異能力と妖と

彩茸

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帰省編

電車

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―――それから少し経ち、春休み初日。僕と和正、そして僕達のサポートを受け
ながらなんとか課題を終わらせた誠は、電車に乗って僕の地元へと向かっていた。

「静くんの地元、楽しみだな~」

「森と山ばかりで、これと言って何かある訳じゃないですけどね」

「そういえば、何で電車で帰ってるんだ?学園に来る時は、静也の友達の・・・天春
 だっけ?あいつに連れてきてもらったんだろ?」

 和正の問いに、僕は少し笑って答える。

「実はですね、今回帰省することは天狗さん以外には伝えていないんです。ちょっと
 驚かせたくて」

「サプライズ帰省ってやつか!面白そうだな~」

 今回の帰省にはちゃんと目的がある。僕をずっと心配してくれていた天春や赤芽、
 そして小妖怪達に、僕はもう大丈夫、元気になったと伝えることだ。
 サプライズにしたのは、正面から迎えられるのが恥ずかしいから。・・・なんて、
 彼らには言えないけれど。

「霧ヶ山の天狗さんってどんな妖なの?」

「どんな・・・そうですね、親戚のおじさんみたいな感じです。小さい頃からよく
 面倒を見てもらったりとかしてましたし」

「人間と友好的な大妖怪って、狗神さん以外にもいたんだな・・・」

「まあ、妖怪自体が大体は人間嫌いですからね。もしかしたら、天狗さんも最初は
 人間なんて嫌いだったかもしれませんし・・・」

「もしそうだったら、どうして友好的になったのか気になるね~」

「そうですね。・・・そういえば、狗神・・・さんは、何で友好的なんでしょう?
 誠、知ってます?」

「お祖父ちゃん妖怪だけど神様だから、人間に信仰されてたからとかじゃない?」

 誠はそう言った後、あれ?と首を傾げる。

「いや、ちょっと待って。前にお祖父ちゃんが、人間なんて碌なもんじゃないと
 思ってたとか言ってた気がする」

「全然友好的じゃないじゃん、それ・・・」

 和正はそう言うと、でも俺達には優しかったよな?と首を傾げる。
 首を傾げる二人を見て僕も首を傾げ、三人でうーんと悩んでいると、誠があっ!と
 声を上げた。

「思い出した!お祖父ちゃん、お祖母ちゃんに出会ってから人間も捨てたもんじゃ
 ないって思いだしたって言ってた!」

「なるほど、愛の力ってやつか」

「人間に恋すると、妖も変わるんですね・・・」

「それでもお祖父ちゃん、その頃はまだ悪さしてたんだって。今みたいに人に迷惑
 かけなくなったのは、悪さをしに行った先で人間に負けたからだーって言ってた
 気がする」

 人間に負けた。その言葉を聞いて、前に狗神家で狗神と話したことを思い出す。
 ・・・おそらく、狗神を負かした人間というのは父さんだ。そうだ、お墓で狗神に
 会ったことを報告しよう。そんなことを考えながら、僕は車窓から見える霧ヶ山を
 眺めていた。



―――寮を出て、電車に乗って、バスに乗り。朝出発したのだが、家の近くの森まで
来た頃には既に日が傾き始めていた。

「この森を抜けたら僕の家です」

「長旅だったな~」

「妖術で連れて来てもらうのも納得だよ」

 和正と誠はそう言いながら森へ入って行こうとする。

「あ、待ってください!」

 慌てて僕は二人を止めると、背負っていた袋から夜月を取り出す。

「和正、妖が見える機械って着けてくれてますよね?」

「ああ、昨日言われた通り朝からちゃんと着けてるぜ?」

「なら良かったです。この森から先は妖だらけなので、見えてないと逆に危ないです
 から」

「確かに、妖のニオイがプンプンしてるよね~」

 誠がそう言って森を見る。森の中からは見知った妖達の気配がするが、赤芽の
 気配はなかった。
 天春と遊びに行ってるのかもしれないなと思いつつ、念の為にと夜月を腰から
 提げる。

「お待たせしました、行きましょうか」

 そして僕達は森の中へと足を踏み入れた。
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