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狗神家編
紹介
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「どうしたんじゃ?玄関先で騒いで・・・」
誠の母親と父親がわたわたしていると、もう一人出て来た。今度は銀色の髪の、
犬耳を生やした男性だ。・・・何処かで会った事あるような。
彼は誠の父親と同じく、とても若く見える。
「あっ、お祖父ちゃん!ただいま!!」
お祖父ちゃん・・・?って事は、あれが狗神?!
「おお、誠。お帰り」
「今日は居たんだね」
「ああ、稲荷んとこのが今日は留守だったんでな」
「へえ~。・・・あのねあのね、今日は友達を連れて来たんだ!」
「友達?・・・ほう、ワシが見えるのか」
「初めまして。日野 和正です」
「初めまして、日野くん。いつも誠が世話になってます」
和正が自己紹介をすると、狗神は人の好い笑顔を浮かべる。そして、僕の事を
じっと見つめてきた。
「君の名前は?」
「山霧 静也です」
僕が名乗ると、狗神は怪訝な顔をした。
「・・・山霧?」
「はい」
狗神は視線を僕に向け続ける。不思議に思った誠が何かを言おうとする前に、
狗神が口を開いた。
「あー、そうかそうか!お前、山霧のガキか!!大きくなったのう!」
「・・・え?」
「覚えてないかい?霧ヶ山で会ったじゃろう」
あ、思い出した。この妖、天春と遊んでた時に話しかけてきた奴だ。5年ほど前
だっただろうか。
「あー・・・お久しぶり、ですね」
「静くんが妖と間違えて話しかけたのって、お祖父ちゃんだったの?!」
「まあ、ワシも一応、妖に分類されてるからのお」
ハッハッハと笑う狗神を見て、誠の言葉を思い出す。あの時妙に馴れ馴れしい奴
だと思っていたが、天狗さんの友達ならば納得がいく。彼は天狗さんから僕達の事
を聞かされていたのだろう。
―――客間へと通された僕達は、誠から家族を紹介される。
「えっと、改めて紹介するね!お母さんとお父さんと、お祖父ちゃんだよ!」
「誠の母の狗神 朱美です。いつも誠がお世話になってますね」
「誠の父の、狗神 真悟です。誠が迷惑掛けてるだろう?すまないね」
「いえ。こちらこそ、誠くんには色々と助けてもらっています」
僕がそう答えると、隣で和正も頷く。誠はそれが嬉しかったのか、ニコニコと
笑っていた。
「んで、ワシが誠の祖父の狗神じゃ。よろしくな」
誠と同じようにニコニコと笑う狗神を見て、どこか違和感を覚えた。
なんだろう、この感じ。
「そういえば飲み物をお出ししてなかったわ!」
ハッと気付いたように誠の母親・・・朱美さんが立ち上がる。何が飲みたいかを
聞かれたので、無難にお茶と答えておいた。
「お母さん!チョコあるー?」
誠がそう言いながら立ち上がり、母親と共に台所へと消えていく。
「・・・え、チョコ??」
思わず声が出る。確か犬にチョコは厳禁だったはずだ。犬耳も生えているし、
犬寄りだと思っていたのだが。
「親父は駄目みたいだけど、誠は大丈夫そうなんだよな。血が薄まると、大丈夫に
なるのかな?と思ったり」
誠の父親がそう言って、な?と狗神を見る。
「誠くんのお父さんは、どうなんですか?」
「俺?俺は・・・普通に食べられるんじゃないかな。あんまり好きじゃないけど」
「難しいな・・・」
和正が悩ましそうに目を細める。
「まあ、避けてても困らないからね。誠は好きだから食べているようだけど」
そう言って誠の父親・・・真悟さんは台所の方を見る。向こうからは誠の、
チョコ何処ー?という声が聞こえた。
―――誠のチョコ探しを待っている間に、朱美さんがお茶を持って戻ってきた。
出されたお茶を啜りながら、和正はそういえばと話を切り出す。
「ずっと思ってたんですけど、誠のお父さんって犬耳じゃないですよね」
「あー、今この姿だからね」
真悟さんはそう言うと、自分の髪をポンポンと叩く。すると、彼の髪色と同じ
焦げ茶色の犬耳が生えた。
「普段は神主をしているから人間に化けていてね。本来の姿はこっち」
「おお~!」
和正が目をキラキラさせて真悟さんを見る。人間に変化するのは赤芽で見慣れて
いたが、和正にとっては新鮮だったのだろう。
「狗神・・・さんも、化けられるんですか?」
さん付けに何となく抵抗を感じながら、僕は聞く。すると狗神は頭の犬耳を触り
ながら答えた。
「まあ、面倒だからしっかりは化けんがの。そもそも、ワシの本来の姿は大きな犬
じゃ」
狗神が言い終わるのと同時に、誠がチョコレートが詰まった缶を持ってくる。
その後は誠と朱美さんも交え、皆でわいわいと話に花を咲かせた。
誠の母親と父親がわたわたしていると、もう一人出て来た。今度は銀色の髪の、
犬耳を生やした男性だ。・・・何処かで会った事あるような。
彼は誠の父親と同じく、とても若く見える。
「あっ、お祖父ちゃん!ただいま!!」
お祖父ちゃん・・・?って事は、あれが狗神?!
「おお、誠。お帰り」
「今日は居たんだね」
「ああ、稲荷んとこのが今日は留守だったんでな」
「へえ~。・・・あのねあのね、今日は友達を連れて来たんだ!」
「友達?・・・ほう、ワシが見えるのか」
「初めまして。日野 和正です」
「初めまして、日野くん。いつも誠が世話になってます」
和正が自己紹介をすると、狗神は人の好い笑顔を浮かべる。そして、僕の事を
じっと見つめてきた。
「君の名前は?」
「山霧 静也です」
僕が名乗ると、狗神は怪訝な顔をした。
「・・・山霧?」
「はい」
狗神は視線を僕に向け続ける。不思議に思った誠が何かを言おうとする前に、
狗神が口を開いた。
「あー、そうかそうか!お前、山霧のガキか!!大きくなったのう!」
「・・・え?」
「覚えてないかい?霧ヶ山で会ったじゃろう」
あ、思い出した。この妖、天春と遊んでた時に話しかけてきた奴だ。5年ほど前
だっただろうか。
「あー・・・お久しぶり、ですね」
「静くんが妖と間違えて話しかけたのって、お祖父ちゃんだったの?!」
「まあ、ワシも一応、妖に分類されてるからのお」
ハッハッハと笑う狗神を見て、誠の言葉を思い出す。あの時妙に馴れ馴れしい奴
だと思っていたが、天狗さんの友達ならば納得がいく。彼は天狗さんから僕達の事
を聞かされていたのだろう。
―――客間へと通された僕達は、誠から家族を紹介される。
「えっと、改めて紹介するね!お母さんとお父さんと、お祖父ちゃんだよ!」
「誠の母の狗神 朱美です。いつも誠がお世話になってますね」
「誠の父の、狗神 真悟です。誠が迷惑掛けてるだろう?すまないね」
「いえ。こちらこそ、誠くんには色々と助けてもらっています」
僕がそう答えると、隣で和正も頷く。誠はそれが嬉しかったのか、ニコニコと
笑っていた。
「んで、ワシが誠の祖父の狗神じゃ。よろしくな」
誠と同じようにニコニコと笑う狗神を見て、どこか違和感を覚えた。
なんだろう、この感じ。
「そういえば飲み物をお出ししてなかったわ!」
ハッと気付いたように誠の母親・・・朱美さんが立ち上がる。何が飲みたいかを
聞かれたので、無難にお茶と答えておいた。
「お母さん!チョコあるー?」
誠がそう言いながら立ち上がり、母親と共に台所へと消えていく。
「・・・え、チョコ??」
思わず声が出る。確か犬にチョコは厳禁だったはずだ。犬耳も生えているし、
犬寄りだと思っていたのだが。
「親父は駄目みたいだけど、誠は大丈夫そうなんだよな。血が薄まると、大丈夫に
なるのかな?と思ったり」
誠の父親がそう言って、な?と狗神を見る。
「誠くんのお父さんは、どうなんですか?」
「俺?俺は・・・普通に食べられるんじゃないかな。あんまり好きじゃないけど」
「難しいな・・・」
和正が悩ましそうに目を細める。
「まあ、避けてても困らないからね。誠は好きだから食べているようだけど」
そう言って誠の父親・・・真悟さんは台所の方を見る。向こうからは誠の、
チョコ何処ー?という声が聞こえた。
―――誠のチョコ探しを待っている間に、朱美さんがお茶を持って戻ってきた。
出されたお茶を啜りながら、和正はそういえばと話を切り出す。
「ずっと思ってたんですけど、誠のお父さんって犬耳じゃないですよね」
「あー、今この姿だからね」
真悟さんはそう言うと、自分の髪をポンポンと叩く。すると、彼の髪色と同じ
焦げ茶色の犬耳が生えた。
「普段は神主をしているから人間に化けていてね。本来の姿はこっち」
「おお~!」
和正が目をキラキラさせて真悟さんを見る。人間に変化するのは赤芽で見慣れて
いたが、和正にとっては新鮮だったのだろう。
「狗神・・・さんも、化けられるんですか?」
さん付けに何となく抵抗を感じながら、僕は聞く。すると狗神は頭の犬耳を触り
ながら答えた。
「まあ、面倒だからしっかりは化けんがの。そもそも、ワシの本来の姿は大きな犬
じゃ」
狗神が言い終わるのと同時に、誠がチョコレートが詰まった缶を持ってくる。
その後は誠と朱美さんも交え、皆でわいわいと話に花を咲かせた。
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