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帰省編
登山
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―――その後特にやる事もなく、僕達はゴロゴロとしていた。
気付けばもう夕方で、赤芽は用事があるからと帰っていった。僕と和正は夕食を
作ったり風呂に入ったりと各々の事をする。
布団に入り寝ようとしたところで、和正が言った。
「なあ静也。俺、明日やりたい事があるんだけど」
「やりたい事ですか?」
「ああ。・・・裏山を探検してみたいんだ」
「裏山を?」
「妖だらけの山ってさ、何か自分の知らない世界って感じがしてワクワクしねえ?
・・・あ、静也にとっては日常だったか」
和正はそう言って恥ずかしそうに笑う。
「裏山は森よりも妖の数が多いですし、凶暴なのも割といますけど・・・大丈夫
ですか?」
「もし襲われたら、実戦経験ってことでどうにかするさ。・・・実は武器持って
来てるんだよな」
「えっ」
驚いて和正を見る。すると和正は、許可は取ってるぜ?と慌てて言った。
「まあ、身を守る物があるなら和正くらいの強さであれば大丈夫でしょう
けど・・・。ああでも」
「でも?」
「稀にですが、大妖怪も出てくるのでその時は逃げてくださいね」
「お、おう・・・」
急に自信が無くなったのか、和正は小さな声で答える。
転校する前より僕は強くなったと思う。だから、命からがらなんて事にはならない
と思いたい。
「まあ、危険のない範囲で探検しましょうか。折角ですし、天檎の実でも探しま
しょう」
「あ、良いなそれ」
明日も晴れだと良いな。そんなことを考えながら、僕は目を瞑った。
―――次の日の朝。天気は晴れ、絶好の探検日和だ。
「おっしゃー、行くぞー!」
テンション高めの和正と共に、山を登る。
昼食用におむすびを握ってきた。武器も持った。・・・だが、何だろう
この不安は。
「静也?何かあったか?」
「あ、すみません大丈夫です」
言い知れぬ不安を拭い切れぬまま、僕は歩を進めた。
―――僕達は途中で会った山に住んでいる小妖怪や中妖怪達と会話をしたり、
天檎の実を見つけて食べたりして、どんどん山を登って行く。
山頂付近で軽い戦闘もあったが、ただイキっているだけの弱い妖だったのであっさり
と勝利した。
山頂に着き、二人でおにぎりを食べる。他の学校の遠足ってこんな感じなのかなと
思いながら、のんびりとくつろいでいた。
「こっから見る霧ヶ山もデカいなあ」
和正の言葉に僕は頷いて言った。
「霧ヶ山は、この辺りの山では一番高いですからね。自力で登ったことはないです
けど、多分山頂まで行ったら日が暮れるんじゃないかと思うんです」
「学校の裏山はこの山よりちょっと低いよな。誠が飛べば10分って言ってたけど、
何かもうちょいかかりそうな気がしてきた」
「あー・・・。まあ、狗神・・・さんの背中に乗せてもらった時もかなりのスピード
で飛んでましたから、それ基準じゃないかなと」
僕がそう言うと、和正がちらりと僕を見て言った。
「静也さ、狗神さんにさん付けるのいっつも躊躇ってるよな」
「あ・・・」
「いや、ちょっと気になっただけで、別に悪いとか思ってる訳じゃないんだけどさ。
何かあったのか?」
「こう、何て言うんですかね・・・。第一印象が悪かった奴が友人の親族でしたー
・・・って、何か変な気分になりませんか?」
「そういう事が無かったからよく分かんねえけど・・・まあ、そうなのか」
「本人にはもう呼び捨てしてしまってるんですけど、友達の前でも呼び捨てにする
のはいかがなものかなー・・・と」
僕の言葉に和正は笑う。そしてニッコリと笑うと言った。
「ま、別に俺は気にしてねえし、誠がいない時くらいは普通に呼び捨てでも良い気が
するけどな!」
「そうですかね。・・・じゃあ、そうさせてもらいます」
「おう!・・・あ、さっき狗神さんの背中に乗せてもらったって言ってたけど、
おぶって貰ったのか?」
「いえ、狗神って本来の姿は大きな犬って前に本人が言ってたじゃないですか。
あれです」
「大きな犬かあ。やっぱり毛の色銀だった?」
「はい。朝日に当たるとキラキラして綺麗でしたよ。・・・それに、フワフワ
でした」
「へー、良いな・・・って、フワフワ?!マジで??!」
「マジです」
「えー、良いなー!俺も触らせてもらいたかったー!!」
「和正も動物のフワフワ好きなんですか?」
「ああ。昔近所にいた犬がすっげえフワフワでさ、よくモフってたんだ」
和正もフワフワの毛並みが好きだったとは。今度狗神に会うことがあればお願い
してみよう。
気付けばもう夕方で、赤芽は用事があるからと帰っていった。僕と和正は夕食を
作ったり風呂に入ったりと各々の事をする。
布団に入り寝ようとしたところで、和正が言った。
「なあ静也。俺、明日やりたい事があるんだけど」
「やりたい事ですか?」
「ああ。・・・裏山を探検してみたいんだ」
「裏山を?」
「妖だらけの山ってさ、何か自分の知らない世界って感じがしてワクワクしねえ?
