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実践授業編
報告
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―――黄玉に紐を縛り付けた金棒を引き摺らせ、僕らは帰路に就く。学園に着く頃
には既に大半の生徒は戻ってきており、黄玉と金棒を見て何だあれとざわざわして
いた。
「先生、眼鬼の討伐終わりました」
響子先輩が先生に報告すると、みなも先輩が不満げに言葉を続ける。
「・・・ファイルの情報に誤りを確認しました。スピード、パワー共に情報より
高値。まだ中妖怪ではありましたが、大妖怪クラス分類直前と予測します。
・・・3年生がいなければ、死んでいました」
それを聞いてざわついたのは周りの先生だけではなかった。その報告を聞いていた
4年の先輩達までもが、あの二人が・・・?と言い出したのである。
「先輩達って、そんなに凄い人だったんですか?」
近くにいた4年生にそう聞くと、その先輩は小声で教えてくれる。
「浅間響子とみなものペアは、俺達4年の中ではかなり有名でな。3年生はまだ聞いて
ないだろうが、4年になると実践授業の一環として二人一組で妖討伐に行くことが
あるんだ。そんでもって、あのペアは討伐数学年一位。攻めの浅間と守りのみなも
が良い連携しててなあ・・・」
俺達じゃ絶対に敵わねえとその先輩は呟いた。
―――和正達の所へ戻り、先程先輩から聞いた話を伝える。和正と誠は驚いていたが
彩音は知っていたようで、そうなのよねと頷いた。
「それにしても、やっぱり静くんは凄かったね~」
誠がそう言って、ね?と和正を見る。
「あの時のお前、誠に負けず劣らずすっげえ殺気だったもんな」
「あんたどんな生活送ったらあんな殺気出せるのよ・・・」
和正と彩音の言葉に首を傾げる。殺気を出したという自覚は無かった。
死にたくない、だから殺す。それしか考えていなかったから。
そんな僕の様子を見て、和正と彩音は深い溜息を吐く。誠は自覚なかったんだ~と
ニコニコしていた。
「合同授業の時も眼鬼の時も、ボク怖かったんだからね?静くん」
「怖いって思うなら、わざと僕に殺気向けるのやめてくださいよ・・・」
「だって、勝てそうって思ったんだもん。実際、静くんの霧で勝ったじゃん?」
「そうかもしれないですけど・・・」
「・・・自覚がないって怖いよな」
「・・・ええ、敵じゃなくて良かったと思ってるわ」
そんな話をしていると、響子先輩とみなも先輩が戻ってきた。
「今回はあなた達に助けられたわ、ありがとう」
「山霧くん、技・・・凄かった。・・・あれ、何て技?」
みなも先輩に聞かれて返答に困る。技名なんて考えたことが無かったし、そもそも
僕自身があんなことができるなんて思ってもみなかったからである。
「えっと・・・・・・幻霧?」
何となく思い付いた言葉を言ってみる。するとみなも先輩は柔らかく笑って
言った。
「幻霧・・・うん、良い名前。・・・ありがとう、倒してくれて」
あなた達もとみなも先輩が和正達三人の方を向いて言うと、彼らは照れ笑いを
浮かべていた。
には既に大半の生徒は戻ってきており、黄玉と金棒を見て何だあれとざわざわして
いた。
「先生、眼鬼の討伐終わりました」
響子先輩が先生に報告すると、みなも先輩が不満げに言葉を続ける。
「・・・ファイルの情報に誤りを確認しました。スピード、パワー共に情報より
高値。まだ中妖怪ではありましたが、大妖怪クラス分類直前と予測します。
・・・3年生がいなければ、死んでいました」
それを聞いてざわついたのは周りの先生だけではなかった。その報告を聞いていた
4年の先輩達までもが、あの二人が・・・?と言い出したのである。
「先輩達って、そんなに凄い人だったんですか?」
近くにいた4年生にそう聞くと、その先輩は小声で教えてくれる。
「浅間響子とみなものペアは、俺達4年の中ではかなり有名でな。3年生はまだ聞いて
ないだろうが、4年になると実践授業の一環として二人一組で妖討伐に行くことが
あるんだ。そんでもって、あのペアは討伐数学年一位。攻めの浅間と守りのみなも
が良い連携しててなあ・・・」
俺達じゃ絶対に敵わねえとその先輩は呟いた。
―――和正達の所へ戻り、先程先輩から聞いた話を伝える。和正と誠は驚いていたが
彩音は知っていたようで、そうなのよねと頷いた。
「それにしても、やっぱり静くんは凄かったね~」
誠がそう言って、ね?と和正を見る。
「あの時のお前、誠に負けず劣らずすっげえ殺気だったもんな」
「あんたどんな生活送ったらあんな殺気出せるのよ・・・」
和正と彩音の言葉に首を傾げる。殺気を出したという自覚は無かった。
死にたくない、だから殺す。それしか考えていなかったから。
そんな僕の様子を見て、和正と彩音は深い溜息を吐く。誠は自覚なかったんだ~と
ニコニコしていた。
「合同授業の時も眼鬼の時も、ボク怖かったんだからね?静くん」
「怖いって思うなら、わざと僕に殺気向けるのやめてくださいよ・・・」
「だって、勝てそうって思ったんだもん。実際、静くんの霧で勝ったじゃん?」
「そうかもしれないですけど・・・」
「・・・自覚がないって怖いよな」
「・・・ええ、敵じゃなくて良かったと思ってるわ」
そんな話をしていると、響子先輩とみなも先輩が戻ってきた。
「今回はあなた達に助けられたわ、ありがとう」
「山霧くん、技・・・凄かった。・・・あれ、何て技?」
みなも先輩に聞かれて返答に困る。技名なんて考えたことが無かったし、そもそも
僕自身があんなことができるなんて思ってもみなかったからである。
「えっと・・・・・・幻霧?」
何となく思い付いた言葉を言ってみる。するとみなも先輩は柔らかく笑って
言った。
「幻霧・・・うん、良い名前。・・・ありがとう、倒してくれて」
あなた達もとみなも先輩が和正達三人の方を向いて言うと、彼らは照れ笑いを
浮かべていた。
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