異能力と妖と

彩茸

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入学編

案内

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 それからクロドラという教頭先生の使い魔に学園内を案内してもらった。
 この学園は6学年制、しかも人数が多いので、とても広いうえに5階建てだった。
 地図をもらったので迷う心配は無くなったのだが、移動に時間がかかりそうだ。
 まあ、じきに慣れるだろう。
 それにしてもクロドラのテンションが高い。喋るとき、語尾に結構な回数で『!』
 がついている気がする。

「ここが、あなたのクラスの3-Bです!3年生は、力の活用方法を主に勉強します。
 あ、あとあとっ!この学年から実践授業があります!!」

「実践授業?」

「実際に妖を退治しに行くんですっ!小~中くらいの妖を倒すんです!!」

 なるほど、分かりやすい。

――この世界にはあやかしというものが存在する。妖の中にもランクがあり、それぞれ
大妖怪、中妖怪、小妖怪と呼ばれている。
なお、ランクは強さで決められている。妖の中でも中妖怪の数が最も多く、大妖怪は一番数が少ない。
鞍馬山僧正坊・・・所謂天狗などのメジャーな妖怪は、大抵は大妖怪である。――

「小妖怪も倒すのか・・・」

 僕はちらっと横を見た。僕の周りには小妖怪が何匹かいる。他の人達には見えない
 らしいけど、僕は物心ついたときから見えるし、何を言って いるのかも分かる。
 ほとんどは名前を知らないけど、小さい頃から一緒にいる僕の友達だ。
 ・・・そんな事を考えていると、クロドラがニコニコしながら言った。

「あなたの周りにいる妖は無害ですから、退治されることは無いと思いますよ!」

「えっ!こいつ達のこと見えるんですか?!」

 驚いていると、クロドラはニコニコしたまま言う。

「そりゃあボクも妖みたいなモノですから、もちろん見えてますよ!!でも、珍しい
 ですね~、妖が普通に見えるなんて!皆、専用の機械着けて ないと見えないんで
 すよ~?」

「機械??」

 すれ違った先生達は、何か着けていただろうか?少なくとも僕は気付かなかった。

「これです!」

 クロドラが取り出したのはコンタクトレンズ。今、何処から出てきたんだ・・・?

「普通のコンタクトレンズじゃないんですか?」

「違うんですよね~これが!これを目に着けた人は、妖が見えるようになるという、
 とっても便利な物なのですっ!!ちなみに、度は入って無いですよ!」

「へー・・・」

 ここ最近の技術の進歩は、かなり凄いと思う。妖という普通の人とは無縁なモノに
 さえ、高度な技術が使われているとは。

「しかもしかもっ!!普通に見える人も妖怪が姿を消そうとしたら見えない!という
 か、大妖怪は特に力が強すぎて姿を人に見せようとしない限り見えないですけど!
 むしろ見えたら危険です!命狙われるからっ!!・・・しかし!大妖怪が姿を消そ
 うとしたとき以外なら、この機械を 通して妖を見ることができるのですっ!!
 ねっ、すごいでしょ?欲しいでしょ?」

 クロドラが商売人のように熱弁をふるい終わった時、今まで黙っていた小妖怪達が
 騒ぎ出した。

「要ラナイ!」

「要ラナイ、要ラナイ!!必要ナイヨ!!」

「小妖怪さん達、話聞いてました?大妖怪も見えるんですよ?」

 クロドラが少し不満そうな声で言うと、小妖怪達はさらに言った。

「ダカラ、必要ナイッテバ。サ」

「ダッテ見エテルモン、大妖怪」

「ソウソウ、見エテル見エテル」

「小サイ時カラズットネ」

 ・・・え、今言う?

「えっ?ど、どういうことですか??」

「ダーカーラ~、見エテルンダッテバ。ツイデニ言ウト、静也ハ天狗ノ息子サント
 友達ダヨ!」

「ちょ、ちょっと!!」

 僕が止めに入ろうとした瞬間、クロドラがこっちを向いた。

「そ、そうなんですか?静也さん・・・」

「・・・そうですよ。僕は大妖怪も見えるし、とある天狗さんの息子と友達です」

 あんまり言いたくないんだよな・・・。確実に騒がれるし。

「えっ、えーーーー!!?そんなに凄い人だったんですか?!っていうか、よく生き
 てられましたね?!」

 ほら、やっぱり・・・。

「まあ、過去に色々ありましたけどね。僕にも色々とあったんですよ・・・」

「そ、それは失礼しました!!」

 まさか謝られるとは思ってなかったから、少しビックリした。そんな時、ふと疑問
 が浮かんだ。

「・・・ここの生徒さん達って、過去に色々あった人って多いんですか?」

 そう聞くと、クロドラは少しテンションを下げて答える。

「まあ、普通の人とは違う力を持っているから、色々あってもおかしくないですね」

 少しの沈黙。それを破ったのは、小妖怪達だった。

「静也、ソロソロ時間ダヨ?」

「モウスグHR始マルヨ!」

 僕の袖を引っ張りながら、口々に言う。

「ほんとだ!あとは先生に任せますのでっ!担任の先生来るまでここで待っていて
 ください!それじゃあ、ボクはこれで!!」

 少し焦った様子でクロドラはそう言うと、僕に背を向けた。多分、背中・・・だと思う。

「あの、ありがとうございました」

「いえいえ!それでは、さよならっ!!」

 僕がお礼を言うと、そう言ってクロドラは姿を消した。・・・タイムリミットでも
 あったのか?
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