異能力と妖と

彩茸

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夏祭編

手紙

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―――夜宮神社に行ったあの日から一週間が経った。僕達が家でくつろいでいると、
扉をノックする音が聞こえる。
玄関に行くと、人間ではないシルエットが見えた。

「どちら様ですか・・・?」

 僕がそう言いながら少し扉を開けると、ピイィと鳴き声がした。聞き覚えのある
 その鳴き声に、僕は思いっ切り扉を開ける。

「曹灰!」

 扉の前にいたのは彩音の式神である、化け鷹の曹灰だった。曹灰は僕を見ると
 もう一度ピイィと鳴く。そして僕に片足を突き出して見せた。
 足には縦長に折りたたまれた紙が紐で結び付けてあり、それを開くと案の定彩音
 からの手紙だった。


 『静也へ

  先日話したお祭りの件ですが、時間を伝え忘れていました。明日、午後7時に
  神事を行います。
  屋台は夕方から出ています。どうせ和正と誠は屋台目当てだろうから、早めに
  来て楽しんでください。
  宇迦様と御魂様から晴樹くんに稲荷寿司を渡すように頼まれたので、神事が
  終わった後社務所に来てくれると助かります。

  追伸:静也の家は狗神さんが教えてくれました。
     曹灰と仲良くしてあげてください。
                                   彩音』


 手紙の文章を読み、そういえば明日だったかと思い出す。帰る前に祭りの日付は
 聞いていたが、確かに時間を聞くのを忘れていた。
 和正と誠にも日付しか伝えていないので、後で伝えておかなければいけない。

「静くん、何か知ってるニオイがしたんだけど・・・」

 誠がそう言いながら玄関にやって来る。そして曹灰を見ると、嬉しそうに手を
 振って言った。

「わあ、曹灰だ!久しぶり~」

「・・・わ、大きい鷹」

 誠の後ろから顔を覗かせた晴樹が言う。更にその後ろから和正も顔を覗かせ、
 曹灰に手を振った。
 曹灰はピイィと鳴くと、晴樹を見て首を傾げる。誰だとか思っているんだろうかと
 考えつつ、僕は晴樹に言った。

「晴樹、この前彩音と会ったろ?その子の式神の曹灰だ。触ってみるか?」

「良いの・・・?」

 晴樹はそう言いながら曹灰に近付く。曹灰はどうぞとでも言いたげにその場に
 座った。
 晴樹は遠慮がちに手を伸ばし、曹灰の羽に触る。そっと撫でた後、晴樹は僕に
 言った。

「・・・静兄、彩音さんにお礼言っといて」

 なるほど、気に入ったのか。自分で言えよと僕が言うと、晴樹は首をブンブンと
 横に振った。


―――曹灰を晴樹が撫でまわしている間に、僕は和正と誠に手紙の内容を伝える。
晴樹は僕に付いて来るだろうと思いつつ晴樹の方を見ると、曹灰と目が合った。

「ありがとな、曹灰」

 僕がそう言うと、曹灰はピイィと鳴いて立ち上がった。そして晴樹の頬に頭を摺り
 寄せると、そのまま飛び立っていった。
 晴樹は曹灰に手を振りながら言った。

「・・・やっぱり、曹灰にお礼言うついでに彩音さんにもお礼言うよ」

「彩音と仲良くなったら、他の式神も触らせてもらえるかもな」

 僕がそう言うと、晴樹がちらりと僕を見る。そして視線を外すと小さく呟いた。

「・・・・・・頑張る」

 どうやら式神がかなり気に入ったらしい。稲荷寿司と式神で動く晴樹を見て、僕は
 喜ばしくも少し心配な気持ちになるのだった。
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