。
義母が連れてきた使用人達は私を義母と一緒になってこき使い私を馬鹿にする……
このままじゃ先の人生詰んでる。
私には
前世では25歳まで生きてた記憶がある!
義母や義姉!これからは思い通りにさせないんだから!
義母達にスカッとざまぁしたり
冒険の旅に出たり
主人公が妖精の愛し子だったり。
竜王の番だったり。
色々な無自覚チート能力発揮します。
竜王様との溺愛は後半第二章からになります。
※完結まで執筆済みです。(*´꒳`*)10万字程度。
※後半イチャイチャ多めです♡
※R18描写♡が入るシーンはタイトルに★マークをいれています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる