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合同授業編
過去2
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―――学校での一日は、いつも通りだった。いつも通り過ぎて、あまり覚えて
いない。
・・・ふと思ったが、夢にしては長くないか?覚めたいと思うと、本当に目が覚めて
しまう気がする。こんな幸せな夢は、覚めたくないと思ってしまう。
・・・まあ、どうせだから目が覚めるまでこの日常を楽しもう。
「静兄、帰ろ!」
後ろから少年の声が聞こえた。・・・ここ最近聞いた声なのに、何だか懐かしい。
そう思いながら僕は振り向いた。
「晴樹・・・」
そこには、僕と一歳差の弟がいた。今更だが、僕には弟が一人いた。
・・・いや、いる。あの事件の時、両親はいたけど、弟は見つからなかった。
だから・・・多分、生きている。
「どうしたのさ、何かあったの??」
「いや、何でもないよ」
「ふ~ん・・・何かあったら、僕に言いなよ?」
「ああ」
あの事件より前だから、晴樹が目の前にいる。
・・・あの事件で、全てが変わったんだ。
「・・・そういえば。お前って今朝、早く出たのか?起きた時には居なかったけど」
「うん。今日は日直だったしね」
日直・・・か。何故だろう、晴樹が日直と言うと心がざわついた。気のせいか?
「そういえば、静兄は日直いつだっけ?」
「えっと・・・あ、明日だった」
「じゃあ、明日は静兄が早く出ることになるね」
「そうだな」
その時、クラスメートの男子がこちらに向かって来て言った。
「おっ、山霧兄弟じゃん!今日も仲良いな~」
「あれ、まだ帰ってなかったの?」
更にその後ろから赤芽が歩いてきて、そう言った。
「あっ、赤芽ちゃんだ~」
「ね、ねねね猫崎様?!」
晴樹が赤芽にひらひらと手を振るのとは対照的に、その男子は顔を真っ赤に染めて
硬直した。
どうでも良いが、彼は赤芽様ファンクラブというものに入っているらしい。
・・・まあ、赤芽は美人だしな。
「あら、ごきげんよう」
「ご、ごごごごごきげんよう!!」
赤芽に挨拶された男子はどもりながら挨拶を返す。緊張しすぎてがちがちになって
おり、かなり面白い。
「赤芽、部活は?」
「今日は先生が出張で居ないから、休みだって」
僕が聞くと、赤芽はそう答えた。赤芽は今、演劇部に入っている。ちなみに、
僕と晴樹は新聞部だ。新聞部は締め切りまでに記事を一つ提出するだけなので、
ほぼ帰宅部に近い。
「じゃあ、一緒に帰ろう?」
「良いわよ」
晴樹と赤芽の会話を羨ましそうに眺める男子。そいつの肩にポンと手を置き、僕は
言う。
「一緒に帰りたいなら、まずはその緊張癖を治すんだな」
「ぐっ・・・!」
「まあ、面白かっ・・・頑張れ」
「どうせなら言い切れよ、チクショー!!」
叫ぶクラスメートを背に、僕達は学校を後にした。
「・・・あんた、たまにえげつないわよね」
赤芽がチラリと僕を見て言う。
「そうか?お前だって、学校では猫かぶりまくってるだろ」
「猫又だけに?」
晴樹の言葉に、赤芽は顔を真っ赤にして言った。
「う、うるさいわね!人を化かすのは猫又の性分なのよ!!」
いない。
・・・ふと思ったが、夢にしては長くないか?覚めたいと思うと、本当に目が覚めて
しまう気がする。こんな幸せな夢は、覚めたくないと思ってしまう。
・・・まあ、どうせだから目が覚めるまでこの日常を楽しもう。
「静兄、帰ろ!」
後ろから少年の声が聞こえた。・・・ここ最近聞いた声なのに、何だか懐かしい。
そう思いながら僕は振り向いた。
「晴樹・・・」
そこには、僕と一歳差の弟がいた。今更だが、僕には弟が一人いた。
・・・いや、いる。あの事件の時、両親はいたけど、弟は見つからなかった。
だから・・・多分、生きている。
「どうしたのさ、何かあったの??」
「いや、何でもないよ」
「ふ~ん・・・何かあったら、僕に言いなよ?」
「ああ」
あの事件より前だから、晴樹が目の前にいる。
・・・あの事件で、全てが変わったんだ。
「・・・そういえば。お前って今朝、早く出たのか?起きた時には居なかったけど」
「うん。今日は日直だったしね」
日直・・・か。何故だろう、晴樹が日直と言うと心がざわついた。気のせいか?
「そういえば、静兄は日直いつだっけ?」
「えっと・・・あ、明日だった」
「じゃあ、明日は静兄が早く出ることになるね」
「そうだな」
その時、クラスメートの男子がこちらに向かって来て言った。
「おっ、山霧兄弟じゃん!今日も仲良いな~」
「あれ、まだ帰ってなかったの?」
更にその後ろから赤芽が歩いてきて、そう言った。
「あっ、赤芽ちゃんだ~」
「ね、ねねね猫崎様?!」
晴樹が赤芽にひらひらと手を振るのとは対照的に、その男子は顔を真っ赤に染めて
硬直した。
どうでも良いが、彼は赤芽様ファンクラブというものに入っているらしい。
・・・まあ、赤芽は美人だしな。
「あら、ごきげんよう」
「ご、ごごごごごきげんよう!!」
赤芽に挨拶された男子はどもりながら挨拶を返す。緊張しすぎてがちがちになって
おり、かなり面白い。
「赤芽、部活は?」
「今日は先生が出張で居ないから、休みだって」
僕が聞くと、赤芽はそう答えた。赤芽は今、演劇部に入っている。ちなみに、
僕と晴樹は新聞部だ。新聞部は締め切りまでに記事を一つ提出するだけなので、
ほぼ帰宅部に近い。
「じゃあ、一緒に帰ろう?」
「良いわよ」
晴樹と赤芽の会話を羨ましそうに眺める男子。そいつの肩にポンと手を置き、僕は
言う。
「一緒に帰りたいなら、まずはその緊張癖を治すんだな」
「ぐっ・・・!」
「まあ、面白かっ・・・頑張れ」
「どうせなら言い切れよ、チクショー!!」
叫ぶクラスメートを背に、僕達は学校を後にした。
「・・・あんた、たまにえげつないわよね」
赤芽がチラリと僕を見て言う。
「そうか?お前だって、学校では猫かぶりまくってるだろ」
「猫又だけに?」
晴樹の言葉に、赤芽は顔を真っ赤にして言った。
「う、うるさいわね!人を化かすのは猫又の性分なのよ!!」
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