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帰省編
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―――森の中間辺りから僕の家に向かうにつれて、誠が顔を顰め始めた。
「・・・ねえ、静くん。本当にこの先に静くんの家があるの?」
もうすぐ森を抜けるというところで、誠が立ち止まって言った。
「はい、そうですけど・・・?」
「どうしたんだ?すっげえ嫌そうな顔して」
和正がそう言うと、誠は森の出口を指さして僕を見る。
「あっちから、血のニオイがするんだけど」
誠の言葉に思わず息を吞む。天狗さんに帰省の連絡をした時は何も言われな
かった。その後誰かが襲われたか、それとも。
・・・一年以上経ったのに、あの事件のニオイが消えていないのか。
「静也・・・?」
和正が心配そうに声を掛けてくる。
僕が何も言わないでいると、二人は顔を見合わせ僕の顔を覗き込んだ。
「静くん、大丈夫・・・?顔、青いけど・・・」
「き、気分悪いのか?休憩するか・・・?」
和正の言葉に静かに首を振り、僕は覚悟を決めて二人を見た。
「付いて来てください。そこでちゃんと、説明します」
―――森を抜け、少し歩く。そして僕の家に着くと、誠が言った。
「あ、ここだ。ここからニオイがする」
「・・・ここが、僕の家です」
「え?!」
誠が驚いた顔をする。和正はキョロキョロと辺りを見回しながら僕に言う。
「凄い静かだな・・・。他に誰も居ないのか?」
「そう、ですね。帰っていなければ、誰も居ないかと」
「帰って・・・って、静也の両親がか?」
「いえ、僕の両親は・・・あそこに」
そう言って僕は庭の端に置かれた石を指さす。
「え、誰も居ないけど・・・」
「ええ、居ないんです。もう、この世には」
「え?・・・・・・あ」
僕の言っていることを理解したのか、和正が気まずそうな顔をして黙る。誠は
途中で気が付いていたようで、何も言わず俯いていた。
「このニオイ、妖じゃなくて人間の血だよね。・・・静くん、ここで何が
あったの?」
少し小さめの声で聞いてくる誠に気遣いを感じながら、僕は言う。
「立ち話も何ですし、まずは中に入ってください。・・・誠、ニオイで気分悪く
なったりしてませんか?」
「あ、うん。ボクは大丈夫だけど・・・」
「それなら良かったです」
僕はそう言いながら鍵を開ける。家の中には何の気配もない。たまに小妖怪達が
掃除をしてくれていたのか、中は綺麗だった。
―――和正と誠を居間へ通し、座らせる。台所から来客用の湯飲みを探し出し緑茶を
入れて差し出すと、二人は気まずそうにしながらもゆっくりとお茶を口に運んだ。
「・・・さて、何があったか、でしたね」
僕が切り出すと、二人は緊張したように背を伸ばす。その様子に苦笑いしながら
僕は言った。
「簡潔に言うと、正体不明の大妖怪に僕の両親が殺されました」
二人は驚いた顔をするが、何も言わない。僕の次の言葉を待っているようだ。
「僕が母の悲鳴を聞いて家に戻った時には、すでに手遅れで。天狗さん達に手伝って
もらって、さっき指さした庭の石の所に埋葬したんです」
「それって、いつ・・・?」
誠がおずおずと聞いてきたので、僕は普通にしてていいですよと言いつつ答える。
「その事件があったのは2月。・・・僕が、月陰学園に入学する九ヶ月前です」
「そう、だったのか・・・」
「なんか、ごめんね。僕が、ニオイについて聞いちゃったから・・・」
「いえ、どっちみち話すつもりではありましたし。気にしないでください」
「・・・あの、さ。俺達も手、合わせて良いかな」
「是非。そうだ、両親に友達ができたって報告しないとですね。ここ数ヶ月で色々
