異能力と妖と

彩茸

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帰省編

赤芽

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―――誠が妖術で出した花を添えて、僕達は手を合わせる。
月陰学園に入学したこと、初めて人間の友達ができたこと、妖のクオーターと友達に
なったこと、その友達に殺されそうになったこと、狗神に会ったこと、実践授業の
こと・・・。様々な思い出、思いが僕の頭をよぎる。
でも、言葉にするのは一つだけ。

「父さん、母さん。・・・僕は、元気です」

 この言葉が隣で手を合わせている二人に聞こえているかは分からない。父さんと
 母さんに聞こえているかはもっと分からない。・・・でも。
 なんとなく、誰かに優しく頭を撫でられているような気がした。


「さて、ちょっと早いですけど夜ご飯にしますか。食材・・・は、食堂で貰った
 野菜とお米しかないですけど」

 部屋に戻り僕がそう言うと、和正が手を挙げて言った。

「あ、じゃあ雑炊作ろうぜ。手伝うよ」

「良いですね。じゃあ火起こしお願いできますか?」

「えっ、ここコンロねえの?!」

「コンロはありますけど、お金払ってないのでガス止まってますし・・・。大丈夫
 です、釜もあります」

「あ、そうか・・・。分かった、任せとけ」

「静くん、水は?電気も、お金払ってないと使えないってお母さんが言ってたけど」

「水は元々井戸水を使っているので。電気は、えっと・・・」

「・・・そういえば電気、何で点いてるの?」

 不思議そうにしている誠に、ちょっと躊躇いながらも答える。

「この家、ちょっと特殊でして。電気代を浮かせるためにって、父の知り合いの雷獣
 に電気の提供をお願いしているんです」

「え、何そのハイテク妖活用法」

 和正の表現が面白く、思わず笑ってしまう。誠も面白かったようで、ケラケラと
 笑っていた。



―――無事雑炊は出来上がり、三人で机を囲って食べ始める。

「おお、美味い」

「思ったより上手くできましたね。美味しいです」

「二人共料理上手だね~。練習したの?」

「俺は家にいた頃、滅多に飯出ねえから一人で作って食べてたしな」

「僕も両親が死んでからは、一人でご飯作ってましたし」

「う・・・な、なんかごめん」

「良いって良いって」

「気にしないでください」

 そんな会話をしながら食べていると、ふと家の外に誰かの気配を感じた。
 ・・・あ、この気配は。

「良いですよ、入って来て」

 少し大きめの声で僕は言う。

「え、どうしたんだ?突然」

 和正がびっくりして僕を見る。誠はニオイで気付いていたのか、知り合い?とだけ
 言った。

「はい、僕の友達です」

 そう言うと同時に玄関の扉が開かれる音がした。そしてトタトタと音がして、
 一匹の黒い猫又が居間に入って来た。

「猫又・・・?」

 和正がそう言って首を傾げる。

「紹介しますね。僕の友達の・・・」

 僕が言いかけたところでその猫又は煙に包まれ、中から獣人姿の少女が現れる。

「うおっ?!!」

 驚いた様子の和正を一瞥すると、猫又の少女・・・赤芽が、僕の胸ぐらを掴んで
 きた。

「帰ってくるならっ、連絡くらい寄越しなさいよ!!どれだけ心配したと思って
 るの!」

 涙目の赤芽にガクガクと揺さぶられる。

「す、すみませっ・・・痛い、痛いですって!!」

 和正と誠が赤芽に頬をつねられている僕を見てオロオロしているが、赤芽は気に
 していないようだ。

「ちょ、ちょっと落ち着こ・・・?」

 誠が赤芽の肩に手を置いて言うと、赤芽は動きを止めてパッと僕を掴んでいた手を
 離した。

「大丈夫か?静也・・・」

「だ、大丈夫です・・・」

 心配そうに僕を見る和正にそう言うと、彼はほっとした顔をした後、赤芽を見た。

「流石に、急に胸ぐら掴むのはどうかと思うぞ?」

 和正にそう言われた赤芽はばつが悪そうな顔をして、悪かったわよと小さく
 言った。


―――取り敢えず皆を座らせ、赤芽を紹介する。

「改めて紹介しますね。僕の友達の、赤芽です」

「猫又の赤芽よ。・・・突然悪かったわね」

「俺は日野 和正」

「ボクは狗神 誠!よろしくね、赤芽さん」

「赤芽で良いわ。・・・ところで」

 赤芽は誠の顔をまじまじと見て言う。

「あなた、何者?変なニオイがするのだけど」

「誠は妖のクオーターなんです」

 僕が説明すると、赤芽はふーんと言って誠の耳をつついた。

「くすぐったいよ~」

「あら、この耳本物だったのね。失礼したわ」

 犬耳と猫耳のやり取りを見ていると、何だかほんわかとした気持ちになった。
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