異能力と妖と

実践授業編

準備

―――申請書は授業が終わってからで良いと言われたので、僕はとりあえず寮に
妖刀・・・夜月を取りに行く。
誠と和正が一緒行くと言ったので、三人で寮への道を歩く。

「バレちゃったねえ」

「誠、知ってたのか？」

「前に見せてもらったんだ～」

「見せたというか、小妖怪達の所為で見られたの方が正しいですけどね・・・」

　そんな会話をしながら歩いていると、背後から視線を感じた。

「・・・？」

　振り向くと、そこには白い猫が座っており、僕達をじっと見つめていた。
　よく見ると猫の尻尾は二つに割れており、それはその猫が猫又という妖であること
　を示していた。

「・・・あ！猫又！！」

　誠も気付いたらしく、立ち止まって猫又と視線を合わせる。

「え、何かいんの？」

　そう言って和正も振り返るが、どうやら見えていないらしく、キョロキョロと辺り
　を見回していた。

「和くん、機械は？」

　誠がそう言うと和正は思い出したようにああ！と言って、先程渡されたコンタクト
　レンズ式の機械を目に入れた。

「おー！お前ら、こんな奴が見えてたんだな！！」

　どうやら妖が見えるようになったらしく、和正は目を輝かせて猫又を見る。そんな
　和正の反応を見てか、猫又はにゃあと一声鳴いてその場でくるりと回った。

「何処から来たんでしょうか」

「さあ・・・？」

　僕と誠が首を傾げている間に和正が猫又に近付く。すると猫又は和正から距離を
　置き、やがて背を向けて走り去ってしまった。

「えええ、なんで逃げるんだよー」

　ガックリと肩を落とす和正を慰めながら、僕達は部屋へと向かった。



―――夜月を持ち寮を出ると、そこには彩音と先輩達がいた。

「おっそい！何してたのよ！」

「すみません、ちょっと妖を見かけて・・・」

　腕を組み頬を膨らます彩音の背中には弓道部が背負っているような袋、その後ろで
　彩音を宥める響子先輩は刃むき出しの薙刀を背負っていた。

「響子ちゃん・・・薙刀、彩音ちゃんみたいに袋に仕舞ったら・・・？」

　困った顔で響子先輩を見るみなも先輩の腰には、トンファーが刺さっている。

「袋、この前失くしちゃったのよねえ・・・」

　のんびりと言う響子先輩に、みなも先輩はため息を吐く。
　もしかしたらみなも先輩は苦労人タイプなのかもしれない。