ありましたし、話すことが山ほどあります」
僕がそう言って微笑むと、二人は悲しそうに笑った。
「・・・ねえ、静くん。本当にこの先に静くんの家があるの?」
もうすぐ森を抜けるというところで、誠が立ち止まって言った。
「はい、そうですけど・・・?」
「どうしたんだ?すっげえ嫌そうな顔して」
和正がそう言うと、誠は森の出口を指さして僕を見る。
「あっちから、血のニオイがするんだけど」
誠の言葉に思わず息を吞む。天狗さんに帰省の連絡をした時は何も言われな
かった。その後誰かが襲われたか、それとも。
・・・一年以上経ったのに、あの事件のニオイが消えていないのか。
「静也・・・?」
和正が心配そうに声を掛けてくる。
僕が何も言わないでいると、二人は顔を見合わせ僕の顔を覗き込んだ。
「静くん、大丈夫・・・?顔、青いけど・・・」
「き、気分悪いのか?休憩するか・・・?」
和正の言葉に静かに首を振り、僕は覚悟を決めて二人を見た。
「付いて来てください。そこでちゃんと、説明します」
―――森を抜け、少し歩く。そして僕の家に着くと、誠が言った。
「あ、ここだ。ここからニオイがする」
「・・・ここが、僕の家です」
「え?!」
誠が驚いた顔をする。和正はキョロキョロと辺りを見回しながら僕に言う。
「凄い静かだな・・・。他に誰も居ないのか?」
「そう、ですね。帰っていなければ、誰も居ないかと」
「帰って・・・って、静也の両親がか?」
「いえ、僕の両親は・・・あそこに」
そう言って僕は庭の端に置かれた石を指さす。
「え、誰も居ないけど・・・」
「ええ、居ないんです。もう、この世には」
「え?・・・・・・あ」
僕の言っていることを理解したのか、和正が気まずそうな顔をして黙る。誠は
途中で気が付いていたようで、何も言わず俯いていた。
「このニオイ、妖じゃなくて人間の血だよね。・・・静くん、ここで何が
あったの?」
少し小さめの声で聞いてくる誠に気遣いを感じながら、僕は言う。
「立ち話も何ですし、まずは中に入ってください。・・・誠、ニオイで気分悪く
なったりしてませんか?」
「あ、うん。ボクは大丈夫だけど・・・」
「それなら良かったです」
僕はそう言いながら鍵を開ける。家の中には何の気配もない。たまに小妖怪達が
掃除をしてくれていたのか、中は綺麗だった。
―――和正と誠を居間へ通し、座らせる。台所から来客用の湯飲みを探し出し緑茶を
入れて差し出すと、二人は気まずそうにしながらもゆっくりとお茶を口に運んだ。
「・・・さて、何があったか、でしたね」
僕が切り出すと、二人は緊張したように背を伸ばす。その様子に苦笑いしながら
僕は言った。
「簡潔に言うと、正体不明の大妖怪に僕の両親が殺されました」
二人は驚いた顔をするが、何も言わない。僕の次の言葉を待っているようだ。
「僕が母の悲鳴を聞いて家に戻った時には、すでに手遅れで。天狗さん達に手伝って
もらって、さっき指さした庭の石の所に埋葬したんです」
「それって、いつ・・・?」
誠がおずおずと聞いてきたので、僕は普通にしてていいですよと言いつつ答える。
「その事件があったのは2月。・・・僕が、月陰学園に入学する九ヶ月前です」
「そう、だったのか・・・」
「なんか、ごめんね。僕が、ニオイについて聞いちゃったから・・・」
「いえ、どっちみち話すつもりではありましたし。気にしないでください」
「・・・あの、さ。俺達も手、合わせて良いかな」
「是非。そうだ、両親に友達ができたって報告しないとですね。ここ数ヶ月で色々
ありましたし、話すことが山ほどあります」
僕がそう言って微笑むと、二人は悲しそうに笑った。
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