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再会編
友情
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―――夜。中々寝付けなかった僕は、皆を起こさないようにそっとお堂を出る。
昼間よりも少し涼しいなと思いながら階段に座り、僕は夜風に当たる。相変わらず
霧が出ているため視界は良くないが、空を見上げるとキラキラと輝く沢山の星が
見えた。
暫く星を眺めていると、お堂の扉が開く音がする。そちらを見ると、誠が少し顔を
出して僕を見ていた。
「誠、起きてたんですか?」
僕がそう言うと誠は静かに扉を閉め、僕の隣に座る。そして僕の顔をじっと見る
と、口を開いた。
「・・・静くん、大丈夫?」
「体調も良くなりましたし、大丈夫ですよ。心配かけてすみませんでした」
「そうじゃなくて!」
誠はそう言うと、僕の肩に頭を乗せる。
「誠?」
「・・・静くんと天春の会話、聞いてたんだ。静くんも天春も辛そうで、悲しそうな
ニオイがしたから・・・」
聞かれていたのか。そう思っていると、誠が僕の目を見て言った。
「ボクは、静くんの事信じてるよ。静くんはボクが妖のクオーターだって知っても、
普通に接してくれた。ボクが悪い事しちゃった時も、許してくれた。・・・だから
ボクは、静くんとずっと友達でいられるって、信じてる」
何かこういう事言うの恥ずかしいねと誠は笑う。そして誠は僕に聞いた。
「静くんは・・・ボクの事信じて、一緒に居てくれる?」
分かった気がした。僕が何故和正を信じようと思ったのか、何故天春に信じて
くれるかなんて言ったのか。
・・・僕は信じるのが怖かったんじゃない、信じられていない事が怖かったんだ。
言葉にされないと分からない、確信が持てなきゃ不安なまま。もしかしたら相手は
僕の事を信じてくれていないのかもしれない、いつか離れていってしまうかもしれ
ない。それが怖くて、壁を作って。
「ははっ・・・」
あまりにも身勝手な自分に、思わず笑ってしまう。キョトンとしている誠に
向かって、僕は言った。
「信じるよ。・・・ありがとう、誠」
誠はハッと僕を見た後、とびきりの笑顔で言った。
「うん!!」
―――誠と一緒にお堂の中へ戻ると、和正が上体を起こし手招きをしてきた。
和正も起きていたのかと思いながら、二人で和正の元へ向かう。
「おかえり」
和正が優しい声で言う。僕と誠は微笑み、言った。
「ただいま」
―――次の日の朝。ぐっすりと寝ていたところを天春に叩き起こされた。
「静、ねえ静!!お父さんと狗神さん何処に居るか知らない?!」
「・・・え?」
寝起きの頭で心当たりを探していると、天春が紙を差し出してきた。
見るとどうやら天狗さんが書いた手紙のようで、そこに書いてあった文に首を
傾げる。
「『急な用事ができたので、後の事は任せる』・・・?」
手紙の内容を要約すると、急な用事で天狗さんと狗神は今日の作戦に参加できない
とのことだった。
「天春、静也起きた?!」
赤芽がそう言いながら慌ててお堂の中に入ってくると、隣で寝ていた和正と誠を
起こす。
「と、取り敢えず作戦会議しよう!」
天春があわあわしながら言う。
そうして僕達は寝ぼけ気味の和正と誠も交えて、晴樹奪還のための作戦会議を
始めるのだった。
昼間よりも少し涼しいなと思いながら階段に座り、僕は夜風に当たる。相変わらず
霧が出ているため視界は良くないが、空を見上げるとキラキラと輝く沢山の星が
見えた。
暫く星を眺めていると、お堂の扉が開く音がする。そちらを見ると、誠が少し顔を
出して僕を見ていた。
「誠、起きてたんですか?」
僕がそう言うと誠は静かに扉を閉め、僕の隣に座る。そして僕の顔をじっと見る
と、口を開いた。
「・・・静くん、大丈夫?」
「体調も良くなりましたし、大丈夫ですよ。心配かけてすみませんでした」
「そうじゃなくて!」
誠はそう言うと、僕の肩に頭を乗せる。
「誠?」
「・・・静くんと天春の会話、聞いてたんだ。静くんも天春も辛そうで、悲しそうな
ニオイがしたから・・・」
聞かれていたのか。そう思っていると、誠が僕の目を見て言った。
「ボクは、静くんの事信じてるよ。静くんはボクが妖のクオーターだって知っても、
普通に接してくれた。ボクが悪い事しちゃった時も、許してくれた。・・・だから
ボクは、静くんとずっと友達でいられるって、信じてる」
何かこういう事言うの恥ずかしいねと誠は笑う。そして誠は僕に聞いた。
「静くんは・・・ボクの事信じて、一緒に居てくれる?」
分かった気がした。僕が何故和正を信じようと思ったのか、何故天春に信じて
くれるかなんて言ったのか。
・・・僕は信じるのが怖かったんじゃない、信じられていない事が怖かったんだ。
言葉にされないと分からない、確信が持てなきゃ不安なまま。もしかしたら相手は
僕の事を信じてくれていないのかもしれない、いつか離れていってしまうかもしれ
ない。それが怖くて、壁を作って。
「ははっ・・・」
あまりにも身勝手な自分に、思わず笑ってしまう。キョトンとしている誠に
向かって、僕は言った。
「信じるよ。・・・ありがとう、誠」
誠はハッと僕を見た後、とびきりの笑顔で言った。
「うん!!」
―――誠と一緒にお堂の中へ戻ると、和正が上体を起こし手招きをしてきた。
和正も起きていたのかと思いながら、二人で和正の元へ向かう。
「おかえり」
和正が優しい声で言う。僕と誠は微笑み、言った。
「ただいま」
―――次の日の朝。ぐっすりと寝ていたところを天春に叩き起こされた。
「静、ねえ静!!お父さんと狗神さん何処に居るか知らない?!」
「・・・え?」
寝起きの頭で心当たりを探していると、天春が紙を差し出してきた。
見るとどうやら天狗さんが書いた手紙のようで、そこに書いてあった文に首を
傾げる。
「『急な用事ができたので、後の事は任せる』・・・?」
手紙の内容を要約すると、急な用事で天狗さんと狗神は今日の作戦に参加できない
とのことだった。
「天春、静也起きた?!」
赤芽がそう言いながら慌ててお堂の中に入ってくると、隣で寝ていた和正と誠を
起こす。
「と、取り敢えず作戦会議しよう!」
天春があわあわしながら言う。
そうして僕達は寝ぼけ気味の和正と誠も交えて、晴樹奪還のための作戦会議を
始めるのだった。
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