異能力と妖と

彩茸

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合同授業編

授業

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―――HRで、一時間目の合同授業で行う代表者決めゲームの説明を受けた。
先生の話を纏めると、今回行うゲームはボール当て。ボールは的ではなく、人に
当てる。もちろん柔らかいボールを使うのだが、ボールが当たると服に水性インクが
付く。そのため、体操服に着替えなくてはいけない。
ゲーム中は、大きな怪我を負わせない程度での能力の使用は自由。
ゲームは残り三人になるまで続く。・・・こんなところか。

「静也、理解できたか?」

「はい、一応は」

「すっげ~!俺、初めてやった時はルール全然理解できなくて、見様見真似でやって
 たんだぜ?」

 見様見真似でやって毎回代表って凄くないか?才能はあるのか・・・これで頭が
 良かったら、チートになりそうだ。人間誰しも欠けてるところってあるもんな、
 うん。

「じゃあ、これでHRを終わるわね。授業に遅れないよーにっ!姿勢、礼!」

 担任の先生がHRの終わりを告げる。僕達は着替えを持って更衣室へと向かった。


―――着替え終わった僕は、和正と一緒に授業が行われる『訓練室』へ行った。

「あ、和くんと静くん!」

「誠!なあなあ聞いてくれよ!静也がさ、先生の話を一発で理解したんだぜ!?」

「和くん、普通は一回聞いたら分かると思うよ・・・」

 誠の発言に小さく頷く。和正には悪いけど、普通に馬鹿だと思うんだよな。

「皆、始めるわよ~!集まって!」

 その時、先生が皆を呼んだ。号令を済ますと、先生の合図でゲームが始まった。
 クラスごとにやるのだが、ほとんど仕切りが無い状態で2つのクラスが同じゲーム
 をしているので、一緒にやっているんじゃないかという錯覚に陥りそうだ。
 ・・・といっても、僕はボールを避けているだけなんだけど。

「静也、避けてばっかじゃつまんねぇ、ぜっ!」

 和正が投げたボールがヒュンっと音をたて、僕に向かってくる。和正が操る火が
 後ろについてブーストになっているので、他のボールよりも速い。

「うわっ!」

 間一髪で避けた僕は、和正から距離をとった。・・・確かに、逃げてばっかじゃ
 いけないな。
 僕はその辺に立っていたクラスメート数人の顔に濃い霧をかけ、前が見えなくて
 慌てている彼らにボールを当てた。ちょっとズルいかもしれないけど、能力の使用
 は自由だし問題ないだろう。

「こんな感じでいいですか?和正」

「お、おう。・・・意外と非情なんだな」

「え?当たるのが悪いんですよ」

 ニッコリと笑うと、和正が冷や汗を流す。・・・何故だろう?
 ボールを先程と同じ要領で当てながら色々と考えていると、終了ー!!と先生が
 叫んだ。意外と早く終わったな。

「はーい!見事残った三人を紹介しまーす!!」
 
 クラスの皆がざわざわとしだす。先生は僕らを皆の前に立たせ、紹介した。

「まず、常連の・・・日野 和正くん!」

 おお~という声と共に、パチパチと拍手が送られる。常連だからか、特に驚くと
 いうことはないようだ。

「次に、これまで何回か代表になった・・・佐野さの 正樹まさきくん!」

 クラスの皆の反応は、和正の時のを少しだけ盛り上げた感じか。

「最後は・・・先週転校して来たばっかりの新人!山霧 静也くん!!」

 皆は物凄く驚いた顔で、僕を見つめた。無言なのは、驚きすぎているからだろう。
 何で新人が・・・とか。
 ・・・少しして、うおおおお!!という声が聞こえた。皆騒ぎまくって、拍手を
 しながら、凄い!!と口々に言っている。
 ここまで凄いと言われると、少し照れる。

「やったな、静也!」

「あ、ありがとうございます」

 チラッとA組の方を見ると、結果発表をしている途中だった。
 ・・・あ、誠もいる。


―――代表戦の説明の後、休憩時間が10分設けられる。
その間に僕と和正と佐野くんは、試合のための作戦を立てていた。

「今回のA組の代表選手は、誠以外はあまり強くないから大丈夫だろう」

「じゃあ、俺は狗神以外をやる。後は和正に任せるよ」

「えっと、僕は・・・?」

「静也は、正樹と一緒にやってくれ」

「分かりました」

「よろしくな」

「はい。よろしくお願いします」

 ・・・そういえば、この作戦は誠には聞かれていないのだろうか?ふとそんな事を
 思い、誠を探した。・・・誠は、先生と談笑していた。
 どうやら聞かれていないようだ。
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