・・・あ、静也にとっては日常だったか」
和正はそう言って恥ずかしそうに笑う。
「裏山は森よりも妖の数が多いですし、凶暴なのも割といますけど・・・大丈夫
ですか?」
「もし襲われたら、実戦経験ってことでどうにかするさ。・・・実は武器持って
来てるんだよな」
「えっ」
驚いて和正を見る。すると和正は、許可は取ってるぜ?と慌てて言った。
「まあ、身を守る物があるなら和正くらいの強さであれば大丈夫でしょう
けど・・・。ああでも」
「でも?」
「稀にですが、大妖怪も出てくるのでその時は逃げてくださいね」
「お、おう・・・」
急に自信が無くなったのか、和正は小さな声で答える。
転校する前より僕は強くなったと思う。だから、命からがらなんて事にはならない
と思いたい。
「まあ、危険のない範囲で探検しましょうか。折角ですし、天檎の実でも探しま
しょう」
「あ、良いなそれ」
明日も晴れだと良いな。そんなことを考えながら、僕は目を瞑った。
―――次の日の朝。天気は晴れ、絶好の探検日和だ。
「おっしゃー、行くぞー!」
テンション高めの和正と共に、山を登る。
昼食用におむすびを握ってきた。武器も持った。・・・だが、何だろう
この不安は。
「静也?何かあったか?」
「あ、すみません大丈夫です」
言い知れぬ不安を拭い切れぬまま、僕は歩を進めた。
―――僕達は途中で会った山に住んでいる小妖怪や中妖怪達と会話をしたり、
天檎の実を見つけて食べたりして、どんどん山を登って行く。
山頂付近で軽い戦闘もあったが、ただイキっているだけの弱い妖だったのであっさり
と勝利した。
山頂に着き、二人でおにぎりを食べる。他の学校の遠足ってこんな感じなのかなと
思いながら、のんびりとくつろいでいた。
「こっから見る霧ヶ山もデカいなあ」
和正の言葉に僕は頷いて言った。
「霧ヶ山は、この辺りの山では一番高いですからね。自力で登ったことはないです
けど、多分山頂まで行ったら日が暮れるんじゃないかと思うんです」
「学校の裏山はこの山よりちょっと低いよな。誠が飛べば10分って言ってたけど、
何かもうちょいかかりそうな気がしてきた」
「あー・・・。まあ、狗神・・・さんの背中に乗せてもらった時もかなりのスピード
で飛んでましたから、それ基準じゃないかなと」
僕がそう言うと、和正がちらりと僕を見て言った。
「静也さ、狗神さんにさん付けるのいっつも躊躇ってるよな」
「あ・・・」
「いや、ちょっと気になっただけで、別に悪いとか思ってる訳じゃないんだけどさ。
何かあったのか?」
「こう、何て言うんですかね・・・。第一印象が悪かった奴が友人の親族でしたー
・・・って、何か変な気分になりませんか?」
「そういう事が無かったからよく分かんねえけど・・・まあ、そうなのか」
「本人にはもう呼び捨てしてしまってるんですけど、友達の前でも呼び捨てにする
のはいかがなものかなー・・・と」
僕の言葉に和正は笑う。そしてニッコリと笑うと言った。
「ま、別に俺は気にしてねえし、誠がいない時くらいは普通に呼び捨てでも良い気が
するけどな!」
「そうですかね。・・・じゃあ、そうさせてもらいます」
「おう!・・・あ、さっき狗神さんの背中に乗せてもらったって言ってたけど、
おぶって貰ったのか?」
「いえ、狗神って本来の姿は大きな犬って前に本人が言ってたじゃないですか。
あれです」
「大きな犬かあ。やっぱり毛の色銀だった?」
「はい。朝日に当たるとキラキラして綺麗でしたよ。・・・それに、フワフワ
でした」
「へー、良いな・・・って、フワフワ?!マジで??!」
「マジです」
「えー、良いなー!俺も触らせてもらいたかったー!!」
「和正も動物のフワフワ好きなんですか?」
「ああ。昔近所にいた犬がすっげえフワフワでさ、よくモフってたんだ」
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