異能力と妖と

彩茸

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実践授業編

先輩

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―――それから時は経ち・・・1月。実践授業の日がやってきた。

「皆さん、おはようございます!今日は待ちに待った実践授業の日です!」

 朝のSHR。小里先生がそう言った瞬間、クラス内がざわざわとしだす。

「はいはい、静かにー!今日は、一日かけて妖の討伐に行ってもらいます。それに
 あたり、4年生の先輩一人以上を含めた四人以上の班を作ってもらいます。なお、
 メンバーは自由です。・・・では、動きやすい服装で体育館に集合してください」

 僕を含めクラスメート全員が返事をすると、先生は教室を出た。

「なあ、静也!同じ班でやろうぜ!」

 先生が教室を出た直後に和正が話し掛けてくる。

「良いですよ」

 僕が頷くと和正はよっしゃ!と言い、言葉を続けた。

「後で、誠と彩音も誘おうぜ?」

 恐らく誠は自分のクラスの誰かとペアになろうとはしないだろう。
 彩音も多分・・・。


―――着替えた僕達が体育館へと向かうと、もういくつかのグループが出来上がって
いるようだった。

「誠ー?」

 和正がA組の人達が集まっている場所に向かって言う。すると、C組の集団の中から
 返事が返ってきた。

「あっ、和くんに静くん!」

「何故そこから・・・」

「彩音を探してたんだ~!」

「・・・で、いたのか?」

「ううん。何処に居るんだろ・・・」

「・・・あ、あれじゃないですか?」

「あ、本当だ」

「相変わらずだね~」

 彩音は、いろんな男子に同じ班にならないかと誘われていた。・・・まあ、冷たく
 断っていたけど。
 僕達が彩音を目で追いかけている間に、彼女は4年の先輩達がいる所へ走って
 行った。
 ・・・少しすると、二人の女子の先輩と一緒にその集団の中から出てくる。

「・・・あ、良いところに!!」

 僕らの視線に気が付いた彩音は、その先輩達とこちらに向かってくる。

「えっと・・・その人達は?」

「私の幼馴染の響子きょうこ先輩!それと響子先輩の親友の、みなも先輩!」

浅間あさま 響子きょうこです。よろしくね」

「私は・・・個体識別番号H-370、通称みなも。・・・よろしく」

 H-370という言葉に首を傾げると、響子先輩が僕達にしか聞こえないような小さな
 声で言う。

「みなもちゃんは、人造人間でね。今は禁止されてるんだけど・・・妖を倒すための
 力を人工的につくる実験の被験体だったの」

 僕達はなるほどと頷く。深く聞かない方がいいのだろう。そう思いながら僕達も
 自己紹介をした。


「あなた達まだ人数揃ってないでしょ?一緒に組まない?」

 僕達が自己紹介を終えると、彩音がそう言ってくる。

「ボク達も彩音を誘おうと思って探してたんだよ~」

 誠が答えると、彩音はじゃあ決まりね!と嬉しそうに笑った。


「・・・そういえば、先輩達と彩音の能力って何なの?」

 和正が班員を先生に伝えに行っている間に、誠が聞いた。

「私は、電気を操る能力よ」

「私は・・・水を、操る能力」

「私はもちろん、式神を使う能力よ!」

 優しそうな響子先輩と、大人しそうなみなも先輩に続き、彩音が答える。

「・・・初めて会った時も、式神使おうとしてましたもんね」

「あれは・・・ごめん」

「いや、別に怒ってませんから・・・」

 それから少しの間談笑をしていると、和正がファイルを持って戻ってきた。

「なあ、こいつ退治しに行こうぜ!」

 和正が持ってきたファイルを皆で覗き込む。そこには一つ目の鬼が描かれており、
 その上に小さく眼鬼がんきと書いてあった。

「先生に聞いたらコイツが一番強いらしくてさ!」

「選べたんですか?」

「いや、ダメ元でお願いしたら選ばせてくれた」

「えー・・・」

「ちょっと借りていいかしら」

 響子先輩はそう言って和正からファイルを受け取り、眼鬼のデータが書かれた部分
 をみなも先輩に見せる。

「みなもちゃん、どう?」

「・・・金棒によって、リーチが長い。スピードも、前に私達が倒した奴の2倍以上
 ある。私達二人での勝算・・・63%」

 みなも先輩はそう言うと、僕達を見る。

「・・・3年生、実力を知りたい。あなた達は彩音ちゃんよりも・・・強い?」

「ボクは強いと思うよ」

「俺は・・・どうだろ?合同授業の時は互角だったと思います」

 みなも先輩の問いに誠と和正がそう答える。

「僕は、」

 僕が分からないと言おうとすると、誠が食い気味に言った。

「静くんは絶対強い!!」

 その様子に目を瞬かせた先輩達と彩音は、誠をじっと見る。

「誠がそう言うってことは、それなりの理由があるのよね?」

 彩音が聞くと、誠は興奮気味に答える。

「だってさ!静くん、合同授業の試合でボクに勝ったんだよ?!強いに決まってる
 じゃん!!」

「はあ?!!え、誠の勝率って学年一位だったわよね?!その誠に静也が勝った
 の??!!」

 彩音のあまりの驚きように、先輩達は顔を見合わせる。

「ですって。みなもちゃん、どう?」

「・・・彩音ちゃん、驚いてる。つまり、実力はかなりあるということ。
 ・・・勝算、99%」

「じゃあ決まりね!このメンバーなら、中妖怪なんて一捻りかもね」

 響子先輩がそう言って笑う。みなも先輩も微笑みながら頷いた。
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